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叙事詩『イリアス』のあらすじを分かりやすく解説!古代ギリシャの名作は誰が書いた?

更新日:2023.04.05

投稿日:2022.08.31

Views: 5103

アキレウス パトロクロス

『イリアス』を知っていてもどんな物語か内容を知っている人は少ないのではないでしょうか。イリアスは世界史の授業の割と序盤に出てくるのですが、実は物語の中身はあまり知られていません。そんなイリアスのストーリーを知ると、こんなに面白かったのか!と思う人も多いと思います。ここではイリアスとはどんな物語なのか、作者のホメロスについても併せて紹介します。

叙事詩『イリアス(イーリアス)』とは?

トロイア戦争

『イリアス(イーリアス)』とは、古代ギリシャの吟遊詩人・ホメロスによって作られたとされるギリシャ叙事詩の作品のひとつです。この作品が作られたのは紀元前8世紀の中頃と言われ、ギリシャ最古最大の英雄叙事詩とし、全部で1万5,639行が全24巻で描かれています。

イリアスの物語は、ギリシャ神話の中でも特に人気のある「トロイア戦争」の一部を切り取ったもので、ギリシャ軍(アカイア)とトロイア軍の戦いを描いた英雄叙事詩です。トロイア戦争と聞くと、トロイの木馬を想像する人が多いと思いますが、この物語ではトロイの木馬作戦は登場しません。英雄アキレウスを中心としたトロイア戦争終盤に起こった出来事が描かれているのです。

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イリアスの意味|名前の由来はトルコのトロイ?!

トロイの木馬 トルコ アナトリア

イリアスの意味は、トルコ西部にあるトロイが由来になっています。トロイは現在、トロイの木馬があることでも知られている古代都市の遺跡、トロイ遺跡として有名な観光名所です。

かつてこの場所には「ダルダノス」と呼ばれる国が存在していました。後にダルダノス王の孫のトロースがここにあった都市を「トロイア」と呼ぶことにしますが、やがてトロースの子イーロスがイリオスと名称を変更しました。したがって、この都市は「トロイア」または「イリアス(イリオス)」両方の名で呼ばれていました。

なお、イリアスは「イリオスの歌」を意味しており、都市イリオスで起きた物語を歌ったことで『イリアス』という題名が付けられたのです。ちなみに、英語ではイリアスをイリアッド(iliad)と呼んでいます。

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トロイア戦争の発端

アフロディテ パリスの審判

イリアスの背景となっているトロイア戦争は、古代ギリシャのミケーネやスパルタなどによるギリシャ王国連合とトロイア王国との間で起こった戦争です。トロイアの王子パリスが女神アフロディーテの助けを借り、スパルタ王メネラオスの妃である絶世の美女ヘレネーを奪ったことから始まりました。これに怒りが収まらないヘレネーの夫メネラオスは、兄アガメムノーンを大将にギリシャ軍を組み、トロイアへの攻撃を始めたのです。これによって、10年にもわたる「ギリシャ(アカイア)軍」と「トロイア軍」の戦争が始まりました。

トロイア戦争では10年もの長い戦争のさなかで、最強の英雄アキレウスと冷静沈着な英雄オデュッセウスらが活躍します。イリアスの作者ホメロスはこの2人の英雄の活躍を英雄叙事詩として書き残したのでした。

【トロイア戦争】

時期 紀元前1260年~紀元前1180年
場所 トロイア王国(現在のトルコ北西部、ダーダネルス海峡の南あたり)
概要 ギリシャ王国連合とトロイア王国の間で起こった10年にわたる戦争
勝敗 ギリシャ軍が勝利したが、両軍大勢の英雄が戦死した

イリアスの主な登場人物

イリアスには、多数の英雄や神々が登場します。まずは、主な登場人物についてギリシャ側とトロイア側に分けて紹介します。

ギリシャ(アカイア)側

アキレウス(主人公)

