コーランはイスラム教の聖典!初心者向けに詳しく解説
更新日:2023.04.05
投稿日:2022.05.31
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「コーラン」はイスラム教の聖典であり、アラビア語では「クルアーン」といいます。
すべてのイスラム教徒(ムスリム)が幼い頃から慣れ親しんでいるコーランですが、日本では、あまりなじみがありませんね。
しかしコーランの美しい響きや内容は、非ムスリムにとっても大変興味深いものです。この記事ではコーランとは何なのか、どんなことが書いてあるのかを、初心者向けに解説します。イスラム文化を理解する上で欠かせない、コーランの世界を覗いてみませんか。
コーランとは
コーランとは、アッラー(アラビア語で神の意味)がアラビア語でアラブ人へ伝えた「神の言葉」です。コーランは神の言葉そのものとされ、ムハンマドを通じて人々へ語られました。
イスラム教の聖典
コーランはイスラム教の聖典です。キリスト教でいえば「聖書」、仏教でいえば般若心経や法華経といった「お経」にあたる重要な教えがコーランなのです。イスラム教徒のことをアラビア語では「ムスリム」と呼び、神に帰依する者を意味します。
ムスリムにとってコーランは信仰の基礎であり、命よりも大切な尊いものです。神の言葉が記されたコーランを粗末に扱うことは、神そのものを粗末に扱うことであり、神への冒涜を意味します。ムスリムにとって、コーランはほかの本とはまったく違う意味を持っています。もしコーランを手に取る機会があれば、大切に扱いたいですね。
ムスリムは世界中に暮らしており、その数は20億人を超えるともいわれています。例えばトルコでは国民の99%がムスリムです。しかし実は、厳格にムスリムの教えを守って暮らしている人はそれほど多くありません。日本人には広い意味で仏教を信仰している人も多くいますが、日常生活で仏教の戒律を守っている人が少ないのと似ていますね。
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ムハンマドに下された啓示
コーランは預言者ムハンマドに下された、神からの啓示を書き留めたものです。610年、商人として暮らしていたムハンマドは、メッカ近郊のヒラー山にあった洞窟で瞑想していたときに、天使ガブリエルを通じてアッラーの啓示を受け取りました。このときムハンマドは40歳でした。
その後、ムハンマドは20年にわたってアッラーの啓示を受け、周りの人々に伝え続けました。啓示の時期は大きく3つに区別できます。
- 初期:ムハンマドが故郷メッカで布教を開始した時期
- 中期;メッカ時代の終わりからメディナ時代の初めにかけての期間
- 後期:ムハンマドがメディナへ移り(ヒジュラ)、そこでイスラム国家のもととなる共同体を作った時期
なお預言者とは、「神の言葉を預かった者」という意味です。未来を予知する「予言者」とは異なります。
ハディースは第二の聖典
イスラム教にはコーランに次ぐ第二の聖典「ハディース」があります。ハディースとはイスラム語で「伝承」を意味し、ムハンマドの言葉や行動、生活態度などが記されています。コーランが神の言葉とされるのに対して、ハディースはムハンマドの言行(スンナ)を人間が記録したものです。
ムハンマドは預言者であるとともに、神の教えを人々に知らせる「使徒」でもありました。またコーランには抽象的な記述も多く、読んだだけでは理解できない部分が少なくありません。そのためムスリムはムハンマドの生き方や言行を見習うべき手本とし、日常生活の指針としたのです。
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スンナ(スンニ)派とシーア派
スンナといえば、「スンナ(スンニ)派」という言葉を思い出す人は多いでしょう。同じイスラム教を信仰していても、厳しい戒律を守っている国もあれば、比較的緩やかな国もあります。これはイスラム教に宗派があるからです。キリスト教にはカトリックやプロテスタント、仏教には天台宗や真言宗といった宗派があるのと同じですね。
イスラム教は大きく「スンナ(スンニ)派」と「シーア派」の2つの宗派に分かれます。「ムハンマドの後継者が誰であるか」という点で論が異なったことなどから、分裂しました。
スンナ派とは、元々「スンナ」がムハンマドの言行を指していることから、「ムハンマドの言行(スンナ)に従う人々」を意味し、イスラム教徒のうち圧倒的多数を占めています。スンナ派は、ムハンマドの後継者として4人のカリフ(初代アブー・バクル、2代ウマル、3代ウスマーン、4代アリー)を正統派と認めました。
