トルコが誇る世界遺産

巨大な石像がならぶ世界遺産・ネムルート山とは?コンマゲネ王国の墳墓の謎

更新日:2023.04.05

投稿日:2022.06.03

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ネムルト山 トルコ 世界遺産

ネムルート山(ネムルット・ダー/Nemrut Dağ)は、トルコ東部にある有名な山です。1987年には世界文化遺産にも登録されました。

名前を聞いてすぐにイメージできなくても、周囲の山々を見下ろす高さの山頂に、大きな石像の頭部が地面に立っている不思議な光景は、テレビや写真で見たことがある人も多いのではないでしょうか

紀元前からこの地にある遺跡には、ギリシャ神話の神々であるゼウスやアポロ、ヘラクレスなどの巨大な頭部だけの石像群が鎮座しています。このような、訪れる人を圧倒させるネムルート山頂の光景は、“世界8番目の不思議”ともいわれています

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ネムルート山(ネムルト山)とは?

ネムルト山 トルコ 世界遺産

世界遺産のネムルート山は、トルコ東部の標高2150mに位置する山で、頂上になんとも不思議な遺跡があります。直径約15m、高さ約49mの山頂は人工的に造られたピラミッドのようになっており、その側面に頭部のない石の座像が並んでいます。頭部だけで約2mはある巨像だったようです。座像の下には、ゼウスやアポロ、ヘラクレスなど、おそらく座像に乗っていたと考えられる石像の頭部が並んでいます。

ペルシャ風の帽子をかぶったギリシャ神話の神々の頭部からうかがうに、これらの石像はアレキサンダー大王の東方遠征により生まれたヘレニズム文化の結晶といえます。

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山頂から見える朝日が素晴らしいことでも有名ですが、近くから見て太陽が昇る瞬間にネムルート山がオレンジ色に染まっていく光景はとても感動的です。

付近には歴史深い観光スポットが多く、ローマ帝国時代に作られたとされる石橋「ジェンデレ橋」や、神であるヘラクレスと人間であるミトリダテス王が握手をしているレリーフがある王宮跡の「アルサメイア」などがあります。

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山頂の墳墓遺跡|盗掘されない理由とは?

ネムルト山 世界遺産 ピラミッド

ネムルート山は、紀元前のメソポタミア地方で最も高い山でした。コンマゲネ王国の王アンティオコス1世がこの地を支配していた当時、自分の名前を残したいと考え、山頂に自身の記念墓となる古墳を建立しました。果たして造られたヒエロテシオン(神聖な魂の最後の休息地)は、古墳とその周囲に設置された3つのテラスからなる霊場でした。

山頂に造られたピラミッドは小石を積み上げる独特の構造になっており、少しでも発掘しようとすると崩落してしまう可能性が高いため、これまで盗掘の被害がなかったといわれています。

言い伝えによると、そのヒエロテシオンにはアンティオコス1世自身の座像を含む8~10mの巨大像が並ぶ巨大墳墓があるとされていますが、現在も明確な埋葬施設は発見されていません。また、この場所が宗教上の儀式を執り行うための場所であったとする説と、王自身が建立した墓とする説がありますが、実際のところはわかっていません。

ネムルート山の巨大彫像の謎

ネムルト山 トルコ 世界遺産

ネムルート山の頂上部には、神ないし王を模したと思われる座像の他、2頭のライオン、2羽の鷲、ギリシャ神話の神々の頭部の像などが並んでいます。大地の王者であるライオンと、天空の王者で神々の伝達使とみなされていた鷲は、神々の守護役とされたようで、他の像と同等の大きさに造られています。

守護役であるライオンと鷲の間には、5体の像が並んでいます。この遺跡の執行主であるアンティオコス1世、女神コンマゲネ、全能の神ゼウス、アポロン、ヘラクレスです。

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この5体は1つの長い基壇に載せられており、像の高さは平均8~10mです。王や神々の像は座して並んでいて、それぞれの像に名前が刻まれていますが、いずれの座像も首から上がありません。頭部は、像の足元に散在し、一部は鼻が破壊されています。

なぜ頭部が座像にないのかには、地震のために頭部が転げ落ちたとする説と、イスラム教徒による偶像破壊運動の一環とする説があります。

ネムルート山において、神像はいたるところに見られますが、多くは東側と西側に集中しています。西側のテラスには、木星、水星、火星などの星の配列を眺める獅子のレリーフが刻まれた石板があり、紀元前62年6月7日を示しています。この日付は、建造が始まった日を現している可能性があるといわれています。