トロイア戦争 アキレウス ヘクトール

イリアスの主人公であり、トロイア戦争最強の英雄です。女神ティティスの血を引く半神で、生まれて間もなく冥界の川に身体を浸されたため、不死身の肉体を持っています。そんなアキレウスにはひとつだけ弱点がありました。冥界の川に浸された時に、アキレウスは足首を掴まれて頭から浸され強靭の肉体を得ますが、唯一浸らなかった足首周りが弱点となり、足首の後ろを矢で射抜かれ亡くなったのです。この逸話から、弱点や急所のことを「アキレス腱」と呼ぶようになりました。

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アガメムノーン

アガメムノン

ギリシャ側の総大将で欲張りな性格です。ギリシャ神話では、アガメムノーンによって、ミケーネ文明が繁栄したとも言われています。アガメムノーンの父は、神ゼウスの子孫であるミケーネの王アトレウスです。

オデュッセウス

オデュッセウス

ギリシャ軍の知将とされる人物です。後の作品となるホメロスの叙事詩「オデュッセイア」では主人公となって活躍しています。

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ネストル

ギリシャ神話では、お人好の老将として好意的に描かれている人物です。アガメムノーンとアキレウスとの間を朝廷するなど仲裁役としても本領を発揮しています。

パトロクロス

ギリシャ勢の英雄アキレウスにとって唯一無二の親友であり、少年時代からアキレウスと共に育てられたとされている人物です。

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トロイア側

トロイ 戦争 絵画

パリス

トロイア戦争を起こした張本人となった人物です。トロイア王子でありながら、山中に捨てられ成人後再び、王子として認知されるなど波乱万丈の人生を過ごしています。後にアキレウスを討ちますが、それはイリアスの物語が終わった後『叙事詩アイティオピス』での話です。

ヘクトール

トロイア側の総大将です。強くて頭の回転に優れ、責任感が強い人物です。常にトロイア側の前線に立って戦っていたとされています。

プリアモス

トロイア最後の王とされる人物で、パリスとヘクトールの父親です。老齢のため戦争には加わらず、息子たちや祖国を見守っていました。

オリンポスの神々

全知全能の神ゼウス

ゼウス 像 彫刻

主神となる全能を司る最高神。戦争に介入して戦士たちの命運を握る場面も多いです。

海と地震の神ポセイドン

ポセイドン

ゼウスとは兄弟です。トロイア城壁建造の報酬をもらえなかったことから、トロイア戦争ではギリシャ側に味方して目立った活躍をしています。

戦と知恵の神アテーナー

アテナ 像 彫刻

戦略の女神であり、ギリシャ神話の中でも中核をなす女神のひとりとされています。アテネを中心としたギリシャ側の守護神であり、正義と知性のある戦いの神として信仰されていました。

結婚と出産の女神ヘラ

ヘラ ギリシャ神話

古代ギリシャ人の最高の女神とされおり、結婚と出産を司る神。パリスが最も美しい女神に自分を選ばなかったことからギリシャ側につきました。

炎と鍛冶の神ヘーパイストス

妻であるアフロディーテとアレースが密会していたところを捕らえたことがあり、妻を憎んでいたことからギリシャ側につきました。

愛と美の女神アフロディーテ

アフロディーテ キプロス

アフロディーテは愛を操ることができる女神で、他の人にも恋を発生させることが可能でした。パリスによって最も美しい女神に選ばれた見返りとし、ヘレネーがパリスに好意を持つように仕向けた話も有名です。

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戦いと破壊の神アレース

アレース ギリシャ神話

ギリシャ神話の軍神で戦いと破壊の神。不倫関係にあったアフロディーテと共にトロイア側についていました。

太陽神アポローン

アポロ アポロン

太陽神であり、音楽・弓術・医術・預言・牧畜の男神とされています。月の女神ディアナとは双子の兄妹。トロイアの王女カッサンドラと恋人関係であったためトロイア側に入れ込みました。

