アジアの歴史と定義とは?ヨーロッパとの狭間に立つトルコと日本のつながり
更新日:2023.04.05
投稿日:2022.08.05
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現在の区分では、世界の国々は「ヨーロッパ」「アフリカ」など地域ごとのグループに分類されています。トルコは、ヨーロッパとアジアのちょうど中間に位置しており、ときにはどちらに区分すべきか議論になることも。
アジアの西端にあるトルコと、反対側の東端に位置する日本には意外な共通点が多く、深い縁があります。
今回は、アジアの起源や定義、トルコの立ち位置と遠く離れた日本とのつながりについて紹介します。
アジアとは?
アジアは世界を区分する大州の一つで、ヨーロッパ以外のユーラシア大陸全体を指す言葉です。古代においては現在より範囲が狭く、現在のトルコが位置する「小アジア」を指す地域名でした。
国の分類上、現在では日本がアジアの東の端に位置するとされています。「極東の島国」などと呼ばれるのを聞いたことがある人もいるでしょう。反対に、トルコはアジアの西端とされることが多く、ちょうど日本からトルコまでがアジア、という形になります。
ただし、現在の世界のグループ分けは、政治や経済、スポーツなど見方によってさまざまな分類の仕方があります。そのため、どの国がアジアに属するかはケースバイケースです。
「アジア」の定義はとらえ方によって異なる!
「アジア」と聞くと、アジア大陸を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、実はアジア=アジア大陸に含まれている国だけではないのです。
というのも、世界には大陸と陸続きになっていない島国も多いためです。日本やインドネシア、オセアニアの島々などが代表的ですね。「大陸」は、あくまで地理上の都合で面積の大きい陸地を六つに分類したものなので、必ずしも各地域の定義とは一致しません。
さらに、国連の区分では「アジア州」「アジア圏」というものもあります。こちらも、区分上世界の国々を六つに分類したもので、島国も含まれるため、六大陸の「アジア大陸」とは分類が異なります。
ご存じのとおり、アジアは、エリア別に「東アジア」「南アジア」「東南アジア」「西アジア」という4つの細かい分類があり、それぞれ次のような国が属しています。
東アジア | 韓国・中国・モンゴル・日本など |
---|---|
南アジア | インド・パキスタン・スリランカなど |
東南アジア | インドネシア・シンガポール・タイなど |
西アジア | アラブ首長国連邦・イスラエル・アフガニスタンなど |
アジア州の南側は、オセアニア州との隣接地域でもあります。オセアニアは、オーストラリア大陸と、周辺の複数の島国が属する州です。日本外務省の定義では、インドネシアやミクロネシアより東に位置する国がオセアニア州に含まれています。
オーストラリアの北に位置するニューギニア島は、東側がパプアニューギニア(オセアニア州)、西側がインドネシア(アジア州)の領土となっています。
アジアの起源と由来
ご紹介したようにアジアの定義はさまざまで、地域の境界に位置する国は、異なる地域に属する場合があります。
では、そもそも「アジア」という名前や区分はどこからきたものなのでしょうか。語源と由来を見てみましょう。
「アジア」の語源
アジアという名前の語源に関しては諸説ありますが、現在2つの有力な説があります。
1つ目が、「アジア」という言葉の由来は、アッシリア語の「アス」からきているという説です。
アッシリアは、紀元前3000年頃に興った国で、エジプトや東地中海などオリエント地域全域を支配していた最初の世界帝国です。
アッシリアでは、エーゲ海より東側の地域(現在のトルコ以東)をアッシリア語で「東」「日の出」を指す「アス」と呼んでおり、これが「アジア」に変化したのではないかといわれています。
2つ目は、紀元前17世紀の帝国、ヒッタイト時代の地名がもとになったという説です。アナトリア(現在のトルコ)に「アッスーワ」という名の都市が存在し、この都市名が語源になったという考え方です。「アッスーワ」の名前をもじって、現在のアナトリア半島一体をアジアと呼び始めたのではないか、といわれています。
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「アジア」の由来
現在でこそ、広範囲にわたる地域がアジアとされていますが、古代ではアジアはトルコを指す言葉でした。
古代ギリシャと古代ローマでは、地域の位置関係から見て自国より東にあるトルコ(当時のアナトリア)をアジアと呼んでいました。
また、アジアの語源となったアナトリアの都市名「アッスーワ」と、トルコの古代名「アナトリア」は、どちらも「太陽が生まれる国」という意味を持ちます。これにより、トルコとアジアは同じ意味であり「トルコ=アジア」という説があります。
このように、もともとアジアという言葉はトルコを指していた学説が有力です。しかし、現在のアジアと当時のアジアでは、その範囲に大きな差があります。「アジア」が東に向かって拡大したのには、人の移動が関係しているといわれています。
ヘレニズム時代、アレクサンドロス大王は、東方遠征により現在のギリシャからタジキスタンにまで食い込む大帝国を建国します。これに伴い東方への人の移動が発生し「アジア」と呼ばれる地域が大きくに拡大していったと考えられています。
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アジアの拡大により、もともとアジアと呼ばれていたトルコ周辺の地域は、混同しないよう「小アジア」と呼ばれるようになりました。
トルコはアジア?ヨーロッパ?
