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ディオゲネスは樽で生活した哲学者!究極のミニマリストの生涯や名言・逸話を紹介

更新日:2023.04.05

投稿日:2022.08.09

Views: 4250

ディオゲネス アレキサンダー大王

古代ギリシア有数の哲学者ディオゲネスは、当時ギリシア植民地であった黒海沿岸の町シノぺ(現トルコのシノプ)出身の哲学者。個性派揃いとされる古代哲学者の中でも、特にディオゲネスは数多くの面白い逸話や名言が語り継がれている注目の偉人です。

文明が発達した21世紀現在でも、持ち物を最低限に止めるミニマリストという考えが話題に上ることがあります。このディオゲネスは紀元前の時点で、そうした質素なあり方を生涯追求した究極のミニマリストと言えるでしょう。

地位や住まいを含め、無駄を徹底排除した彼の自足的な生き様は、精神医学の専門用語「ディオゲネス症候群(シンドローム)」に採用されるなど、哲学の枠を超えた影響力を今日まで残しています。

ディオゲネスの数奇な生涯と思想の特徴

ディオゲネス

ディオゲネスとは、古代ギリシア期の犬儒学派(キュニコス派)に属し、「哲学の祖」ソクラテスの孫弟子に当たる哲学者です。

現在のトルコで出生したディオゲネスは、宝石商や両替商を営む父とともに生計を立てますが、ある日通貨の偽造・変造の罪に問われ国外追放されてしまいます。

その後、アテナイ(現アテネ)に住み着いた当時55歳のディオゲネスは、キュニコス派の祖であるアンティステネスに、粘り強い懇願の末に弟子入りし、哲学の道を本格的に歩み始めました。

ディオゲネスの思想は、ソクラテスの流れを汲む犬儒派と禁欲主義の実践にあり、社会的・宗教的慣習に囚われず、自然に従い理性にかなった生き方を自らの生涯を通じて体現しました。

樽の中に住まい、ボロボロの衣服をまとって禁欲を貫く姿勢は、同時期の哲学者プラトンから「狂ったソクラテス」と称されるほど異質の存在感を放っていたそうです。

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ディオゲネスの名言

ディオゲネス アテナイの学堂

自らの思想を頑なに貫いた一方、人々に慕われていたディオゲネスは、多くの興味深い名言が語り継がれています。

「人生を生きるためには、理性をそなえるか、それとも、(首をくくるための)輪索(わなわ)を用意しておかねばならない」

この言葉では、「理性」と死を象徴する「輪索」を対比的に並べることで、理性を備えることが人としていかに大切かという真理を、ディオゲネスらしい表現で伝えようとしているのでしょう。

「競争の際には、隣の人を肘で突いたり足で蹴ったりして、人びとは互いに競い合うのに、立派な善い人間になることについては、誰ひとり競い合おうとする者はいない」

これは、地位や富を巡って競争の絶えない人々の姿勢を暗に批判し、徳を積んだ立派な善人こそ最優先に目指すべき姿だと諭しています。

徳を身に付けることが人間の真のあり方と説いたディオゲネスの意志は、こうした名言にも色濃く反映されています。

「教養は、若者にとっては気品であり、老人にとっては慰めである。貧者にとっては財産であり、富者にとっては装飾である」

(「君は哲学をしているくせに、何も知らないね」と言った人に対して)「たとえぼくが知恵のあるふりをしているだけだとしても、そのことだってまた哲学をしていることなのだ」と応じた

(「君はもう年寄りだ。今後は、力を抜いてくつろぎたまえ」と言った人たちに対して)「何だって?もしぼくが長距離コースを走っていたとして、ゴール間近になったときに、ぼくはいっそう力を入れるのではなくて、力を抜くべきだというのかね」と応じた

これらの言葉のように、人を食ったような問答を多用していたのも、ディオゲネスならではの特徴といえるでしょう。

出典:ギリシア哲学者列伝(中)

しかし、相手の地位や立場に関わらずぶれない「ディオゲネス節」が、広く市民から支持されていたことは想像に難くありません。

樽で暮らした究極のミニマリスト

ディオゲネス

ディオゲネスは社会規範に囚われず、無欲・無所有を是とするキュニコス(犬儒学)派に属しています。

特に、清貧な生き方を実践するという点では、キュニコス派の中でも異彩を放っており、物も住まいも持たず放浪する犬のような生き様から、「犬の哲学者」とも呼ばれていました。

家代わりに樽の中で生活し、持ち物はずた袋と柄杓のみという徹底した禁欲主義を実践。しかし、ある日手で水をすくって飲む子供たちの様子を目にして、「まだ不要なモノがあったか」と柄杓すらも投げ捨ててしまったそうです。

当初は、風変わりな行動を怪しまれていたディオゲネスですが、相手の身分や立場を意に介さない態度から徐々に人望を集め、住処であった樽をいたずらで壊された折には、アテナイの人々から新しい樽を用意してもらったというエピソードも残っています。

ディオゲネスの逸話

ディオゲネスは、皮肉とユーモアの詰まった問答が有名で、日本で例えるなら一休さんのように頓知の効いた逸話が数多く伝えられています。強いて言えば、ディオゲネスの方がより皮肉のエッセンスが強く、言いくるめようと挑んできた相手を返り討ちにするような逸話に事欠きません。

