アナクサゴラスをわかりやすく解説!「万物の中に万物がある」で有名な古代ギリシャの哲学者
更新日:2023.04.05
投稿日:2022.08.25
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ギリシャの哲学者・自然学者として活躍したアナクサゴラス。ソクラテス活動以前の哲学者であり、「万物の中に万物がある」という物理学理論で有名になりました。
この記事では彼が唱えた宇宙観や自然観、残した名言や幻とされる本の内容を、わかりやすくまとめています。その他、アナクサゴラスのルーツがあり、さまざまな学者が生まれ育ったトルコ・エーゲ海沿いの人気観光都市の魅力もご紹介します!
Contents
古代ギリシャの哲学者・アナクサゴラスって何した人?
アナクサゴラスはギリシャの哲学者・自然哲学者。紀元前500年頃に、アナトリア(現トルコのアジア側)のクラゾメナイ貴族階級生まれで、プレソクラテス、つまりソクラテスが活動する以前に活躍しました。
「万物の中に万物がある」という物理学理論を唱え、「ヌース(知性、心)こそが宇宙の原動力である」と主張したことで有名です。また、日食について初めて正しい解説をした人物でもあり、「太陽は赤く熱した金属の塊、月は土、星は火のような石」といった科学理論で知られました。
一方で、物論的な考えで悪名を馳せたという説も。428年頃にランプサコスで死去し、生涯の著書は1冊のみといわれています。それすらも現存が確認されていませんが、少なくとも6世紀頃までは入手可能だったようです。
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アナクサゴラスの幻の本の内容
アナクサゴラスの幻の著書は、「宇宙のすべての構成要素は完全に混合された最初の状態(しかし完全に均一ではない)」という考えから始まったとのことです。「万物の根源(アルケー)=さまざまな性質を持つ種子(スペルマタ)」とした上で、以下のような記述があったとされています。
- 成分は永遠であり、常に万物と万物の混合状態を保っている。だが、回転運動によってある領域の成分の割合に変化が生じる。
- 元の混合物の回転が拡大することで、最終的に私たちが現在認識している世界の継続的な発展を生み出している。
著書の大部分を占めていたのは、こうした理論の基礎や発展についての記述、そしてヌースに関する考察。さらに、天文学や気象学、地質学的現象に関する記述、知覚や知識についての議論も含んでいたのだとか。残念ながらいずれも断片的な証言で、後の研究者の報告や批判によって知られたものとなっています。
「万物の中に万物がある」名言からみるアナクサゴラスの理論
「あらゆるもののなかに、あらゆるものがある」という名言で知られるアナクサゴラス。主に2つの理論を唱えたことで有名になりました。それぞれの理論を簡単に説明します。
①万物の中に万物がある
アナクサゴラスは、物理的な世界において「すべてのものが他のものの一部を含んでいる」と考えました。彼は動物の栄養状態を観察し、「動物が食べたものが骨や毛や肉などに変化するためには、その中にすでにそれらの構成要素が含まれていなければならない」と結論づけます。つまり、何もないところから何かが生まれることはない。現実の本質を構成するものは、常に「あった」ものでなければならないということです。
さらにアナクサゴラスは、「存在(あるもの)が非存在(ないもの)になることはありえない」という考えから、現実は常に「ある」ものでなければならないと論じます。これは、私達が認識している「現実」と「自然」に対する認識についての話と捉えられています。
②心こそが宇宙の原動力である
アナクサゴラスは、「ヌースは宇宙の始原および支配原理」だと想定しました。そもそもヌースとは、知性・理性・精神・魂などを指すギリシャ語。ヌースは精神的な哲学ですが、アナクサゴラスは力学的な力があらゆる物事の要因となるとし、それこそがヌースなのだと推論します。
ヌースは、混合状態の原初的な宇宙に対して「最初の運動の原因」として機能する。そして、いったん回転が起こればその勢いが他のすべての物事を整える。こうした宇宙全体の秩序や原理を指す概念に「ヌース」を位置づけました。
謎に満ちた生涯と人物像
アナクサゴラスの生涯については、不明なことが多くあります。実際に生きた年代ですら正確にはわかっていません。逸話レベルのものも少なくありませんが、古くから言い伝えられている人物像を追ってみましょう。
エーゲ海沿岸の町に生まれる
アナクサゴラスが誕生したのは、紀元前534~467年という説もありますが、学者の間では紀元前500~428年というのが最も一般的な見方です。イオニア地方の古代ギリシア都市・クラゾメナエに生まれたのち、現在のトルコ沿岸にある活気づいた港町に住んでいました。
