実はトルコ発祥!?パストラミビーフの簡単レシピ、知られざる歴史をご紹介!
更新日:2023.04.04
投稿日:2022.04.11
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お肉を燻製した「パストラミ」は、サンドイッチの具材やお酒のおつまみとして人気が高い食品です。ニューヨーク名物といわれるパストラミサンドの印象が強いため、アメリカ発祥の食べ物だと考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、実はパストラミの原型が生まれたのは紀元前のこと。トルコのアジア部分であるアナトリアにルーツがあるのです。ここでは、美味しいアレンジレシピをはじめ、パストラミの意外な歴史を徹底解説します。
Contents
ヘルシーで高たんぱく!「パストラミ」とは?
パストラミは乾燥させた赤身肉を燻製し、香辛料をまぶした食肉加工品です。冷蔵技術が乏しかった時代、肉を食塩に漬け水分を抜くことで保存食とした昔の人の知恵から生まれました。
使用する香辛料は、主に粗挽き胡椒・にんにく・コリアンダー・パプリカ・オールスパイスなど。旨味が凝縮されたパストラミは、そのまま食べても美味しいのはもちろん、サンドイッチやベーグルサンドの具材に最適です。カフェやデリカテッセンのメニューに採用されることで、日本でも広く知られるようになりました。
タンパク質・カルシウム・マグネシウム・ビタミン類など栄養が豊富なのも魅力の一つ。ヘルシーで高タンパクなので、筋トレやダイエットに励む人にも支持されています。
牛肉だけじゃない!鴨・ポークで作る場合も
近年は、豚肉や鶏肉、鴨肉などを使用したものもパストラミと称されます。牛肉を材料にしたものは、「パストラミビーフ」または「ビーフパストラミ」と呼ばれます。
牛肉の部位としては、アメリカでは「brisket(ブリスケット)」や「plate(プレート)」、日本における「かたばら」や「ともばら」を使用します。
自宅で作る!パストラミビーフの簡単レシピ
胡椒のたっぷり効いたパストラミビーフは、サンドイッチやおつまみ、パーティーメニューなど、あらゆるシーンで活躍しますよね。ここでは、燻製の工程なしで手軽に作れる自家製パストラミのレシピをご紹介します。
《材料》
- 牛モモ肉ブロック…400~500g
- 塩、砂糖…各小さじ1
- 黒胡椒…適量(多め)
- 醤油、酒…各大さじ1
- にんにく…1片
- タイムやローリエなど…お好みで
《作り方》
- 小鍋に醤油と酒を入れ、煮立てたのち冷まします。
- ニンニクを薄くスライスします。牛肉に味が染みこみやすいように、竹串などでまんべんなく肉の表面を刺しておきましょう。
- 肉に砂糖、塩、黒胡椒を順番に手でよくすりこみます。①を回しかけ、肉全体に染みわたるように手で撫でます。
- 肉の上にスライスにんにくやお好みのハーブ、スパイスをのせて、密閉袋に入れ、しっかりと空気を抜いた上で、冷蔵庫で10日間寝かせます。
- ラップを3枚ほど敷いた上に、黒胡椒をたっぷりと挽きます。10日間寝かせた牛肉からにんにくやハーブを取り除き、その上に黒胡椒を挽きます。
- ⑤をラップで包み、両端を縛り密封。さらにアルミホイルで二重に包みましょう。
- 大きな鍋で湯を沸かします。沸騰したら包んだ肉を入れ、15~20分ほど茹でます。
- 肉が茹で上がったら、常温になるまで半日ほど放置します。その後、冷蔵庫で冷やせば自家製パストラミビーフの完成です!
