知れば知るほど食べたくなる!トルコアイス「ドンドゥルマ」を大解剖
更新日:2023.03.31
投稿日:2021.10.26
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トルコアイスというと、あの伸びるアイスを想像する方がほとんどでしょう。しかしながら、ドンドゥルマはただのアイスクリームにあらず!トルコの伝統的なアイスクリームは、知れば知るほどおもしろく、トルコの食文化の懐の深さを感じさせてくれます。
この記事では、トルコアイス「ドンドゥルマ」を大解剖。その魅力を余すことなくお伝えします。
Contents
【基礎知識編】トルコアイス「ドンドゥルマ」の全貌を知っておこう!
トルコアイスとは実際にどんなアイスなのか? 材料は?名産地はあるの?などなど。旅先でトルコアイス「ドンドゥルマ」を楽しみながら味わうために、まずは基本的な情報を解説していきます。
そもそもトルコアイスとはどんなアイスなの?
トルコでは、アイスクリームなどの氷菓のことを「ドンドゥルマ」と呼びます。直訳すると「凍っている」という意味。
日本では「トルコアイス」というと、「ドローンと伸びるあのアイスクリームか!」とイメージする方がほとんどだと思いますが、あの伸びるアイスクリームは、ドンドゥルマの中のひとつ。正式には、その発祥地の名前を冠して「マラッシュ・ドンドゥルマ」とも呼ばれます。
マラッシュ・ドンドゥルマの主な材料は、山羊の乳と砂糖、そしてサーレップというトルコ南東部に自生するラン科の植物の根。このサーレップを使うことで、あの粘り気が出るのです。
さて、このマラッシュ・ドンドゥルマですが、なんと300年以上もの歴史があるというから凄い。トルコの伝統的な食べ物のひとつでもあるんですね。
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トルコアイスが伸びる秘密「サーレップ」とは?
トルコアイス、ドンドゥルマが伸びる秘密の材料が「サーレップ」だということは前述したとおり。ここでは、もう少し詳しくサーレップについて解説していきます。
サーレップとは、トルコ南東部に自生するラン科の植物の根のこと。これを粉砕した粉を混ぜることで、アイスクリームに粘り気がでます。
このサーレップですが、日本では手に入れることができません。それどころか、本場トルコでも大変希少なもの。近年では絶滅の危機に瀕していて、トルコ国外への輸出は禁止されています。
サーレップはトルコ南東部の標高1000~1500mの地に自生している植物で、人工栽培は行われていません。すべて手で摘みとるのですが、粉1kgにつきなんと2600株もの球根が必要。そのため、トルコ国内でも年に45トンしか製造されないそうです。トルコアイス、マラッシュ・ドンドゥルマは実はかなり希少なアイスクリームだったんですね。
余談ですが、サーレップという言葉、トルコ語ではその形状から「キツネの睾丸」という意味を持つそうです。希少性も相まみえて、マラッシュ・ドンドゥルマは、実はかなりの珍味ともいえそうです。
ドンドゥルマの本場は「カフラマン・マラッシュ」
トルコアイスのドンドゥルマは、正式には「マラッシュ・ドンドゥルマ」と呼ばれますが、この名前の由来になっているのがトルコ南東部の町「カフラマン・マラッシュ」。そしてこの町こそが、マラッシュ・ドンドゥルマ発祥の地であり、サーレップの主な産地でもあるのです。
ドンドゥルマの歴史は300年ほど前から紡がれます。カフラン・マラッシュの町で作ったアイスクリームを山の上に届けるため、暑くても溶けないようにと、サーレップの粉を混ぜて粘り気を出したのが始まりだといわれているそうです。
今では夏になると、マラッシュ・ドンドゥルマの大きなかたまりを天井から吊して、電動のこぎりで切るという大胆なパフォーマンスが観光客を楽しませてくれます。ぜひ見てみたいですよね!
