ゴルゴンの怪物・メデューサって?美人姉妹が辿ったギリシャ神話の悲劇
更新日:2023.02.27
投稿日:2022.07.27
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見たものを石に変えてしまうことで有名なメデューサ。映画や漫画のキャラクターのベースになることもあるため、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
メデューサとはギリシャ神話に登場する悪役。一見トルコとは関係がないように思えますが、長い歴史を持つトルコには、メデューサやギリシャ神話にまつわる観光地がたくさんあるんです。
今回は、メデューサの生い立ちや怪物になったいきさつなどを詳しく紹介します。メデューサやギリシャ神話の歴史的背景を知っていると、トルコ観光が何倍も味わい深くなりますよ。
Contents
ギリシャ神話の「悪女」メデューサ
メデューサとはギリシャ神話に出てくる怪物で、ギリシャ語で「女王」の意味を持ちます。宝石のような美しい瞳で、目が合ったものを石化する能力を持っています。
見た目の特徴は文献によってわずかに異なりますが、緑色の肌に毒蛇の髪の毛を生やし、イノシシのような牙と青銅の腕、背中には黄金の翼を持つ、醜い怪物の姿をしていることで知られています。
そのような特徴的な容姿や能力ゆえに人々から恐れられ、姉たちとともに「ゴルゴン(意味:激しい、恐ろしい、険しい)三姉妹」と呼ばれています。
しかし、3人ともはじめから怪物だったわけではありません。なかでも、メデューサはとりわけ美しい女性だったとされています。
では彼女はなぜ人々から怖がられる存在となり、殺されてしまったのでしょうか。悲しき女性ともいわれるメデューサの有名な神話から、その理由を探ってみましょう。
美しい女性が怪物へ…メデューサとゴルゴン三姉妹の誕生
ヘシオドスの『神統記』によれば、メデューサは海神ポルキュースと海の女神ケトの間に生まれました。ステンノー(意味:強い女)とエウリュアレー(意味:広く彷徨う女)の二人の娘に次ぐ末っ子です。またヘシオドスは、夫妻には3人の他にも「グライアイ(意味:老婆たち)」と呼ばれた3姉妹がいることを記載しており、メデューサには計6人の姉がいたと考えられています。
メデューサは長くてきれいな髪を持った美しい女性でした。そして、その美貌ゆえに、海と地震を司り、ギリシャ神話において第二の地位を持つ強力な神・ポセイドンに見初められます。
ポセイドンには処女神のアテーナーという正妻がいたものの、やがて2人は愛人関係に。そしてアテーナーの神殿で関係を持ってしまった結果、メデューサは激怒したアテーナーに罰として醜い怪物に変えられてしまったのです。
ちなみに、自分の美しさを自慢してアテーナーと競ったために怒りを買い、醜い姿に変えられてしまったという説もあります。
アテーナーに抗議した姉達も怪物に
メデューサが怪物に変えられてしまったことを悲しんだ2人の姉は、アテーナーに抗議します。しかし、2人の意見は聞き入れられず、アテーナーは彼女たちをも怪物に変え、美しかった三姉妹はゴルゴン三姉妹と恐れられる存在になってしまったのです。
なお怪物へと姿を変えられた姉たちは、メデューサと同様に、毒蛇の髪の毛や猪のような牙、青銅の腕と翼、そして石化能力を持っていました。
そのなかでたった1つ異なっていたのは、姉2人は不死身であった一方で、メデューサだけは不死身ではなかったということ。そのため、後にメデューサだけが命を落とすことになるのです。
このような不運をたどったことから、メデューサは恐ろしい怪物と呼ばれる一方、悲しき女性ともいわれているのです。
メデューサを倒した英雄!ペルセウスの物語
メデューサが登場するギリシャ神話の中で最も有名なのは、ペルセウスの物語です。ところで、そもそもペルセウスとは誰で、なぜメデューサを倒す旅へ出ることになったのでしょうか。
ペルセウスはメデューサを相手にどのように戦ったのか、戦いの結末やその後のエピソードも含めて詳しく解説します。
半神の英雄・ペルセウス
物語の舞台は、古代ギリシャ・アルゴス。当地の王アクリシオスには、ダナエというとても美しい娘がいました。
しかし、後継ぎとなる男子に恵まれず、王はアポロン神殿で神々の導きを求めます。すると、ダナエが男の子を産むこと、やがてその子に自分が殺されることが予言されました。