現在、アジアとヨーロッパのどちらに属するかは「ボスポラス海峡」が判断基準となっています。ボスポラス海峡はトルコの西側にある海峡で、マルマラ海と黒海を繋いでいます。ここより西側か東側かで、どちらに属するかが判断されます。
しかし、トルコ最大の都市「イスタンブール」は、ボスポラス海峡をまたいで存在しています。ここで問題となるのが、トルコがアジアとヨーロッパのどちらに分類されるのかです。
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トルコの地域区分に関しては、アジアとする場合とヨーロッパとする場合の2つの見方があります。
地域・文化的にはアジアに分類されることが多い
まずは、トルコをアジアの一部とする考え方です。
トルコは、国土のほとんどがボスポラス海峡より東側に位置しています。そのため、地理的にはアジアの一部と考えられています。事実、イスタンブールの西側などトルコの一部がヨーロッパ側にありますが、広さは国土の総面積の10%未満です。
日本でも、トルコはアジアの一部として分類するのが政府の公式見解となっています。
また、宗教的な観点でも、トルコの文化はアジア色が強いといえます。
トルコ国民の大半はイスラム教徒です。ユダヤ教や、キリスト教の一種であるギリシャ正教・アルメニア正教を信仰している人もいますが、割合としてはわずかです。
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このように、国土や文化の観点からは、アジアに分類するのが自然であると考えられます。
トルコの定義ではヨーロッパの一部
一方で、トルコをヨーロッパの一部とする考え方もあります。というのも、政治および経済においては、ヨーロッパの影響を強く受けているためです。
まず、トルコ政府は、自国をヨーロッパの一部であると定義しています。これは、日本をはじめとした諸外国とは見解が異なる部分です。
外交面では、トルコはNATO(北大西洋条約機構)の加盟国となっています。NATO加盟国の大半はヨーロッパの国々ですので、この点もトルコをヨーロッパに分類する根拠の1つです。
スポーツでも、トルコはヨーロッパの一国として扱われることが多いです。サッカーの世界大会ではヨーロッパの一国として参加しており、2021年のヨーロッパ選手権にも出場しています。
自国内でヨーロッパの一部と定義していることもあり、政治や外交においてはヨーロッパ諸国の1つしての立場をとることが多いのです。
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アジアとヨーロッパを結ぶ海底トンネル
アジアとヨーロッパの中間に位置していることから、トルコは交通面でも重要な役割を果たしています。
トルコの東側と西側の境界であるボスポラス海峡には、アジアとヨーロッパを結ぶ海底トンネルが通っています。2013年に開通しており、トルコ国鉄が鉄道用のトンネルとして運営・管理を行っています。イスタンブールの東側の開発が進み、西側と東側の人の往来が増加したこともあり、交通の利便性を向上させる目的で建設されました。
ちなみに、この海底トンネルの開通は日本が全面的にバックアップしており、融資と技術提供が行われていました。トルコと日本、両国を挙げた一大プロジェクトといえます。開通式典には、当時の首相であった安倍晋三氏も出席しました。
海底トンネルは、ある意味日本とトルコの友情の証といえるかもしれませんね。
アジアの端トルコと日本
国連のアジア地域の区分では、アジアは「中央アジア」「東アジア」「東南アジア」「南アジア」「西アジア」の5つに分類されています。このなかで、トルコは西アジア、日本は東アジアに属しています。
トルコと日本はアジアの西端と東端に位置しているため、アジア地域は日本で始まり、トルコで終わるといえます。
そんな両国の間には、位置関係のほかにも特別なつながりがあります。
トルコと日本の歴史・文化的なつながり
アジアの両端に位置することから、物理的にはかなりの距離があるトルコと日本。しかし不思議なことに、トルコと日本には文化や生活習慣における類似点がいくつかあります。
意外な共通点があるのが言語。トルコの公用語であるトルコ語はアルファベットを使用する言語ですが、英語などとは違って語順は日本語に近く、動詞が最後にくる言葉です。そのため、日本人なら比較的習得しやすいといわれています。
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また、トルコは親日国としても知られており、日本とトルコには強い国家間の繋がりがあります。
1890年、日本を訪問したオスマン・トルコ船籍の船「エルトゥールル号」が、帰途で台風に遭遇し、座礁するという海難事故がありました。現場となった和歌山県串本町では、官民総出で救助活動が行われ、69名を救助しています。「エルトゥールル号遭難事件」は、現在でもトルコで語り継がれています。
トルコが日本の窮地を救ってくれたこともありました。イラン・イラク戦争の折、日本は自国民救助の飛行機を飛ばすことができず、多くの日本人が現地に足止めされていました。脱出できなかった日本人を助けてくれたのがトルコで、自国の飛行機を用意し、日本人を救出してくれたのです。
日本とトルコは互いに良い友人であり、有事の際は助けあっている関係だといえます。
エルトゥールル号遭難事件から始まったトルコと日本の深い関係とは?
アジアハイウェイ路線
アジアハイウェイとは、国家間をまたぐ国際道路をアジアに作ろう、という世界規模のプロジェクトです。
ヨーロッパやアメリカにはすでに類似の国際道路があり、同じ取り組みをアジアでも、という趣旨で計画されました。国連を中心に1950年代から検討が始まり、日本は2003年から参加しています。
日本国内の起点は東京の日本橋、最後は福岡高速道路を通り、中国の釜山に渡るフェリーに接続しています。
アジアハイウェイ1号線は東京とトルコの西端の国境までをつないでおり、日本からトルコに至る道となっています。
アジアともヨーロッパとも繋がるトルコ
トルコは、アジアとヨーロッパの中心に位置しており、ヨーロッパとアジアの要素を併せ持つ独特の風土を構築しています。
日本との縁も深く、有事の際は互いに助け合いながらともに歩んできました。意外な共通点も多いので、探してみると思わぬ発見があるかもしれませんよ。
トルコ旅行に行かれる際は、地理的な特徴や歴史にも目を向けてみると、また違った楽しみ方ができるでしょう。
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