イスタンブールの地下宮殿は必見!メデューサに守られた場所の正体とは?
更新日:2023.04.03
投稿日:2022.03.04
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アジアとヨーロッパを結ぶ大都市・イスタンブール。歴史的建造物が立ち並ぶ美しい街です。そこで観光客から特に人気の名所の一つが「Yerebatan Sarayi(イェレバタン・サラユ)」=「地下宮殿」。「蛇の柱」や「メデューサの顔」など、見どころがたくさんある観光スポットです。
映画の舞台にもなった有名な場所なので、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれません。今回は地下宮殿の歴史的背景や魅力をご紹介します。
地下宮殿の正体は地下貯水池!
イスタンブールの地下宮殿の正体は、宮殿ではなく地下貯水池です。世界遺産として有名なイスタンブール歴史地区には、複数の地下貯水池が発見されていますが、その中でも特に有名なのが地下宮殿です。
イスタンブール内の数々の貯水池の中でもっとも大きく、もっとも素晴らしいと言われている貯水池です。水中から突き出た大理石の柱が宮殿を彷彿とさせることから、「Yerebatan Sarayi(イェレバタン・サラユ)」=「地下宮殿」と呼ばれるようになりました。地下の薄暗い場所でライトアップされた数本の柱が水面に立っている様子は荘厳な雰囲気を醸し出しています。
また、貯水槽内に溜まった水の中で多くの魚が泳いでいるところも美しく幻想的です。ここが公開されたのは1987年のこと。貯水池の大部分が泥で埋め尽くされていたため、数年かけて修復作業を行った末に公開されました。
地下宮殿は別名「バシリカ・シスタン」と呼ばれる
この地下宮殿をつくらせたのはビザンツ帝国皇帝ユスティニアヌス1世。531年のニカの乱を鎮圧した後、7,000人の労働者につくらせたと伝わっています。もともと地下宮殿の周りには「フォルム」と呼ばれる古代ローマ帝国時代の公共広場があり、現在地下宮殿がある場所にはバシリカと呼ばれる建物がありました。
475年の火災により建物が崩壊したとのことですが、そのバシリカの地下につくられたことから、地下宮殿は「バシリカ・シスタン」と呼ばれるようになりました。
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ヴァレンスの水道橋を通って森から水を貯めていた
地下宮殿はイスタンブールの北の黒海に近いベルグラードの森とその周辺の水資源から水を引いて貯水し、ヴァレンス水道橋(ボズドアン水道橋)を通じてコンスタンティノープル(現イスタンブール)に配水していました。
ビザンティン時代に限らず、オスマン帝国時代もこの地下宮殿は使われていたそうです。この水道橋は現存していて、観光名所になっています。
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なぜイスタンブールに地下貯水池がつくられたのか?
東ローマ帝国時代、イスタンブールはコンスタンティノープルと呼ばれており、現在と同様に当時も大都市として栄えていました。
コンスタンティノープルは水資源に乏しかったため、水を貯めて市内に配水する目的で地下貯水池を建設したと言われています。市の公共の浴場や皇帝が暮らす宮殿などで大勢の人々がこの水を利用しました。地下貯水池の貯水量は10万トンにもおよびます。大量の水を貯めて管理できたため、たくさんの人々の生活用水をまかなうことができていたのです。
15世紀になると、オスマン帝国がトプカプ宮殿の水源として地下貯水池を利用するようになったそうです。しかしその後、オスマン帝国が独自の水道施設をつくり出したことで、次第に使われなくなっていったと言われています。
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地下宮殿の魅力をまとめて紹介!
