パシャとはどんな称号？オスマン帝国やトルコ共和国の繁栄に貢献した人物たち
更新日：2023.04.05
投稿日：2022.10.03
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パシャとは、トルコやエジプト、イラクで使用された称号のこと。オスマン帝国ではヴェズィール（宰相）や、ベイレルベイ（州総督）などの高級官僚に与えられた称号でもありました。
パシャの称号を持つ人物は、オスマン帝国の礎となり、国の繁栄に尽力し、領土拡大のための実働部隊となるなど、スルタンの傍らで大きな力を振るってきました。また、近代ではトルコ共和国の建国に大きな指導力を発揮した中心的人物も、パシャの称号を持つ人物でした。
パシャという称号の意味や、時代を彩った高名なパシャについてくわしくご紹介していきます。
Contents
パシャとはどんな人？
ここでは、パシャとはどんな人物を指す称号なのか簡単に解説していきます。
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称号としてのパシャ
パシャとはトルコやエジプト、イラクで使用された称号のこと。13世紀のセルジューク朝で使われはじめました。パシャという言葉はペルシア語の「パードーシャ」から派生したともいわれています。
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オスマン帝国におけるパシャ
オスマン帝国では、一部の軍人や高官に与えられた称号がパシャでした。15世紀頃からは、ヴェズィール（宰相）や、ベイレルベイ（州総督）といった高級官僚に与えられるようになっていきます。その後、州知事や官吏の特権的な称号へと変質していきます。
パシャの称号は、トルコ共和国成立後の1934年に全面的に廃止されています。
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オスマン帝国最盛期に名をはせたパシャ
ここでは、オスマン帝国の最盛期に歴史的にも名をはせた有名なパシャについてご紹介します。
スレイマン1世時代の大宰相でスルタンの娘婿「リュステム・パシャ」
スルタン・スレイマン1世の時代、1544～1553年、1555～1561年の2度大宰相の地位に就いたのが、リュステム・パシャです。
リュステム・パシャは、スレイマン1世の娘であるミフリマーフ・スルタンと結婚したスルタンの娘婿でもありました。特に経済面で才能を発揮した大宰相で、任期期間に莫大な財を築き、かなりの富をモスク建設や慈善財団への寄付に費やした人物でもあります。
外交面では、ヨーロッパ諸国やインドと貿易協定を結び、帝国の経済繁栄に貢献しました。また、フェルナンド1世やカール5世と協定を締結したことで、その後14年間以上ものあいだ、オスマン帝国とヨーロッパ諸国の間で戦いがなくなり、平和な時期をもたらしました。さらに、長年覇権を争っていたサファヴィー朝との戦後交渉をまとめた人物としても知られています。
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人気ドラマ『オスマン帝国外伝』でも知られる大宰相「イブラヒム・パシャ」
オスマン帝国の最盛期のスルタンのひとり、壮麗王スレイマン1世に使えた大宰相がイブラヒム・パシャです。日本でも話題になったトルコのテレビドラマ『オスマン帝国外伝』の主要キャスト、イブラヒムとしても認知度が高い人物です。スレイマン1世の妹と結婚していたともされていましたが、現在では否定説もあるようです。
イブラヒム・パシャはヴェネチア共和国の出身で正教徒の家庭に生まれましたが、幼い頃に誘拐され、海賊に奴隷として売られオスマン帝国にやってきました。奴隷の身分からスレイマン1世の小姓に出世し、1523年には大宰相に任命されます。
イブラヒム・パシャの功績は数多くあります。1525年にはエジプトに駐留し、市民制度や軍政制度を改革、法令集を発布しました。また外交面では、西キリスト諸国に対し豪腕を振るったことでも有名です。
1533年にカール5世と和睦交渉しハンガリーをオスマン帝国領とし、1535年にはフランソワ1世と合意。ハプスブルク家に対する共同戦線を張る代わりに、オスマン帝国内における通商特権をフランスに与えました。これにより南フランスのトゥーロンにフランス・オスマン同盟艦隊が寄港するようになります。
イブラヒム・パシャは、オスマン帝国の歴史上でも特に大きな権限と権力、影響力を持った大宰相でしたが、1536年にスレイマン1世により処刑されています。
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チュニジアの征服者と呼ばれた大宰相「スィナン・パシャ」
スィナン・パシャは、スルタン・ムラト3世と、スルタン・メフメト3世の時代の大宰相で、軍事、政治、財政面において才能があり、当時のオスマン帝国を牽引した人物です。
スィナン・パシャは、エジプト総督についた経験もあり、イエメンやチュニジアで軍事指揮を執りキプロスを征服したことでも知られています。1572年にスペイン海軍がチュニジアに侵攻すると、チュニジアを再征服。この功績によって「チュニジアの征服者」の肩書きを与えられています。さらに、イランのアッパス王と和平会談を行い近隣国との争いを避けることにも尽力しました。国内では造幣所を新設するなどして、硬貨の質の向上にもつとめました。