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狩猟と月の女神アルテミス

アルテミス 像 彫刻

ギリシャ神話の処女神とされ、狩猟と月の女神とされています。双子の兄アポローンに加勢するためトロイア側につきました。

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イリアスの物語の要約

アキレウス

イリアスの物語では、10年に及ぶトロイア戦争の最初から最後までを描いているのではなく、その中の一部を切り取ったトロイア戦争の終盤、10年目の51日間(数え方は諸説あり)が語られた内容となっています。主人公は最強の英雄アキレウスで、このアキレウスの怒りから物語は始まります。

物語の内容を大きくまとめると以下の通りです。

  1. 最強の英雄アキレウスの戦線離脱
  2. 両陣営の思惑や神々の介入などもあり状況は混乱を極める
  3. 神々の参戦禁止とアキレウスへの説得
  4. トロイア側の総大将ヘクトールに親友パトロクロスが討ち取られる
  5. アキレス激怒、一騎討ちの末にヘクトールを倒す
  6. プリアモスが息子ヘクトールの遺体引き渡しを要求し、ヘクタールの葬儀が執り行われる

イリアスの物語のあらすじ

前述の要約に沿ってイリアスの物語のあらすじを解説していきます。

最強の英雄アキレウスの戦線離脱

アキレウス

ギリシャ軍の総大将アガメムノーンはトロイアとの戦いの中で、トロイア側のクリューセーイスという女性を気に入り捕虜としました。クリューセーイスが捕虜となったことを知った父親のクリューセース(太陽神アポローンの神官)がアガメムノーンの元を訪れ、「身代金を渡すから大切な娘を返して欲しい」と懇願します。

しかし、アガメムノーンは、クリューセーイスに対して自分の妻よりも好意を抱いていたため父親を追い返しました。追い返されたクリューセーイスは、ギリシャ側に災いをもたらすことを祈ってアポローンに相談しました。それを聞き入れたアポローンは銀の弓を使ってギリシャ軍に疫病を蔓延させたのです。

疫病が発生して9日後、アキレウスが疫病問題を解決するための会議を開きました。そして、預言者カルカースによって、疫病の原因がアガメムノーンにあることが明らかになります。疫病を抑え込むためにクリューセーイスの返還を求められたアガメムノーンはしぶしぶアキレウスに同意します。ただし、その代わりとしてアキレウスが気に入っていた捕虜であるブリーセーイスを強引に奪い取ってしまったのです。

クリューセーイスを父親の元に返したことによりギリシャの疫病は無事収まりました。しかし、ブリーセーイスを奪い取られ激怒したアキレウスはアガメムノーンのために戦うことを止めて戦線離脱してしまいます。その翌日、アキレウスは母親であり海の女神であるティティスに一連の流れを伝えました。ティティスは、ギリシャ軍がトロイア軍に敗北するようにと願い、最高神であるゼウスに相談しました。相談を受けたゼウスはティティスの申し出に同意したのです。

両陣営の思惑や神々の介入などもあり混乱を極める戦況

ゼウスは眠っているギリシャ軍の総大将アガメムノーンにある夢を見せます。その夢の内容は、ギリシャ軍がトロイア軍に勝利する光景でした。夢から目覚めたアガメムノーンはトロイア軍へ攻撃することを決めます。ギリシャ連合軍はトロイアの平原に集結し陣形を組み、総攻撃の準備を行いました。終結したギリシャ軍にトロイア軍は気付き、ギリシャ軍を迎え討つための出撃を行うのです。

パリスがメネラオスに一騎打ちを申し出る

パリスとメネラーオスの決闘

ギリシャ軍とトロイア軍が激突する前に兄のヘクトールから助言を受けたトロイアの王子パリスが、戦争の発端となった相手ギリシャのメネラオスに自分と一騎討ちをすることで戦争を終結させることを提案しました。パリスが一騎打ちを提案した理由は、パリスがメネラオスの妻(ヘレネー)を奪ったことにも関係しています。これによってギリシャ軍とトロイア軍の戦いは一時休戦となり、両軍の兵は一騎打ちの結果に従うことを約束しました。