そのことから、イオニア初期の哲学者たち、特にミレトス学派の一人として知られるアナクシメネスの地理的・理論的後継者であると考えられています。
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アテネに渡り20年暮らすも、晩年は田舎で隠居生活を送る
アナクサゴラスは、古代ギリシャの中心都市・アテネに至ります。30年ほど当地にとどまったのち、アテネを西洋の哲学的・物理学的思索の本拠地としたのは彼の功績とされました。
しかし、「太陽は灼熱した石である」と説いたことで、太陽神アポローンに対する不敬罪に問われます。
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死刑を宣告されたため、親友かつ弟子であるペリクレスの助けを借りて小アジアのランプサコスに渡り、死ぬまでそこで暮らしたとのことです。なお、ランプサコスは、現トルコのダーダネルス海峡沿いにあるチャナッカレ県ラプセキのあたりです。
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生涯をかけて知識の追求に没頭していた
亡命したアナクサゴラスのランプサコスでの生活についても、生没年と同様に謎に包まれています。アナクサゴラスの人物像については、象牙の塔のような科学者であり哲学者であるとされています。
たとえば、政治的成功や財産を「知識の探求の妨げになる」と自ら放棄したなど、一般的な関心事や欲求から極端に離れた印象を受ける興味深い逸話がいくつも残っています。
逸話は架空のものという可能性もありますが、古代を通じて語られるアナクサゴラスのイメージは「知識の追求に完全に没頭していた人物」という点で一貫しているでしょう。
アリストテレスやソクラテスからは失望されていた?
アナクサゴラスは、アリストテレスやソクラテスといった名立たる哲学者に多くの影響を与えた学者です。ただし、手放しに評価されていたわけではなく、非難もされていたと伝えられています。
ヌースの教義を用いたアナクサゴラスは、「生物の成長は周囲の物質から栄養を取り出そうとする生物内の心の力によるもの」と主張します。この理論に対して、ソクラテスは「私の心にかなう物事の原因についての教師を見つけた」と感じ従いますが、最終的には批判的な立場となったそうです。
ソクラテスのほか、プラトンやアリストテレスといった後継者たちは、アナクサゴラスに「神々の気まぐれによらない統一的な宇宙原理(宇宙がなぜ、何のために始まったかなど)」の解説を期待していました。しかし、彼らが望むような問題への追及はなかったため批判されたと考えられています。
またアリストテレスは、アナクサゴラスを冷静で独創的な思想家と評価しながらも「彼は何かが必ずそうなる理由を説明できないとき、心を引きずり込むが、それ以外は特定の現象を説明するのに心ではなく何でも使うだろう」と非難しました。
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これは、世界の創造を説明するためにヌースを用いたことが、デウス・エクス・マキナ(ピンチに陥ったら神が現れて助けてくれる的な思想・古代ギリシャの演技法)であると捉えた上での批判です。
名だたる哲学者を多く排出した!トルコ・エーゲ海沿いの人気観光都市
現在のトルコ西部・エーゲ海沿いには、アナクサゴラスやヘラクレイトスなど、現在でも研究されている学者たちが生まれ育った地が多くあります。そのなかでも人気の観光地をご紹介します。
トルコ屈指のリゾート地!イズミル
İzmir(イズミル/イズミール)は、イスタンブールとアンカラに続くトルコ第三の大都市です。海岸通りはヨーロッパの街並みを思わせる美しさで、「エーゲ海の真珠」とも称されます。
古代アゴラ遺跡をはじめ貴重な遺跡が多く残り、アタテュルク博物館など歴史を感じられるスポットも充実しています。また、有名なペルガモン遺跡までは車で2時間なので観光拠点にも最適。海に面するため、おいしいシーフード料理もたっぷりと味わえます。
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世界遺産の温泉郷!ヒエラポリスとパムッカレ
トルコが誇る世界遺産、古代都市ヒエラポリスとパムッカレもエーゲ海からほど近い場所です。ヒエラポリスは紀元前190年に建設されたローマ時代の古代都市。円形劇場やローマ式浴場、一度に1,000人が入浴できた大浴場跡などの遺跡が残っています。
パムッカレは白く光り輝く棚田からなる温泉郷です。温泉の張った石灰棚を裸足で歩けるだけでなく、ローマ時代の遺跡が沈む温水プールに入ることもできます。
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