学校やモスク、イマレットなどを自身の寄付によりアラブ諸国やバルカン諸国に建設したことでも知られていて、その偉大な功績から「コジャ（偉大な）」という称号も与えられ、現代でも多くの人から尊敬されているパシャでもあります。
オスマン帝国からトルコ共和国への転換期に尽力したパシャ
ここでは、オスマン帝国からトルコ共和国へ転換した激動の時代を牽引したパシャについてご紹介していきます。
トルコ共和国を樹立した、ムスタファ・ケマル・パシャ
ムスタファ・ケマル・パシャことムスタファ・ケマル・アタテュルクは、トルコ共和国の初代大統領です。オスマン帝国時代は将軍の地位にありました。
第1次世界大戦で敗れたオスマン帝国で、トルコ独立戦争、トルコ革命を指導しトルコ共和国を樹立した人物で、憲法からイスラム教を国教とする条文を削除。政教分離を実施しました。トルコの近代化を推進したとして、トルコ大国民議会から「父なるトルコ人」の意味を持つ「アタテュルク」という称号を贈られています。
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タンジマート時代の改革派で憲法の父、ミドハト・パシャ
ミドハト・パシャは、オスマン帝国の危機の中で始まった近代化政策、タンジマートを推進した改革派の官僚です。1872年に大宰相に任命されましたが、3ヶ月で辞任。1876年にアブデュルハミト2世を新たなスルタンに擁立して再び大宰相に就任します。さらに、その年の12月23日にミドハト憲法とも呼ばれる憲法を発布。現在もトルコの人々から「憲法の父」と呼ばれています。
しかしながら、専制政治の復活をめざしたアブデュルハミト2世により憲法発布の翌年に追放されてしまいます。その後オスマン帝国はスルタン専制政治に戻りますが、青年トルコの革命により崩壊をむかえます。
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オスマン帝国を第一次世界大戦に参戦させた、エンヴィル・パシャ
エンヴィル・パシャは、1908年の青年トルコ革命の指導者です。1913年以降オスマン帝国の陸軍大臣として活動し、1914年には青年トルコ政権を樹立。第1次世界大戦でオスマン帝国をドイツ側に参戦させました。
1918年まで大宰相メフメト・タラート・パシャと、海軍大臣アフメト・ジェマル・パシャとともに三頭政治を行いましたが、敗戦後は国外に追放され、壮絶な最後をむかえています。
オスマン帝国の栄華を伝えるパシャゆかりの観光スポットを訪れよう
ここでは、オスマン帝国の繁栄に尽力した高名なパシャたちのゆかりの地をご紹介します。トルコを旅する際には、ぜひ訪れてみてください。
リュステム・パシャ・モスク／リュステム・パシャ
リュステム・パシャ・モスクは、イスタンブール歴史地区のエジプシャンバザールの近くにあるモスクで、リュステム・パシャによって建立されました。このモスク、商店街の2階という珍しい場所にあるのですが、これは市場の人たちが仕事の合間にすぐにお祈りに行けるようにするためと、1階の賃料をモスクの維持費として使用するためだったそうです。
オスマン帝国を代表する建築家、ミマール・スィナンが手がけたモスクで、建物の内部がイズニックタイルで美しく装飾されています。エジプシャンバザールでのショッピングとあわせて訪れてみてはいかがでしょうか。
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トルコ・イスラム美術博物館／イブラヒム・パシャ
トルコ・イスラム美術館は1913年に設立された施設で、貴重な歴史的資料の数々が保管されています。1983年に現在の建物に移転して再オープンを果たしますが、この建物こそがイブラヒム・パシャの邸宅だった建物なのです。
イブラヒム・パシャ宮殿は15世紀に建設された建物で、現存する最古の個人宮殿でもあります。当時のオスマン建築を伝える貴重な建物としても見る価値あり！2014年には開館100周年をむかえ、リニューアルオープンしています。トルコとイスラムの伝統を引き継ぐ美術品が多数所蔵されていますので、興味のある方はぜひ足を運んでみてくださいね。
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イスタンブールのメドレセ／スィナン・パシャ
Mickey Mystique, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
メドレセとはイスラム教の神学校のことです。世界遺産にも登録されている、イスタンブールの歴史地区の旧市街地の目抜き通りにあるメドレセには、スィナン・パシャの霊廟があります。
美しく優美な建物のメドセレでは、イスラム文化を学ぶための講義やクルアーンの翻訳、アラビア文字の書道であるカリグラフィーなどのワークショップも開催されています。
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オスマン帝国の歴史ロマンを体感できるトルコを旅しよう
今回はパシャについて解説してきました。パシャとは、トルコやエジプト、イラクで使用された称号のこと。オスマン帝国ではヴェズィール（宰相）や、ベイレルベイ（州総督）の官職を持つ高級官僚に与えられた称号です。オスマン帝国の栄華の影には、たくさんの有能なパシャの尽力があり、今に伝えられています。
トルコの街には、そんな偉大なパシャたちゆかりの遺跡も残っています。オスマン帝国の激動の歴史やパシャの活躍に思いをはせながら、トルコを旅してみてはいかがでしょうか。
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