予言に怯えた彼はダナエを青銅の部屋に閉じ込めてしまいます。ところが、全能の神・ゼウスが黄金の雨となって彼女のもとを訪れます。
そして、ゼウスとダナエの間に男の子が誕生。その子が、半神半人の英雄・ペルセウスです。
予言を恐れていた祖父王は、ペルセウスが産まれるとすぐにダナエとともに木箱に入れて海に流してしまいます。木箱はエーゲ海南東の小さな島・セリーポス島まで流され、地元の漁師・ディクテュスによって救出されたのでした。
ペルセウスはその島でたくましい青年へと成長しますが、ディクテュスの兄・ポリュデクテス王が母ダナエとの結婚を望み、平穏な生活は一変。2人の結婚を反対していたペルセウスを邪魔に思ったポリュデクテスは、邪魔なペルセウスを遠ざけるため、彼に無理難題の「メデューサ退治」を命じたのです。
神から贈り物を得たのちゴルゴンの洞窟へ
強敵メデューサを倒すため、ペルセウスはまず神々にアドバイスを求めます。
そして、アテーナーからは鏡のように光を反射する「盾」をもらいました。また、もともとは冥界の神・ハデスのものであった姿を見えなくする「隠れ兜」やヘルメスの「翼のあるサンダル」、あらゆるものを切り裂けるという「アダマスの剣(鎌)」も与えられます。
さらに「キビシス」と呼ばれる丈夫な袋を手に入れたペルセウスは、神々からの贈り物を携えて、メデューサのもとへ出発します。
遂に強敵メデューサを倒す
ゴルゴン姉妹が住む洞窟へ到着したペルセウスは、彼女たちが眠っているすきに中へと忍び込みます。そして、盾を鏡のように使ってメデューサを直接見ないようにしながら彼女に近づき、剣でメデューサの首をはねました。
メデューサが襲われたことに気づいた不死身の姉達はペルセウスを追いますが、彼は兜を使って姿を隠し、翼のあるサンダルを履いて逃げ切ります。こうして、怪物として恐れられていた美しくも悲しき女性メデューサは、ペルセウスに倒されてしまったのです。
彼は、メデューサの首をキビシスの袋に入れて持ち帰ります。しかし、メデューサの恐ろしい石化能力は衰えず、死んでもなお、彼女の首を見た者は石化されてしまいました。
メデューサ退治の帰路、囚われていた王女・アンドロメダを救う
英雄ペルセウスの偉業は、メデューサを倒しただけでは終わりません。
彼はメデューサの首を携えて故郷に戻る途中、囚われていたエチオピア王女アンドロメダを発見します。美しくも高慢な母・カシオペアに怒ったポセイドンにより、エチオピアは滅亡の危機へと追い込まれていました。
そして、その災難から逃れる唯一の方法が、アンドロメダを海の怪物ケートスの生贄にすること。そのため彼女は海の大岩に縛り付けられていたのです。
事情を知ったペルセウスは、メデューサの首を使って怪物を石化させ、王女アンドロメダを救出。ペルセウスを殺そうとした王女の元婚約者を倒した後、2人は結婚しセリーポス島に帰還しました。
島に着くと、またもやメドゥーサの首を使い、今度は王ポリュデクテスを石化させます。そして、無事に母ダナエとディクテュスの救出にも成功しました。
その後、ペルセウスはメデューサの首をアテーナーに差し出します。彼女は自分の盾にメデューサの首をはめ込み、敵対者への脅しに使ったといわれています。
翼の生えた白馬・ペガサスはメデューサから生まれた?!
翼の生えた白い馬・ペガサス。ギリシャ神話になじみがない人でも星座などで名前を知っているのではないでしょうか?
実は、メデューサはポセイドンとの子を身ごもっており、ペルセウスがメデューサを倒したときに、その血しぶきのなかから双子が誕生しました。黄金の剣を持って生まれたクリューサーオールと、翼を持つ神馬ペガサスです。
一説によると、ゴルゴン姉妹から逃げる際に、ペルセウスは翼のあるサンダルを履いたのではなく、このペガサスに乗って逃げたともいわれています。ペガサスは後に英雄・ベレロポーンの愛馬として活躍し、星座にもなりました。
ペガサスは神話以外にもギリシャ文化、ヨーロッパ文化に大きな影響を残しており、過去には霊感や不死の象徴として、後には教養や名声の象徴として、さまざまな芸術作品や紋章、硬貨のデザインなどに使われています。
トルコにはペガサス航空というLCCがあり、日本への路線はないものの、トルコ国内はもちろんトルコ~ヨーロッパ間を比較的安く移動できますよ。
そもそもギリシャ神話って?