アレクサンドロス大王との逸話

ディオゲネス アレクサンドロス大王

数ある逸話の中で最も有名と言えるのが、アレクサンドロス大王とのエピソードでしょう。ギリシアを支配下に置き、後に広大な帝国を築いたアレクサンドロス大王は、型破りな哲学者の噂を聞きつけて、ディオゲネスのもとに自らが出向いたとされています。

絶対的な為政者を前に動じた様子のないディオゲネスに対し、「私が恐ろしくないのか」と大王が尋ねたところ、ディオゲネスは「あなたは善人ですか悪人ですか」と問い返したそうです。「私は善人だ」と言う大王の返事に対し、「それでは誰が善い者を恐れましょうか」とディオゲネスは答えたと言われています。

そして、機知に富んだ問答に感銘を受けたアレクサンドロスに「何か望みはないのか」と尋ねられると、ディオゲネスは「日陰になるので、私の前からどいてください」と実に彼らしい言葉を世紀の権力者に向けて返したそうです。

見方によっては、やや辛辣な対応を受けたアレクサンドロス大王でしたが、特に機嫌を損ねることもなく、帰りの道中で「アレクサンドロスでなければ、私はディオゲネスになりたかった」と語ったと伝えられています。

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自ら奴隷となり主人の息子の家庭教師に

アイギナ島への航海中に海賊に捕らえられたディオゲネスは、奴隷として売りに出されるという受難を体験しています。そこで何ができるか問われたディオゲネスは、奴隷の立場ながら「人を支配することです」と答えたばかりか、コリント人のクセニアデスを自分から指名し「あの人に私を売ってくれ」と堂々と振る舞ったと伝えられています。

常識的に考えるとリスクの大きな言動ですが、要望通りにディオゲネスを買い取ったクセニアデスは、家事全般や子供の家庭教師役を全てディオゲネスに委ねました。

ディオゲネスは、全てのタスクを完璧にこなし、子供の指導役としても際立った成果を残したため、結果的にクセニアデスは「(家庭に)福の神が舞い込んだぞ」と大喜びだったという逸話も語り継がれています。

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白昼にランプを灯して“人間”探し

ディオゲネス

ディオゲネスはある時、昼間からランプに明かりを灯して街を歩き回り、その行動を不審に感じて何をしているのか問いかけた市民に「私は人間を探しているのだ」と答えたと言われています。

これは文字通り人間が視界に入らないのではなく、ディオゲネスが唱える徳のある人間、すなわち人の本質が備わった人物になかなか巡り会えない状況を、彼なりの行動で風刺した場面と捉えることができます。

羽をむしった鶏は人間

ソクラテスの孫弟子に当たるディオゲネスは、ソクラテスの弟子の中でも特に著名な哲学者、プラトンの教義と真っ向から対立したことで有名です。元々皮肉を込めた議論をしがちなディオゲネスでしたが、特にイデア論を掲げるプラトンに対しては敵対心を露わにした言動が逸話として多く残っています。

例えば、プラトンが講義で「人間とは、二本足の羽のない動物である」と論じていると、ディオゲネスは羽をむしり取った鶏とともに教室に現れ、「これもプラトンの言うところの人間だ」と盛大に煽ったと伝えられています。

従者マネスとの逸話

ディオゲネスが諸国を放浪していた際に、マネスという名の奴隷が主人(ディオゲネス)を見限って、逃亡するという事態が起こりました。

周囲は、逃げた奴隷をすぐに探し出そうとしますが、ディオゲネスはそんな出来事を意に介さず「マネスはディオゲネスなしでも生きていけるが,ディオゲネスはマネスなしではやっていけないとすれば馬鹿げているではないか」と言い放ったそうです。

これはマネスの逃亡を寛容に捉える意味合いのほかに、主人が奴隷を必要とする以上、主人もまた奴隷に対する奴隷でしかないという真理を鋭く付いた言葉と解釈されています。

ディオゲネス症候群(ため込み障害)

ディオゲネス

皆さんは「ディオゲネス症候群」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。身だしなみを気にかけず、掃除や片付けを放棄し、自宅に物を大量にため込んだりする行動はディオゲネス症候群(ため込み障害)と呼ばれています。

特に、高齢者に多く見られる精神疾患及びストレスへの防衛反応とされ、身体機能の低下との関連性など日々研究が進んでいる分野でもあります。

生前のディオゲネスが住環境や身だしなみに無頓着で、浮浪者のような生活を送っていたことから、一部相違点は認められるものの、この哲学者にちなんだネーミングが精神医学の世界で定着したのです。

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ディオゲネスが生まれた地トルコで歴史ロマンを感じませんか?

ディオゲネス トルコ

ディオゲネスはトルコの現シノプ(スィノプ)生まれの哲学者で、当地にはディオゲネスの大理石像が建てられています。「人間を探して歩いた」逸話通りに、片手にはランプを持ち、「犬の哲学者」に相応しく傍らの犬とともに樽の上に立つディオゲネス。

こうした、ディオゲネスのこだわりや生き様が投影された石像は、死後何年経っても人々を引き付ける彼の不思議な魅力を象徴しているかのようです。

さらに、古来より文明や強国が栄えたトルコには、他にも古代遺跡や歴史ロマンあふれるスポットが豊富に揃っています。

もっとも一か所を訪れれば、トルコの全てを体感できるというわけではなく、各地域や街が異なるカラーを有していて、複数回リピートしたくなるような奥深さがあります。歴史好きにはたまらない魅惑の国トルコへ、ぜひ観光に訪れてみるのはいかがでしょうか。

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