そのまま?炒める?パストラミの食べ方・アレンジレシピ
パストラミは熱すると硬くなるため、基本的には加熱せずに食べるのがおすすめ。お好みの厚さでそのまま食べても美味しいですが、幅広い料理の具材としてアレンジしてみましょう。
やはり、おすすめはサンドイッチ。パンにマスタードまたはからしマヨネーズを塗り、薄く削いだパストラミ&レタスやトマトなどの野菜を挟めば、本格デリフードの完成です。ライ麦パンを使うと、本場ニューヨークの味わいに近づきますよ。
サラダの具材にもピッタリ。いつものサラダにパストラミ、ゆで卵やモッツァレラチーズも合わせると、高タンパクなパワーサラダの出来上がりです。ボリュームも満点で、満足感も得られますよ。
ドレッシングは、オリーブオイルとレモンをベースにした洋風やシーザー系はもちろん、玉ねぎ×ポン酢などの和風でも美味しくいただけます。
ニューヨーク名物「パストラミサンド」が食べられる名店
「アメリカの名物料理」というイメージが強いパストラミ。実際にアメリカで大人気のパストラミ・サンドイッチは、薄くスライスしたパストラミを贅沢に挟んだボリューミーなメニューです。
アメリカでパストラミ人気が高まったきっかけは、「Katz’s Delicatessen(カッツデリカテッセン)」という飲食店です。
1888年に創業したニューヨーク最古のデリカテッセンで、パストラミをはじめとするユダヤ料理がお店の売りとなっています。映画「恋人たちの予感」で登場したことでも有名です。
世界中に分布するユダヤ料理は、各地の影響を受けて進化しています。アメリカでは、19世紀後半にベッサラビアとルーマニアから渡った東欧ユダヤ系移民が広めました。
ユダヤ人とは?ホロコーストなど迫害の歴史からオスマン帝国との意外な関係までを解説
東京ではどんなパストラミサンドが食べられるのでしょうか?人気店をご紹介します。
ザ・グッドバイブス
芝浦に店を構える、自家製パストラミサンド専門店「THE GOOD VIBES(ザ グッド バイブス)」。2021年にはフードトラック「THE GOOD VIBES VEHICLE」もオープンしました。
自慢のパストラミは、牛バラ肉を4日間じっくりと塩漬けし、スモークにも6日を費やしています。こだわりのスパイスによる味付けと、しっとりとした食感が人気の看板メニューです。パストラミは薄切りが一般的ですが、こちらでは厚さ2㎝ほどの極厚仕様を楽しめます!
店名 | THE GOOD VIBES(ザ・グッドバイブス) |
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店舗所在地 | 芝浦店:東京都港区海岸3-13-12 コンフォリア芝浦バウハウス1F 麹町店(フードトラック):東京都千代田区麹町2-4-1 麹町大通りビル前 |
Webサイト | http://salt-group.jp/shop/goodvibes/ |
キノーズマンハッタンニューヨーク
ニューヨークで食べられるような本格的サンドイッチが話題のお店。オーナーはアメリカ在住経験があり、パストラミやパンなど本場の強みを研究し尽くしています。
店名 | THE GOOD VIBES(ザ・グッドバイブス) |
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店舗所在地 | Qino’s Manhattan New York(キノーズマンハッタンニューヨーク) |
Webサイト | https://qinos.jp/ |
看板メニューは、口におさまりきらないほどボリューミーなパストラミサンド。ビーフ・ポーク・チキンをベースに、お好みの具材をトッピングできるのも楽しいポイントです。店内でのお食事はもちろん、デリバリーやテイクアウト対応していますよ。
コンビーフ・ローストビーフ・ベーコンとの違いは?
世界にはさまざまな加工肉食品がありますが、特に混同されがちなものについて各特徴を解説します。
コンビーフ
コンビーフ(Corned Beef)の材料は、牛のブリスケット(かたばら)が主流です。「Corned」は英語で塩漬けを指し、コンビーフを直訳すると「塩漬けした牛肉」となります。
同じく肉を塩漬けするパストラミは、乾燥後に燻製するのが特徴。ちなみに、日本でメジャーな缶詰入りコンビーフとは異なり、他国ではほぐす前のフレッシュコンビーフが一般的です。
ローストビーフ
イギリスの伝統料理であるローストビーフ。パストラミとの大きな違いは、保存食か否か。ローストビーフには塩漬けする工程がなく、肉の赤みが残るように加熱します。長期保存はできない一方で、温めても美味しく1時間程度で作れるといったメリットがあります。
ベーコン
ベーコンは整形した豚の背やバラ肉を塩漬けしたあと、じっくりと燻製します。基本的に豚肉を使用し、香辛料を多用しない点がパストラミと異なります。
はじまりはトルコから?パストラミの歴史
アメリカで多く食べられているイメージのパストラミ。そのルーツがトルコであるとされる理由や、東欧移民によってアメリカで広まった経緯を解説します。
トルコの戦飯が始まりだった?