ギリシャ神話とは、もともと古くからギリシャ周辺で語り継がれてきた、世界の始まりや、神々と英雄たちに関する物語です。
キリスト教の聖書やヒンドゥー教のヴェーダのような原典はありませんが、初期は口承形式で、後には文字文学の中で発展していきました。当時のギリシャでは、神々や精霊たち、宗教儀式から天候に至るまで、あらゆることを理解するための標準教養としての役割を果たしていました。
そしてギリシャ文化の拡張と共に神話は世界で広く伝わるようになり、古代の哲学思想やキリスト教神学、天文学や芸術の分野などにも大きな影響を与えるように。現代でも、映画やゲームなどの題材として使用されることがあります。
ギリシャ神話のあらすじ解説!十二神や英雄、怪物もまとめて紹介
物語の中心は12人の神々
ギリシャ神話の中心は、ギリシャで最も高いオリンポス山に住む12人の神々です。
とりわけ、ペルセウスの父ゼウスは、全知全能の最高神として中心的な存在。神々と人類の支配者とみなされています。
メデューサが怪物へと姿を変えられる原因となった海の神・ポセイドンはゼウスの兄にあたり、ゼウスに次ぐ権力者。メデューサ退治の際にペルセウスに贈り物を与えたハデスもゼウスの兄で、オリンポス12神には含まれないものの、冥界の神として知られています。父を倒した後、ゼウスとポセイドンとハデスの3人で天・海・地下を分け合いました。
ヘルメスはゼウスと女神・マイアの子で、旅人の守護神、神々の使者です。そのほか、ゼウスの娘で戦いと知恵の女神・アテーナー、嫉妬深いゼウスの正妻・ヘラ、ゼウスと女神・レートーの間に生まれた双子の子アポロンとアルテミス、美と愛の女神アフロディテなども有名。
そして、これらの個性豊かな神々や怪物、英雄たちが、嫉妬したり、愛のために戦ったり、時には挫折を経験したり…。現代にも通ずるエンタメ性をはらんだギリシャ神話は、時を超えて多くの人に学びや娯楽、インスピレーションを与えているのです。
怪物メデューサも!ギリシャ神話の影響を受けた作品やブランド
ギリシャ神話の登場人物や物語、テーマや教訓は、芸術や文学に大きな影響を与えてきました。
たとえば、ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』は、ギリシャ神話のアフロディテと同一視されるローマ神話の女神ヴィーナスが誕生したときの様子を描いています。
ギリシャ神話の女神アフロディテとは?絵画・石像など美術作品も紹介
ラファエロによる『ガラテアの勝利』は、海の精霊であるガラテアがモデルです。イタリアの哲学者・ダンテの『神曲・地獄篇』や、ロマン派の叙事詩やリブレッティなどにもギリシャ神話上の人物やエピソードが登場します。
また小説や劇、映画やアニメをはじめ、モンスターストライク(モンスト)などのゲームで使われたり、ギリシャ神話の神々が名前の由来となったキャラクターの由来になったりと、現在も多くの作品に影響を与えています。
さらに、トルコのペガサス航空のように、名前やロゴにギリシャ神話を取り入れているブランドも有名。ナイキのブランド名は勝利の女神ニケからとられており、ヴェルサーチのロゴには怪物メデューサが描かれています。米Amazon社の由来であるアマゾン川は、もともとギリシャ神話に登場する女戦士たちの部族「アマゾネス」にちなんでつけられたようです。
メデューサが登場する映画作品①:『タイタンの戦い(2010年)』
1981年の同名映画のリメイク作品。ギリシャ神話をベースに、英雄ペルセウスと怪物(タイタン)たちとの戦いを描いたアクション超大作です。
全能の神・ゼウスを父に持つ半神半人のペルセウスは、優しい漁師のもとで人間として育てられます。しかし、その生い立ちゆえに、傲慢な人々と暴虐な神々の戦いに巻き込まれるように…。そして、怪物クラーケンに生贄として捧げられてしまうアンドロメダと都を救うため、メデューサの首を手に入れる旅へと出発します。
ペルセウス役はサム・ワーシントン、ゼウス役はリーアム・ニーソンが演じています。
メデューサが登場する映画作品②:『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々(2010年)』
同名のベストセラー小説を『ハリー・ポッター』で有名なクリス・コロンバス監督が映画化した作品です。