一騎討ちはメネラオス優位で進みます。しかし、メネラオスがパリスにとどめを刺そうとした時、トロイア軍に味方する美の女神アフロディーテが自らの力によって霧を発生させました。その隙を狙ってパリスは城内へ逃げ込んでなんとか一命を取り止めたのです。そこにゼウスに惑わされたトロイアの武将が弓を放ち、メネラオスを負傷させました。これによって休戦が破られると、再びギリシャ軍とトロイア軍の戦闘が開始されたのです。

パリスとメネラオスの一騎討ちで戦争の勝敗を決めようとするも神々の介入で戦況は混乱し、トロイア側が苦境になったと思えばギリシャ側が押されるなど目まぐるしい状況の中、争いは進んでいったのです。

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神々の参戦禁止とアキレウスへの説得

ブリーセーイス アキレウス

ギリシャ軍を不利な状況に追い込む目的として、ゼウスは神々が戦争に参加することを禁止しました。再び戦いが始まると、トロイア軍が優勢となりギリシャ軍を陣地まで押し戻しました。ゼウスの指示によって、ギリシャ側の味方をしていたアテーナーやヘラは不利なギリシャ軍を助けられませんでした。

ギリシャ軍が不利な状況を見て、老将ネストルはアガメムノーンとアキレウスを和解させようと試みます。アガメムノーンは自分の過ちを認め、その旨をオデュッセウスらがアキレウスに伝えます。アガメムノーンはアキレウスから奪ったブリーセーイスを返し、多くの財宝を渡すことでアキレウスに和解を申し出ました。

しかし、アキレウスの怒りは冷めやらず、和解の申し出を断固拒否し、トロイア軍がアキレウスの船を攻撃した際にだけ戦いに戻ることを告げたのです。

トロイア側の総大将ヘクトールに親友パトロクロスが討ち取られる

ポセイドン

一進一退を繰り返しつつ、トロイア軍はついにギリシャ軍の拠点へと迫り、ポセイドンはゼウスの指示を無視してギリシャ軍を助けます。ギリシャ軍のクレタ島の王イードメネウスも善戦しますが、トロイア軍が優位な状況のままでした。

そこでヘラはゼウスを誘惑し眠らせます。その間にポセイドンが加勢し、トロイア軍はギリシャ軍の陣地から追い出され平原に戻されました。やがてゼウスが目を覚まし、形勢が逆転している状況に気が付き、ポセイドンに対して怒りをぶつけ、今度はアポローンにトロイア軍を助けるように指示。これによりトロイア軍は再び勢いづき、ヘクトールがギリシャ軍の船団に火を放ったのです。

アキレウスの親友であるパトロクロスは、アキレウスに船を守るために戦う許可を申し出ます。アキレウスは自らの武具と兵士をパトロクロスに渡しますが、くれぐれも敵を深追いしないように強く告げました。アキレウスの武具を纏ったパトロクロスの姿を見て、ギリシャ軍はアキレウスが出陣したものと勘違いし士気が上がります。パトロクロスも猛烈な勢いで活躍し、敵将のサルペドンを倒したのです。

しかし、勢いに乗ったパトロクロスはアキレウスの言い付けを無視して、トロイアの城門まで敵を追いかけてしまいます。城壁を守っていたアポローンによって勢いは止められ、トロイア軍の総大将ヘクトールによってアキレウスの親友パトロクロスはとうとう討ち取られてしまったのです。

アキレス激怒、一騎討ちの末にヘクトールを倒す

アキレウス

親友パトロクロスの戦死を知ったアキレウスはヘクトールに激怒します。そして復讐を誓い、母ティティスに頼んで手に入れた新たな武具と共に再び戦場へと飛び出していきました。ゼウスはアキレウスが怒りを鎮めてティティスの願いが叶ったと判断し、再び神々が参戦することを認めました。