そんな「マラッシュ・ドンドゥルマ」ですが、正式にそう呼ばれるには、かなり高いハードルをクリアしなくてはなりません。まずは材料。こちらは、カフラマン・マラッシュ内に生息するタイムやヒヤシンスなどの花で育った山羊の乳とサーレップを使います。
また、それを作る職人も限られています。マラッシュ・ドンドゥルマを作る職人は世襲制で、アイス店直系の男子のみが、代々レシピを受け継ぐことができます。
こうして、材料と職人の条件などをクリアし、カフラン・マラッシュで作られたドンドゥルマだけが、マラッシュ・ドンドゥルマと呼ばれます。トルコ国内でも、かなり希少な存在ですが、トルコを旅して出会えたなら、絶対に食べたい逸品といえるでしょう。
トルコの人はアイスが大好き。トルコ全土にアイスの店がある
トルコ人のアイスクリームの年間消費量は、ひとりあたり4.6リットルで、トルコの国産だけでなく市販製品もあわせて総売上額は8億2100万ドル(2008年ユーロモニターより)にものぼります。
出典:Turkish Statistical Institute、『アイスクリームの歴史物語』(原書房)
そう、トルコの人はアイスクリームが大好き!トルコ人曰く「夏場はなくてはならないスイーツで、老若男女みんな大好きでよく食べる」のだとか。ちなみに、市販のアイスクリームだと、Algida社のアイスクリームや、Golf社のMaraşım(マラシュム)シリーズのアイスクリームなどが人気ということです。
ただし、トルコ人がアイスクリームを食べるのは夏場のみ。寒い季節は体が冷えるので食べないそう。そのため、トルコアイスの屋台もハイシーズンに比べて数が減るとのことですから、トルコアイスを食べるためにトルコへ行く方は、夏場をねらってくださいね!
【トルコで食べる編】トルコでしか味わえない美味!ドンドゥルマを食す
トルコアイスの基本的な情報がわかったところで、この章では実際にトルコでドンドゥルマを食べる時に役立つ情報を紹介していきます。オーダーの仕方やパフォーマーとのやりとり、おすすめフレーバーやイスタンブールの人気店まで網羅しているので、トルコを旅する時に役立ててくださいね。
フレーバーの多さにビックリ!まずはプレーンからオーダー
本場マラッシュ・ドンドゥルマのフレーバーは伝統的なミルク味とチョコレート味が主流ですが、イスタンブールなどの街中で出会えるドンドゥルマには、さまざまなフレーバーがあり驚かされます。
「ドンドゥルマ初体験」という方は、まずプレーンからオーダーしてみましょう。濃厚で甘いミルクの味わいが楽しめますよ。さらに、ピスタチオも食べておきたいフレーバーのひとつ。トルコはピスタチオの収穫量がなんと世界第3位! まさしくトルコを代表する食物のひとつで、アイスクリーム以外のスイーツの素材としても度々目にすることがあります。
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さらに、トルコの人におすすめを聞いてみたところ「マスティックガム味」という答えが返ってきました。マスティックガムとは天然樹脂で、日本ではチューインガムや歯磨粉などの材料にもなっています。未体験の甘スッキリ味、ぜひご賞味あれ。
ついに実食!オーダーはトルコ語でトライしよう
フレーバーが決まったら早速注文です。現地で食べるなら、トルコ語でオーダーしてみては?
アイスのオーダー方法は日本と同じく、クプ(カップ)、コルネット(ワッフルコーン)、キュラーフ(レギュラーコーン)から。さらに、ヘルヴァというモナカアイスのような生地にアイスを挟んでもらうというスタイルもあります。また、アイスはシングルなら「ビル・トプ」、ダブルなら「イキ・トプ」と注文します。
現地の言葉がほんの少しでも通じると、旅の嬉しい思い出になるものです。ぜひトライしてみてくださいね!
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うざい?! トルコアイスのパフォーマンスは最高のエンタメ!
トルコではアイスクリーム屋さんのことを「ドンドゥルマジュ」と呼びます。観光客の多い場所では、パフォーマンスを見せながらアイスを販売しています。そう、伸びるアイス、ドンドゥルマをグイーンと伸ばすあのパフォーマンスですね。
お客さんがアイスクリームを取ろうとすると、なかなか渡してもらえないというお約束のあのパフォーマンスに、ちょっとイラッとしたことがある方もいるのでは?
実際にトルコの人は毎回あのパフォーマンスをひとしきり楽しんでいるのか? ちょっと疑問だったのでトルコの方に聞いてみたところ、
「現地のトルコ人はパフォーマンスのあるドンドゥルマ屋ではあまりアイスを購入しません。パフォーマンスがあるドンドゥルマ屋は観光地に多いので、現地では子供が楽しむくらい。または、パフォーマンス無しでと普通にドンドゥルマのみを買います」とのことでした。なるほど。
しかしながら、観光でパフォーマンスを初体験した場合は「恥ずかしがらずに大きなリアクションで冗談にのって楽しんでください!」ということですので、日本人的なシャイな心は捨てて、ドンドゥルマパフォーマンスも満喫しちゃいましょう!