一方シーア派とは、ムハンマドのいとこであり娘婿であった第4代カリフのアリーとその子孫だけを正統なムハンマドの後継者と主張する少数派です。シーアの元々の意味は「党派」で、シーア派は「アリーの党派」ということになります。
スンナ派とシーア派はどちらも唯一神アッラーを信仰し、ムハンマドを預言者としています。どちらもコーランの教えに沿っており、基本的な教義はほとんど同じです。ただし考え方が違う部分も少なくありません。例えばスンナ派は偶像崇拝を厳格に禁止していますが、シーア派では指導者の肖像画や選挙ポスターなどをよく見かけます。
またイスラム教の宗派はスンナ派とシーア派だけではなく、ほかに「ワッハーブ派」「アラウィー派」などがあります。
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コーラン成立は650年頃
コーランが本としてまとめられたのは、ムハンマドの死後20年ほど経った650年頃のことです。ムハンマドは読み書きができなかったため、神からの啓示を受け取ったときは、弟子たちが記憶したり書き留めたりしていました。しかし当時のイスラム共同体には共通の文字がなかったため、正しい内容が伝わらない恐れがありました。
そこで初代カリフのアブー・バクルの時代に、ムハンマドの秘書ザイド・イブン=サービトによって初めてコーランの編纂が行われたのです。さらに第3代カリフのウスマーンの時代に、再びザイドを中心として編纂され、現在の形になりました。
なお「カリフ」とは、アラビア語で「代理人、後継者」という意味で、イスラム社会の最高指導者のことを指します。中でもムハンマドの死後から4代までのカリフは「神の正しい導きのもとにある」という意味で「正統カリフ」と呼ばれます。
コーランは歌のように美しい
コーランはアラビア語で「クルアーン」。「朗誦されるもの(口に出して唱えるもの)」という意味です。コーランの文章はすべてアラビア語で書かれ、詩のように韻を踏んでいます。独特のリズムと抑揚があるため、アラビア語がわからない人が聞いても、まるで歌のような心地よい響きを感じ取れます。
コーランは訳してはいけないの?
コーランはアラビア語で書かれています。アラビア語以外で書かれたものは、コーランそのものとは認められません。コーランはムハンマドにアラビア語で与えられた神からの言葉であり、ほかの言語に置き換えると、内容を正しく伝えられないと考えられているからです。
そのためイスラム教では、アラビア語圏以外の人もアラビア語でお祈りなどを行います。とはいえコーランの翻訳が禁止されているというわけではなく、実際に多数の言語に訳されています。ただしアラビア語以外のものはあくまでも「コーランの解説書」とみなされているのです。
日本語訳されたおすすめのコーラン
コーランの日本語訳も出版されているので、興味がある方はチェックしてみてはいかがでしょう。中でも水谷周(監修、翻訳)・杉本 恭一郎(翻訳)による『クルアーン:やさしい和訳』はおすすめです。わかりやすい表現と解説によって、コーランへの知識を深めることができますよ。
水谷周(監修、翻訳)・杉本 恭一郎(翻訳)『クルアーン:やさしい和訳』 (国書刊行会 、2019年)
コーランはイスラム教の信仰の礎
コーランはムスリムの人々にとって信仰の礎となるものです。ムスリムには守るべき「六信五行」があり、その内容はすべてコーランとハディースに書いてあります。
六信とはムスリムが信じるべき6つの存在のこと、五行とはムスリムが信仰の実践として行うべき義務のことです。多くのムスリムは、この六信五行を基本として人生を送っています。
【六信】
アッラー、天使、啓典、預言者、来世、予定(神により定められた運命)
【五行】
信仰告白、礼拝(サラート)、喜捨(ザカート:貧しい人を救済する)、断食(サウム)・巡礼(ハッジ)
イスラム教を信仰している国
イスラム教は神アッラーを信仰する一神教です。一神教とは、すべてのものを創造し支配する唯一の神だけを信仰の対象とする宗教のこと。
ユダヤ教やキリスト教も、イスラム教と同じ一神教です。ユダヤ教とキリスト教、イスラム教は発生した地域が近く、いずれの宗教もエルサレムが聖地だという共通点があります。
ムハンマドがイスラム教の布教を始めた頃には、すでにアラビア半島にはユダヤ教やキリスト教が広まっており、その流れを受けてイスラム教は発展しました。