ネムルト山 トルコ 世界遺産

ネムルート山の発見

19世紀後半のこと。ネムルート山の遺跡は、オスマン帝国軍が山頂付近を偶然行軍した際に奇跡的に発見されました。その後、1881年にドイツ出身技師のカール・ゼシュターによって本格的な発掘調査が行われました。

謎多きコンマゲネ王国とアンティオコス1世

ネムルート山

アンティオコス1世が支配し、ネムルート山に繁栄の跡を残した「コンマゲネ王国」とは、現在のトルコ共和国の南東部とシリアとの国境沿いに存在した、古代アルメニアのことです

紀元前162年~紀元69年までの231年間という、長きに渡り繁栄したコンマゲネ王国は、もともとセレウコス朝シリア、ローマ帝国、パルティア王国などの巨大王国をはじめ、様々な小国が林立する小アジアのとても不安定な土地に属国として存在していました。

しかし、セレウコス朝が衰退したのをきっかけに、この地域はコンマゲネ王国として独立を果たしました。そして、紀元前69年に王位に就いたアンティオコス1世の時代に、コンマゲネ王国は最盛期を迎えることになります。

そんな、彼の時代に建てられた最も有名な建築物がネムルート山の頂上にある墳墓遺跡なのです。

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ネムルート山への行き方|ツアー利用がおすすめ!

ネムルト山 トルコ 世界遺産

日本からネムルート山への行き方としてスタンダートなのは、イスタンブールで飛行機を乗り換えてアドゥヤマン空港またはマラティヤ空港へ向かうルートです。

そこから陸路になりますが、土地勘がなく旅慣れない個人で行くことはかなり困難な場所ですので、日本からのパック旅行ないし現地のツアー参加を強くおすすめします。

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ネムルート山観光のベストシーズン

トルコ観光でネムルート山近辺まで足を運ぶならば、山頂の彫像をぜひ見たいものですよね。ですが、山頂まで行けるのは5~10月頃の間となります。開山と閉山の時期はその年の天候によって異なりますので、あらかじめ情報を確認して予定を立てた方がよいでしょう。

また、標高2000mを越えた内陸部にあるため、日中と日没後の温度差が大きい点に注意が必要です。日の出や日没を見に行く場合、夏でもしっかりと防寒対策を取る必要があります。

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ネムルート山観光の拠点となる町

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ネムルート山頂への公共交通機関はないので、アドゥヤマンやマラティヤ、キャフタといった周辺の町からツアーで行きます。

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アドゥヤマン

アドゥヤマンはトルコ南東部のアドゥヤマン県にある都市です。紀元前1世紀頃は、コンマゲネ王国の支配下の1つとして栄えた歴史のある町ですが、町の近くの洞窟にはさらに昔の4万年前に人が住んでいた形跡も確認されています。また、ユーフラテス川上流で最も早く文明が発達した場所だといわれています。

マラティヤ

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マラティヤはトルコ中央東部の山岳地帯に囲まれた、標高約950mの平原に広がるアナトリア高原の古都です。農業が盛んであり、トルコ名物の「ドライアプリコット」などは、マラティヤ産のものが多くなっています。

郊外には、農業が始められたチグリス・ユーフラテス文明の時代から人が暮らしてきた軌跡を現在も感じることができます

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古代には要塞都市として開発されたこの地は、当時の面影が残る街並みが観光スポットとしても人気です。大きなショッピングセンターなどもあるちょっとした都会で、県庁のそばにある大きな広場周辺が町の中心です。

ネムルート山周辺の主要観光スポット

ネムルート山観光の拠点となる町の1つアドゥヤマン周辺には、ネムルート山以外にも観光スポットが多くあります。ここでは代表的なスポットをご紹介いたします。

アルサメイア(エスキ・カレ)

アルサメイア ネムルト山 エスキ・カレ

アルサメイア(エスキ・カレ)は、ネムルート山と併せてぜひ観光していただきたい遺跡です。アルサメイアはネムルート山の麓に位置し、エスキ・カレ(古い城)とも呼ばれるコンマゲネ王国の夏の離宮跡です。