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イスタンブール在住者おすすめ! 人気のトルコアイス店
イスタンブールで人気があり、日本人観光客におすすめしたいトルコアイスの店を、現地在住の方に紹介してもらいました。実際にトルコ・イスタンブールを訪れたら食べに行ってみてください!
MADO(マド)
本場カフラマンマラシュに本店のある全国チェーンのドンドゥルマ店。店名はMaraş Dondurmasıの頭の2文字をとってつけられた。おすすめは、ノーマルのミルク味マラシュ・ドンドゥルマ「サーデ・ケスメ・ドンドゥルマ」。ナイフとフォークで切って食べるアイスです。その他ハニー&アーモンド味のドンドゥルマもおすすめ。
Yaşar Usta(ヤシャール・ウスタ)
1962年創業の手作りアイスの人気店。イスタンブールのヨーロッパ側に3店舗、アジア側に7店舗あり。おすすめはフルーツ系のフレーバー。ちょっと変わったイチジク味もおいしい。
http://www.yusdo.com/urunler.html
Damla Dondurma(ダムラ・ドンドゥルマ)
新市街の少しローカルな場所にある小さな店。どのフレーバーのアイスもおいしいですが、おすすめはマスティックガム味!
【家で楽しむ編】おうち時間で楽しむトルコ風アイス
ドゥンドルマの原料は日本では手に入りませんが、トルコ風アイスに出会うことはできます。トルコでドンドゥルマにハマったという方も、まだ食べたことがないという方も、トルコ風アイスを食べながらトルコの旅に思いをはせてみませんか?
トルコ風アイスは家で作れるの?
「マラッシュ・ドンドゥルマ」はトルコ国内でも希少な存在。さらに、その材料となるサーレップも希少で、トルコ国外への輸出が禁止されていることは前述したとおり。そのため、日本で目にするのはほとんどが「トルコ風アイス」ということになります。
実際にトルコ国内でも、サーレップの代用品を使ってアイスに粘り気を出していたりします。それならば、粘り気を再現できれば家でもトルコ風アイスが作れるのか?
トルコの方に聞いてみたところ、
「日本でも家でアイスクリームをあまり手作りしないように、トルコでも家でトルコアイスを作るということはほとんどない」とのことでした。そりゃそうだ。
それでも、なんとか日本でトルコ風アイスを食べたいという情熱ある方は、納豆や餅を使ってトライしているようです。さらに調べていると、トルコアイスの粘り気を科学的観点から再現しようとしたおもしろいレシピを見つけました。
『The Kitchen as Laboratory 新しい「料理と科学」の世界』(講談社)という書籍の中で紹介されているのですが、ここではコンニャク粉を使ってその粘り気の再現をしようとしていました。結果は、伸びと噛み応えは似せることができたが、まだまだ実験の余地ありといったところ。興味のある方は、家でオリジナルレシピを考えてみるのも楽しいかも知れませんよ!
トルコ風アイスは購入できる!
日本人のアイスクリーム消費量はひとりあたり年間約7リットル。実にトルコ人の年間アイスクリーム消費量のおよそ1.5倍にものぼります。そう、私たち日本人も、アイスクリームが大好き。しかも一年中アイスクリームを食べていますよね。そんなアイス大好き国の日本では、さまざまなアイスクリームに出会うこともできます。
もちろんトルコ風アイスも購入可能。以前は期間限定でコンビニエンスストアなどでもトルコ風アイスが販売されていましたが、現在(2021年12月)購入できる商品を調べてみたところアマゾンで1品発見。その名も「のび~るトルコアイスどんどるまん」。
気になる人はチェックしてみて!
ドンドゥルマに出会えるトルコを旅してみよう!
ここまで、トルコアイスのドンドゥルマについて、基本情報から貴重な現地発の情報におすすめの店まで、さまざまな角度から紹介してきました。
とりわけ、本場の「マラッシュ・ドンドゥルマ」はトルコでもなかなかお目にかかれない特別なアイスクリームだということは、知らなかった方のほうが多いのでは?トルコの伝統的な食べ物のひとつでもある、ドンドゥルマ。その奥深い世界をのぞきに、トルコを旅してみませんか?
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