戦場に出たアキレウスはスカマンドロス川で多くの敵兵を倒しましたが、川が死者で溢れてしまったことで、河神の怒りを買い、洪水を起こされて攻撃されます。しかし、炎と鍛冶の神ヘーパイストスが大火を起こしアキレウスを助けます。アキレウスが戦場へ復帰以降、神々の間でも激しい戦いが繰り広げられたのです。

ギリシャ側の圧倒的な勢いに負け、多くのトロイア兵が城内に逃げ帰りますが、総大将のヘクトールは敗走に恥を感じ、両親が止めるにもかかわらずアキレウスと対戦することを決意します。しかし、いざ対戦するとなると恐怖を覚え、トロイア城の周りを逃げ回りました。しかし、アキレウスはヘクトールをひたすら追いかけます。

ヘクトールは再度一騎討ちを決意したのですが、結局アキレウスにあっけなく倒されてしまったのです。この時ヘクトールはアキレウスの親友パトロクロスから奪ったアキレウスの武具を身に着けていましたが、アキレウスは自身が着ていた武具であるためその弱点を知っていました。武具の弱点である首元を攻撃してヘクトールを討ち取ったのです。しかし、ヘクトールを倒した後もアキレウスの怒りは収まらず、ヘクトールの遺体を馬車に結んで引きずっていきました。

プリアモスが息子ヘクトールの遺体引き渡しを要求

ヘクトール

アキレウスは、親友パトロクロスの亡骸にヘクトールを打ち取ったことを報告しました。パトロクロスの亡骸は女神ティティスの護りによって腐食を免れていたため、きれいな状態です。ある晩アキレウスの夢の中にパトロクロスが現れ、多くの犠牲者と共に早く弔いをして欲しいと告げます。アキレウスはパトロクロスと戦死者の魂を慰めるために葬儀を行い、葬儀の後には競技大会を開き、勝者には多大な褒美が与えられました。

しかし、アキレウスの悲嘆はそれでも収まりませんでした。以前と変わらず毎日のように、ヘクトールの遺体を馬車で引きずり回していたのです。それを見たゼウスはティティスを通して、この暴虐な行為を止めさせようとします。ちょうどその頃トロイアでは、ヘクトールの父プリアモスがヘクトールの遺体に代わる品を携えアキレウスの元を訪れようと考えていました。しかし、周囲は危険だと反対します。そこで、ヘルメスがゼウスの命令を受けてプリアモスを夜の闇に紛れさせ、アキレウスの元に送り届けたのです。

プリアモスはアキレウスにヘクトールの遺体を返してもらうよう懇願しました。アキレウスとプリアモスはそれぞれ大切な者の死を悼み、涙を流します。アキレウスはヘクトールの遺体をプリアモスに引き渡すと、夜明け前にプリアモスはヘクトールの遺体と共にトロイアへ戻りました。翌日、ヘクトールの葬儀が執り行われ、国民は喪に服しました。引きずり回されたヘクトールの遺体はアポローンの加護を受けていたため無傷の状態でした。ヘクトールの葬儀の記述でイリアスの物語は完結します。

トロイア戦争とは?古代ギリシャの叙事詩で語られる出来事は史実だったのか?

イリアスの作者ホメロスとはどんな人物?