ここからは、訪れた際にぜひ見ていただきたい地下宮殿の魅力を紹介します。
願掛けができる「蛇の柱(嘆きの柱・涙の柱)」
地下宮殿を訪れる際に注目してもらいたいポイントは柱です。さまざまな種類の大理石からつくられた無数の柱が立ち並ぶ様子からは壮大な雰囲気が醸し出されています。柱のうち98本はコリント様式で、それ以外はドーリア様式。ほとんどの柱が円柱ですが、中には角のあるものや溝が彫られているものもあります。ぜひ柱のデザインにも注目してみてください。
柱の中に、「蛇の柱(嘆きの柱・涙の柱)」と呼ばれる有名な柱があります。その柱はなぜか常に濡れていて、まるで柱が泣いているように見えることからこのように呼ばれています。言い伝えによると、地下宮殿建設中に亡くなった多くの奴隷を偲ぶためにつくられたそうです。また、その柱はローマ時代の公共広場「Forum Tauri(フォルム・タウリ)」にあるテオドシウス1世の凱旋門に似ていると言われています。
そして「蛇の柱」は願掛けができる柱としても有名です。円柱にあいた目玉のような穴に親指を入れ、そのまま360度手を回転させることができれば願いが叶うと言われています。それほど難しい動作ではないので訪れたときにはぜひトライしてみてください。
地下宮殿の最大の目玉「メデューサの顔」
地下宮殿の最大の目玉はメデューサの顔です。メデューサとはギリシャ神話に出てくる怪物
のことで、見た者を石に変えてしまう力があると言われています。人々はメデューサのその強い力を魔除けとして利用しようと2本の柱の下に彼女の顔を彫ったそうです。
不思議なことに、2つのうち1つは横向き、もう1つは逆さに置かれています。ちなみに彫刻がつくられたのはローマ時代。彫刻の素晴らしさから、当時の高度な彫刻の技術を感じ取ることができます。
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有名映画の舞台にもなった地下宮殿
地下宮殿は名作映画の舞台としても有名です。具体的には、ジェームズ・ボンドの『007 ロシアより愛をこめて』や、「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの『インフェルノ』などを例として挙げることができます。これらの作品をご覧になる際はぜひ地下宮殿に注目してみてください。
近くには地下宮殿をイメージしたレストランも!
地下宮殿以外にも、イスタンブールにはさまざまな地下貯水池があります。地下貯水池の上にお店やカフェが建てられて、内部で貯水池の一部を公開しているケースもあります。
アヤソフィアのすぐ裏の道には地下貯水池を改造して建てたレストラン「サルヌチュ・レストラン」があります。食事をしながら、ビザンツ時代の地下貯水池の雰囲気を感じることができますよ。ちなみに料理はアナトリア・トルコ料理、オスマン宮廷料理がメイン。観光後のお食事にいかがでしょうか?
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名称 | Sarnıç Restaurant(サルヌチュ・レストラン) |
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住所 | Cankurtaran, Soğuk Çeşme S. No:26, 34122 Fatih/İstanbu |
公式サイト | http://www.sarnicrestaurant.com/ |
地下宮殿の観光ガイド!アクセス・入場料・営業時間は?
ここからは、地下宮殿を観光する前に確認しておきたい情報をご紹介します。
駅から徒歩2分とアクセスしやすい!付近には他の観光スポットも!