現在、世界には20億人以上がイスラム教を信仰しています。特に多くのムスリムがいるのが、西アジア、北アフリカ、中央アジア、南アジア、東南アジアなどです。ムスリムといえばサウジアラビアやエジプトといった中東の国のイメージが強いかもしれませんが、ムスリム人口が多いのはアジアです。ちなみにムスリム人口が最も多い国はインドネシアで、国民の9割近くにあたる、約2.3億人がイスラム教を信仰しています。
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コーランを憲法としている国
ムスリムが多数を占める国の中には、コーランを実質的な憲法としている国もあります。代表的な国が、イスラム教発祥の地であるサウジアラビアです。
サウジアラビアの「統治基本法」の第一条には、「憲法はクルアーンおよびスンナとする」と明記されています。なおサウジアラビア以外の多くのイスラムの国では、コーランを法源としたイスラム法(シャリーア)を柔軟に解釈し、近代法と併せて運用しています。
コーランと聖書の関係
イスラム教では、旧約聖書と新約聖書の一部を、神から与えられた啓典として認めています。そのためイスラム教ではユダヤ教徒とキリスト教徒を「啓典の民」と称し、それ以外の異教徒とは区別していました。
コーランによれば、神の言葉が最初に授けられたのはユダヤ人(ユダヤ教)です。その様子は「旧約聖書(律法の書)」に記されています。しかしユダヤ人たちは啓示を守らなかったので、神はキリスト教の始祖イエスを通じて再び言葉を与えました。この啓示をまとめたものが「新約聖書(福音書)」です。
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ところがそれでも人々は神の言葉を守らず、啓典の民同士で対立したり、啓典を改ざんしたりしました。そこで神は改めてムハンマドに啓示を与えたのです。コーランは旧約聖書と新約聖書を認めるとともに、それらを更新する存在だと考えられています。ムハンマドが「最後の預言者」とされる所以ですね。
コーランは神からの最後の啓示であり、ムスリムにとって最も重要な啓典なのです。
コーランの内容
ムスリムの人々にとって最も重要な啓典コーランには、何が書かれているのでしょうか。ここではコーランの内容をかいつまんで紹介します。
コーランは114の章と章句から成る
コーランは114の章(スーラ)と章句(アーヤ)によって構成されています。文字数は7万8千字におよび、分量は新約聖書とほぼ同じです。日本の文芸書に置き換えると500ページほどのボリュームがあります。
コーランは神が天使ガブリエルを通じてムハンマドに授けた言葉です。610年ごろから始まった啓示は200回を超え、ムハンマドが死を迎える632年まで、20年以上にわたって下されました。なおコーランに記された神の言葉は、ムハンマドが受け取った順番通りに並んでいるわけではありません。
内容としては、唯一絶対の神がどのような存在であるかということ、そして神が信者に望む心のあり方や、なすべき行為について書かれています。さらに、現世で神の望む生き方をしたムスリムは、死後に天国へ行けることも示されています。
そのほか、服装や日々の行い、食生活に関すること、結婚や商売に関することなど、ムスリムとして生きる上での細かな決まりが書かれています。また、書いてあるのは禁止事項ばかりではありません。大きくは「義務」「推奨」「許可」「忌避(避けた方がよいこと)、「禁止」の5つに分けられ、積極的に行ったほうがよい行為についても数多く言及されています。
コーランの特徴
旧約聖書の創世記には、アダムとイブの楽園からの追放、ノアの方舟といった物語が書かれています。しかしコーランに書かれているのは、ムハンマドに伝えられた神の言葉そのものです。そのため、コーランは物語のように筋を追って書かれてはいません。コーランにはアラビア語で下された啓示を、順番は異なるものの、一言一句違わず、そのままの形で記したものだと考えられています。
なおコーランが成立した650年頃から現在に至るまでの1,300年以上、内容が付け加えられたり、書き換えられたりなどしたことはありません。
コーランの有名な言葉
コーランで有名な章といえば、第96章の「凝血」です。「誦め(よめ)」から始まるこの章は、預言者ムハンマドがヒラー山の洞窟で最初に受け取った啓示であり、非常に重要な部分だと考えられています。
一凝血から、人間を創られた。」
誦め、「あなたの主は、最高の尊貴であられ、