パストラミの原型はトルコの肉料理「Pastırma(パストゥルマ)」だと考えられています。
パストゥルマは、トルコ語で「押した肉」という意味。紀元前よりトルコでは干し肉が食べられており、中央アジアを駆け回っていた騎馬民族・オグズ(Oguz)は、干し肉を馬の鞍(くら)に吊るし、戦に持参していたと伝えられています。
長期間にわたる戦争や土地の移動、干ばつの時期にも腐らないことから、干し肉は古代からトルコ人の主食とされてきました。
ルーマニアからニューヨークへ
パストラミの製法をアメリカ大陸に伝えたのは、ルーマニアなど東欧のジプシーたちです。東ヨーロッパの文化はトルコと非常に密接であり、トルコから東欧のルーマニアに伝わり、さらに移民によって19世紀にアメリカへ。
もともとルーマニアのパストラミは、ガチョウの肉を用いるのが一般的でしたが、移民らは定住先のアメリカ・ニューヨークでガチョウよりも安価な牛肉を使用しました。
また、アメリカは冷蔵技術が発達していたため、伝統的なレシピよりも塩分が少なくなり、より柔らかい仕上がりに。こうして現在版パストラミへと変化を遂げ、世界中で多くの人に親しまれるようになりました。
Pastırma(パストゥルマ)が「pastrami(パストラミ)」という単語に変化した経緯は明確になっていませんが、19世紀当時すでにアメリカで流通していたイタリアの「salami(サラミ)」に語感を寄せたのではないかと考えられています。
パストラミの原型!トルコのPastirma(パストゥルマ)とは?
トルコのパストゥルマは、牛肉の塊を塩漬けして水分を抜いて作ります。トルコのスパイシーな調味料チェメン、にんにく、塩、パプリカなどをミックスしたペーストを牛肉に塗り、寝かせてから天日干しします。
パストゥルマの生産地は、トルコ中央部・カイセリ県をはじめトルコ国内にいくつか点在しています。地域によって独自の味付けがされていることも。パンに挟んで焼いたり、煮込み料理に入れてコクを出したり、トルコ料理には欠かせない食材なのです。
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トルコで食べるなら「カイセリ」へ!
カイセリ(Kayseri)はトルコ中央部に位置し、カッパドキア観光における空の玄関口・カイセリ空港のある町。カイセリではパストゥルマが名物とされ、パストゥルマが入ったピザやパイを味わえるほか、ソーセージやチーズなどのお店でもパストゥルマが売られています。
カイセリにパストゥルマ製造所があった事実は紀元前17世紀の旅行記にすでに記載されており、古くからカイセリ名物であったことがわかります。カイセリのほか、アフヨンやアンカラのエルケチのパストゥルマも有名です。
ちなみに、トルコではパストゥルマの製造に適した気候となる秋の晴天時を「パストゥルマ・ヤズ(パストゥルマの夏)」と呼びます。昼夜の温度も近いためパストゥルマが理想的に乾燥するため、製造も盛んに行われます。
パストゥルマと合うトルコ料理・お酒をご紹介
そのまま食べても美味しいパストゥルマですが、さまざまなトルコ料理にも使用されています。塩気やスパイスの風味が強いので、お酒のおつまみにもピッタリ。以下では、パストゥルマに合う料理・お酒をご紹介します。
目玉焼き
パストゥルマはベーコンやハム同様、卵との相性が抜群!トルコでは目玉焼きと一緒に焼いて、朝食などでよく食べられています。
パストゥルマはカリカリに焼かず、バターでサッと火を通すとお肉のジューシーさが感じられますよ。
パチャンガ・ボレイ
トルコ風の春巻き、paçanga böreği(パチャンガ・ボレイ)。パストゥルマのほか、カシャルチーズ (羊の乳で作るイエローチーズ)、トマトとピーマンで作るトルコ料理です。
皮はユフカと呼ばれる発酵させない薄いパンで、外側はサクサクで中はふわふわとした食感。とろ~っと伸びるカシャルチーズと、パストゥルマの組み合わせはまさに絶品です。ぜひトルコで出来立てのパチャンガ・ボレイを味わってください。
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ピデ
ふっくら&もちもち食感のトルコ風ピザ「ピデ」は、トルコツアーの食事でもおなじみの名物料理です。サイズは直径30㎝ほど。フルンという窯で焼き上げます。パストゥルマはピデのトッピングとしても人気でチーズとの相性もバッチリですよ。