地下宮殿はイスタンブールのヨーロッパ側に位置する旧市街スルタンアフメット地区にあります。Tramvay(トラム)のスルタンアフメット駅から徒歩2分です。
地下宮殿と同じくイスタンブールで外せない観光スポットとして名高いアヤソフィアもこの駅の周辺にあるので、時間に余裕がある場合はぜひ両方とも訪れてみてください。ちなみに世界で最も美しいモスクと評されるブルーモスクもこの近辺にありますよ。
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入場料と見学の所要時間
入場の際はチケットが必要になります。チケット売り場は事務所のような建物の中。値段は30TL(日本円で250円ほど)です(2022年時点)。営業時間は9:00〜18:00で、休館日はありません。
個人差はありますが、見学の所要時間は30分ほど。地下宮殿は空間が広い(143m×65m)ものの、実際に歩いて見られる場所は限られているので、想像しているよりは短い時間で見学できます。ただ、有名な観光地のため、入場するまでの待ち時間が発生する可能性があります。
時間帯によっては30分以上も行列の中で待つこともあるので、それを考慮した上でスケジュールを組むとよいでしょう。中は薄暗く、階段もあるので、歩くときは気をつけてください。また、地下宮殿は入口と出口が異なります。出口はアヤソフィアの西側の通りに面していますよ。
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地下宮殿の観光情報まとめ
名称 | 地下宮殿(Yerebatan Sarayi) |
---|---|
アクセス | Tramvay(トラム)のスルタンアフメット駅から徒歩2分 |
住所 | Yerebatan C. Alemdar M. 1/3 34410 S.Ahmet/İSTANBUL, トルコ |
入場料 | 30TL(約250円)※ミュージアムパスは利用不可 |
営業時間 | 9:00〜17:30(定休日なし) |
見学の所要時間 | 約30分 |
公式サイト | https://www.yerebatan.com/en |
地下宮殿の発掘の歴史
オスマン帝国がコンスタンティノープルを征服して宮殿が移された後、地下宮殿は閉鎖されました。それから約1世紀の間、誰もその存在に気付かないまま放置されていたそうです。地下宮殿が発見されたのは1545年。あるフランス人の探検家が、人々が家の床の穴から水を汲み出したり、魚を釣ったりしているのを見て調査を始めたことがきっかけでした。
しかし解明されたのは地下宮殿の一部に過ぎず、その後何百年もの間、地下宮殿の全貌を解き明かすことはできなかったのです。第一次世界大戦の頃、ドイツ人潜水士が折りたたみ式のボートを地下宮殿の中に入れ、考古学者による調査が行われた際に、地下宮殿全体の大きさが判明したと言われています。
地下宮殿以外にも多くの貯水池がある
イスタンブールには地下宮殿以外にもさまざまな貯水池がありました。ここでは代表的な2つの地下貯水池をご紹介します。
シェレフィイエ・サルヌチュ(テオドシウスの地下貯水池)
シェレフィイエ・サルヌチュは428〜443年につくられた貯水池。テオドシウス2世によって建てられたことから、「テオドシウスの地下貯水池」と呼ばれています。
比較的に小規模ですが、約1,600年の歴史を持つ地下貯水池です。2018年4月に一般公開され、入場できるようになり、現在はトルコ初の360°プロジェクションマッピングシステムを使い、歴史的なストーリーを体感できる10分間の上映ショーを行っています。神秘的な貯水槽の空間に、壮大で幻想的な演出が施され、見学者たちを魅了します。
名称 | テオドシウスの地下貯水池(Şerefiye Sarnici) |
---|---|
住所 | Binbirdirek Mh., Piyer Loti Cd. No:2/1, 34122 Fatih/İstanbul |
入場料 | 120TL(約1,000円)※ミュージアムパスは利用不可 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
公式サイト | https://www.serefiyesarnici.istanbul/ |
ビンビルディレッキ・サルヌチュ
ビンビルディレッキ・サルヌチュは、地下宮殿の次に大きな貯水池です。4世紀のコンスタンティヌス帝の時代につくられました。現在、イベント会場として使われることはありますが、残念ながら一般公開はされていません。
地下宮殿で歴史の息吹を感じよう
地下貯水池として大都市・イスタンブールの人々を長い間支え続けてきた地下宮殿。歴史の表舞台から姿を消した時期もあったものの時を経て発見され、現代の人々に歴史を伝え続けてきました。
そして水の上に何本もの柱が立ち並ぶ神秘的な様子や、「蛇の柱」や「メデューサの顔」などの興味深い柱や彫刻は、時を越えて私たちの心に大きな感動を与えてくれます。トルコ旅行の際にはぜひ地下宮殿に立ち寄ってみてください。
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