平凡な日々を送っていたパーシーは、ある日突然ゼウスの稲妻を盗んだという疑いをかけられたことから、自分がポセイドンを父に持つ半神だと知ります。そして、ハデスにさらわれた母親を助けるため、また稲妻を探し出して神々の戦争を防ぐために仲間とともに冒険の旅へ。メデューサやヒドラなどの強敵と戦います。
2013年には続編『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々:魔の海』も公開されました。
必見!ギリシャ神話の影が残るトルコの世界遺産
そもそもギリシャ神話は、トルコを含めた周辺地域の土着の神々に関する伝承がもとになった物語。トルコにもメデューサをはじめギリシャ神話にまつわるさまざまな遺跡が残っています。以下では、トルコを訪れたら絶対にチェックしたい2つの世界遺産を紹介します。
メデューサの首が眠る『地下宮殿』
イスタンブールにある『地下宮殿』は、巨大な地下貯水池です。水面から大理石の柱がそびえたつさまが宮殿のように見えることから、“地下宮殿”と呼ばれています。
ビザンチン帝国時代に造られたもので、ヴァレンス水道橋を経由して、コンスタンティノープル(現・イスタンブール)に配水していました。この貯水池では、約10万トンもの水を貯めることができます。
地下宮殿の一番の見どころが、メデューサの頭が土台になっている2本の柱です。魔除けとして設置されたといわれているものの、1つは横向きにもう1つは上下逆に置かれており、その詳しい理由はわかっていません。メデューサの首は、地下宮殿のチケットにも印刷されています。
開館時間 | 9:00~17:30 |
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入場料 | 190TL |
住所 | Alemdar, Yerebatan Cd. 1/3, 34110 Fatih/İstanbul, トルコ |
ウェブサイト | https://www.yerebatan.com/en |
イスタンブールの地下宮殿は必見!メデューサに守られた場所の正体とは?
神話は実話だった?!伝説に登場する都市『トロイ』
物語の大半が詩人たちによって語り継がれてきたギリシャ神話。現実にはあり得ないようなエピソードや登場人物も満載ですが、単なる作り話ではありません。実は、非常に歴史上の事実に近い物語が存在します。
その証拠の1つとして注目されているのが、トルコ北西部、ダーダネルス海峡の南に位置する『トロイ遺跡』。イリオス遺跡とも呼ばれ、1998年にユネスコ世界文化遺産に登録されました。
古代ギリシャの詩人ホメロスが叙事詩『イーリアス』などでトロイア戦争について語っていたものの、長い間トロイは架空の都市であるとみなされていました。ところが、トロイの存在を信じたドイツ人の考古学者が、1870年代にトロイ遺跡の発掘に成功。その後、神話で語られているような大火災や戦争の痕跡も発見されましたが、トロイ遺跡が本当に神話に登場する都市なのかはまだ証明されていません。
とはいえ、このようにギリシャ神話には歴史に非常に近い物語も含まれており、神話と史実の関連性は現在でも調査されています。
なおトロイ遺跡では9つの層で構成されている都市の遺跡に加え、神話で有名なトロイの木馬のレプリカやトロイ博物館なども見学できます。
トロイ遺跡は歴史ロマンあふれるトルコの世界遺産!観光のポイントは?
開館時間 | 8:30~20:00 |
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入場料 | 75TL |
住所 | 17100 Kalafat/Çanakkale Merkez/Çanakkale, Turkey |
ウェブサイト | https://muze.gov.tr/muze-detay?SectionId=TRV01&DistId=TRV |
ギリシャ神話も残る!トルコで歴史と芸術を楽しもう
長く複雑な歴史を持つトルコには、ローマやオスマン帝国時代のものからギリシャ神話にまつわるものまで、数々の歴史的建造物が残っています。ぜひトルコを訪れて、歴史や芸術を楽しむのはいかがでしょうか。
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更新日:2023.09.11
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