紀元前2世紀初めに建造されたものといわれ、遺跡はもちろんのこと、王宮跡へ続く山道も楽しめます。眼下に広がる美しい景色を眺めながら、頂上を目指します。

残念ながら宮殿は原型をとどめておらず、柱や土台などが残るのみですが、周辺には石碑や彫像など沢山の遺跡があります。特にヘラクレスと王が握手しているシーンのレリーフが印象的で人気です。全長158mもの洞窟などもあり、見どころが沢山あります。

ジェンデレ橋

ジェンデレ橋 ジェンデレ 古代ローマ

ネムルート山周辺には、古代ローマ時代に造られた建造物がいくつかあります。特にご紹介したいのは、当時のコンマゲネ王国の栄華を伝える「ジェンデレ橋」です。古代のカピナス川、今日のジェンデレ川の一番狭まった位置に架けられた橋です。

比較的状態がよく残されており、ローマ人により建設された最長のアーチ橋としても有名です。さまざまな別名があり、「セヴレン橋」「ローマ橋」「セプティミウスセウェルス橋」とも呼ばれています。

ジェンデレ橋のある場所には、ラテン語の碑文が記された4つの石碑のうち、2つが現存しています。それによるとこの橋は、198年~200年にサモサタに駐屯していたローマ第十六軍団が建設したとのこと。西の端に残る円柱に刻まれた銘によると、ローマ皇帝セプティミウス・セヴェルスと、その妻ジュリア・ドムナに捧げたものだそうです

1本だけ残っている対岸の円柱は、マルクス・アウレリウス・セウェルス・アントニヌス、後の皇帝カラカラ(Caracalla)に捧げたもので、消えたもう1本の円柱は弟のゲタに捧げられたものだったようです。

しかしその後、カラカラ帝は弟・ゲタを殺してしまいます。そして、帝国内のモニュメントからゲタの名をすべて消し去るように命じたとか。しかも、円柱の名前を消すのではなく、円柱そのものを取り去ったそうです。

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カラクシュ古墳

ネムルト山 トルコ 世界遺産

「カラクシュ」は、アドゥヤマンから北東へ30㎞程に位置するコンマゲネ王国の墳墓、古墳です。墳墓を取り囲むように並ぶ、石積みの巨大な円柱が広い空を背にすっと伸びる姿は何とも神秘的です。

特に人気があるのが円柱の上部に鷲の彫像が付いているものです。この場所が「黒い鳥」という意味のカラクシュと呼ばれるようになった由来も、鷲の円柱にあるそうです。周りに遮るものは一切なく、墳墓と円柱だけという、歴史と壮大な自然を一度に感じられる場所でもあり、ゆっくり遺跡を堪能できます。

標高が少し高い場所にあるので、周辺の町を見下ろすことができます。更にネムルート山も眺められるという、絶好のロケーションでもあります。

アドゥヤマン考古学博物館

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アドゥヤマン考古学博物館は町の中心部にあり、気軽に訪れることができる観光スポットの1つです。長年ユーフラテス川沿いで行われていた保存発掘調査によって発見された、さまざまな出土品が展示されています。石器時代から今日に至るまでの出土品が約22,000点あり、お皿や壺などの生活用品からアクセサリーなどの小物類までさまざまです。

町のシンボルであるネムルート山の山頂の模型や、遺跡にある巨大な石像のミニチュアなど、ユニークな展示物もあって、飽きません。屋外には木々や花々、芝生に囲まれた緑の眩しい庭が広がっています。なお、芝生の上には、ネムルート山の遺跡のレプリカがあります。

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アドゥヤマンの名物料理

チーキョフテ トルコ料理 イスタンブールグルメ ブルグル

アドゥヤマンには、「チーキョフテ」という名物料理があります。キョフテはトルコ風のミニハンバーグで、チーは生を意味するので、そのままずばり「生のキョフテ」という名前です

作り方は、生の挽き肉とブルグルという挽き割り小麦に、みじん切りにした玉ねぎとニンニク、すりおろしたトマト、サルチャというトルコのトマトペーストやコリアンダー、クミン等多種のスパイスを加えます。粘りけがでるまで練り、一口大の量を手に取って手の平で握って形づけます。

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このキョフテはスパイシーな味わいが特徴です。しかし、現在トルコでは、家庭での調理以外は生肉の使用が禁止されているため、飲食店等では生肉を使用していないキョフテが販売されています。

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