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クルファスリエ
クルファスリエ(Kuru fasuliye)は、トルコの家庭料理を代表する白インゲン豆のトマトソース煮込みです。パルトゥルマを入れて煮込むことで味に深みが出て、より美味しくなります。
ちなみに、普通の鍋ではなく土鍋で煮込むとよりトルコ風かつ美味しく仕上がります。ピラフと共に食べるのがトルコ流です。
トルコの地酒「ラク」
パストゥルマは、トルコの国民的なお酒「ラク」との相性も優れています。ラクは無色透明なものに水を注ぐと、白く濁る不思議なお酒です。
原料はブドウで、アニスというセリ科のハーブの種で香り付けされています。アルコール度数は40度以上と、かなり強い蒸留酒。アニスの独特な香りと、ほんのりとした甘み・コクが特徴で、基本的には食事と共に頂きます。
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フムスとの相性もばっちり
メゼとは、トルコ語で前菜のこと。フムス(ひよこ豆のペースト)にパストゥルマを載せて焼いた料理は、トルコの代表的なメゼに挙げられます。
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トルコの居酒屋「メイハーネ」では、これらのメゼやプロシュートのように薄くスライスしたパストゥルマが定番のおつまみとして地元の人から親しまれています。
上記で紹介した料理も食べられるので、トルコ旅行の際には立ち寄ってみてくださいね。
イスタンブールでパストゥルマが買えるお店2選
パストゥルマはお肉屋さんのほか、加工肉食販売店やスーパーなどで簡単に入手できます。スライスされた状態でパックに入ったものも売られていますが、出来れば美味しいパストゥルマを目の前で切ってもらえる場所で購入するのがおすすめです。
トルコ最大の都市・イスタンブールでは、エジプシャンバザールの外側にパストゥルマ取り扱い店が並んでいます。今回はその中からおすすめの加工肉屋をご紹介するので、時間がある方はぜひ訪ねてみてくださいね。
ジョシクン・エトゥ(Coşkun Et)
赤い牛のマークが目印のお店。この店のパストゥルマはしっとりとしていて比較的塩気が弱く、初めてでも食べやすいと評判です。
スジュック、干肉、タンの燻製、ハムなど色々な商品が取り揃えられているので、少しずつ買って味比べをしてみるのも楽しそうですね。希望すれば真空パックにも対応してくれます。ちなみにこのメーカーはパックされた製品がスーパーなどでも販売されるほど有名です。
名称 | ジョシクン・エトゥ(Coşkun Et) |
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住所 | Tahtakale, Tahmis Sk. No:33, 34116 Fatih/İstanbul, トルコ |
公式サイト | https://www.coskunet.com.tr/ |
ナムル・パストゥルマジュ(Namli Pastirmaci)
イスタンブールのグルメ人御用達のデリカテッセン。パストゥルマをはじめ、ハムやオリーブ、チーズ、ピクルスなど多様な食材が売られています。2階では食事も可能です。
エジプシャンバザール前のガラタ橋を、新市街側カラキョイに渡って右手側に歩いていくと、同系列の「ナムル・グルメ」というレストランもあります。そこでも食材の購入や、ナムル製品を使った軽食を味わえるので要チェック。
地元のトルコ人でにぎわう人気店で、特に朝食やブランチにおすすめです。
名称 | ナムル・パストゥルマジュ(Namli Pastirmaci) |
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住所 | Rüstem Paşa, Hasırcılar Cd. No:14, 34116 Fatih/İstanbul, トルコ |
公式サイト | http://namlipastirma.com.tr/ |
パストラミのルーツがトルコにあることに驚いた方も多いのではないでしょうか?パストゥルマをはじめ、トルコ料理には美味しさや製法、歴史など魅力がたくさんあります。ぜひトルコに行って、本場の味を試してみてくださいね!
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