ホメロス

イリアスの作者「ホメロス(ホメーロス)」、紀元前8世紀末に存在したと言われる吟遊詩人(アオイドス)です。紀元前850年頃にトルコのスミルナ(現イズミル)またはギリシャのエーゲ海の島キオスに住んでおり、イオニア地方を吟遊していたとされています。トロイア戦争を描いた叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』の生みの親ということで、古代ギリシャ時代やその後の文化・芸術に大きな影響を及ぼした人物です。

ホメロスの名前の由来

名前のホメロスですが、古代ギリシャ語で「盲目」を意味し、ホメロスは盲目の詩人であったと言われています。しかし、生まれつき盲目というわけではありませんでした。スルミナで生まれたホメロスは、成人してから交易商の船に乗り込みギリシャの島々に立ち寄ります。しかし、航海の途中で目を患い、スミルナに戻る頃には眼病が悪化して盲目になってしまったと言われています。

ホメロスの名声はイオニア地方だけでなく、ギリシャ本土でも知られるようになりますが、ギリシャのアテナイ(アテネ)に向かう途中、エーゲ海の島イオス島で病にかかり、ここで生涯を閉じました。

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ホメロスは実在していなかった?!

ホメロスには謎が多く、実は実在していたかどうかについてはっきりと解明されていません。なぜなら、ホメロスが確実に存在していたといった信頼できる文献は今もなお見つかっておらず、正式な生没年や出身地が分かっていないからです。

謎多き詩人・ホメロスを徹底解説!イリアスとオデュッセイアのあらすじもご紹介

ホメロスの詩づくり

ホメロス

ホメロスは盲目になる前に交易商の船でギリシャの島々を立ち寄った際に、ギリシャ神話にまつわる伝承を人々から聞きました。なお、ホメロスの詩づくりは盲目となってからとされています。盲目になった後、ギリシャ神話の詩づくりに専念し、町中で詩を朗読して評判を得ました。そして、スミルナまたはキオスで代表作となる『イリアス』と『オデュッセイア』などの叙事詩が完成したのです。

これらの叙事詩の本当の作者については諸説ありますが、いずれにしても完全なオリジナルではなく、古代から語り継がれてきた口頭伝承を編集したものと考えられています。

イリアスとオデュッセイアの物語の舞台となっているトロイア戦争が起きたのは、紀元前1260年~紀元前1180年頃と推定されています。対して、ホメロスが生きていたのは紀元前850年頃だとされているため、ホメロスは戦争を直接見聞きして叙事詩を書いたわけではないのが分かります。

ホメロスの代表作

ホメロスの代表作は、『イリアス』と『オデュッセイア』とされていますが、この2つの作品はギリシャ文学の基礎となり、古典時代のギリシャ文学とギリシャ神話に大きな影響を与え、それらを通してその後の西洋文学にも影響を及ぼしました。

イリアスとオデュッセイア、いずれも一人の主人公の活躍に焦点を当てています。イリアスでは「アキレウス」、オデュッセイアは「オデュッセウス」が主人公となっており、オデュッセイアはイリアスと対になっている話です。

どちらもいくつか日本語訳が出版されていますが、比較的新しく出版された松平千秋氏訳のもの(岩波文庫)が読みやすくておすすめです。

イリアスの舞台トロイ遺跡を観光しよう

トロイ遺跡 トルコ 世界遺産

イリアスの舞台、トロイ遺跡は世界文化遺産にも登録されている有名な観光スポットです。ドイツのハインリッヒ・シュリーマンがギリシャ神話の伝説を信じて発掘、発見された都市として知られています。

トロイ遺跡は歴史ロマンあふれるトルコの世界遺産!観光のポイントは?

イリアスのストーリーに興味が出た方は、ぜひ一度トロイ遺跡を訪れて古代ギリシャの歴史に触れてみるのもおすすめです。

名称 トロイ遺跡(Archaeological Site of Troy)
住所 17100 Kalafat/Çanakkale Merkez/Çanakkale
休館日 無し ※砂糖祭と犠牲祭の初日は13:00より開館
営業時間 8:00~19:00(4月から10月)、8:30~17:30(11月から3月)
入場料 60 TL(約740円)、8歳未満の子供は無料
トロイ博物館とのセット券:100 TL(約1,240円)
ウェブサイト https://muze.gov.tr/muze-detay?SectionId=TRV01&DistId=TRV

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