筆によって(書くことを)教えられた御方。
人間に未知なることを教えられた御方である。」
天使ガブリエルを通じて最初の啓示が与えられたとき、「誦め(よめ)」の言葉に対してムハンマドは「私は読むことができません」と答えました。当時の大多数のアラブ人と同様に、ムハンマドは読み書きができなかったためです。
啓示を受けたムハンマドは、神に預かった言葉を周囲の人々に広めることを決心しました。読み書きができないムハンマドが、詩のように美しい言葉で神の教えを説いたことで、人々は「本当に神の言葉を預かってきたに違いない」と考えるようになりました。
こうしてコーランの成立までの間、神からの啓示はムハンマド本人と信徒たちの記憶を頼りに口承されることとなったのです。
コーランの祈りの言葉
コーランの第1章である「開扉」は、ムスリムが1日に5回行う礼拝(サラート)の祈りの言葉として使われます。そのためムスリムの人々は1日に少なくとも17回、開扉の章を唱えているのです。
全ての感謝は世界の神アッラーただ一人へ。
アッラーは最高の慈悲を持ち、最後の審判の日の支配者である。
我々はあなたのみを崇拝し、あなたのみに助けを求める。
我々全てを正しい道に導きたまえ。
あなたの怒りを与えられた者や自分の道を見失った者ではなく、あなたの恩寵を授けられた者の道に。」
ムスリムの祈りの言葉は、すべてアラビア語で唱える決まりがあります。これはアラビア語を話さない国の人でも同じです。なお冒頭の「神の御名の下に最高の慈悲を(Bismillāhi r-raḥmāni r-raḥīm)」という節は、お祈り以外にも日常のさまざまなシーンで、何か行動をする前に唱えられます。
コーランにおける禁止事項
コーランには日常生活のさまざまな禁止事項が細かく示されており、ムスリムの人々はそれに従って暮らしています。神により禁止されているものを「ハラム(Haram)」、許可されているものを「ハラル(Halal)」といいます。
ハラムとハラルは物や日ごろの行いなど生活の全般にわたっており、決めるのは神のみです。例えばハラムには、賭博や銀行の利子、結婚前の男女交際、同性愛、男性の女装や女性の男装などがあります。嘘をついたり、物を盗んだりすることもハラムです。
日本人からすると、「禁止事項が多くて大変そう」「窮屈そう」というイメージかもしれません。しかし多くのムスリムにとって、神のお告げを守るのはごく自然なことなのです。ここではよく知られている禁止事項を見てみましょう。
豚肉禁止
ハラム(禁じられたもの)に含まれる食べ物に豚肉があります。豚肉そのもののほか、ポークエキス、ラードといった豚由来の添加物や食材もハラムです。ゼラチンや乳化剤、ショートニングなども豚由来であれば食べられません。
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豚由来の食材や添加物を含むものとしては、ハム・ベーコンなどの加工肉、スナック菓子類、ビスケット、アイスクリームなどがあります。ラーメンやスープなどのインスタント食品も、ハラムであることが多いです。また豚以外の鶏や牛の肉であっても、イスラムの教えに沿った方法で処理されていないものはハラムとみなされます。
これはコーラン2章「雌牛」の173節に、食べることを禁じられたものとして「死肉、血、豚の肉、アッラー以外の名が唱えられたもの(異神に捧げられたもの)」とあるためです。
国民の大多数がムスリムであるトルコでも、豚肉はほとんど食べません。例えばトルコ料理で有名なケバブには牛肉や鶏肉、羊肉を使い、豚肉のケバブというのは基本的に存在しません。
さらにハラルの食べ物であっても、ハラムのものが混ざってしまうとハラムとみなされることがあります。ハラムは国や地域、宗派、個人によって解釈が違うため、ムスリムの人と交流する機会があれば配慮したいですね。
アルコール禁止
アルコールもまた、コーランで禁止されているものの一つです。5章「食卓」の90節には以下のように記されています。
実はイスラム教では、最初から飲酒が禁じられていたわけではありません。人々が酔って諍いを起こしたり、礼拝を忘れたりする危険性があるとして、メディナ期の後半に飲酒が禁止されました。なお「ブドウ酒(ハムル)」はアルコール類全般を指すと解釈されているため、料理酒やみりん、リキュール類などの調味料も含みます。
イスラム諸国のほとんどはコーランに基づいて飲酒を禁止していますが、トルコでは事情が異なります。これは、トルコがイスラム圏の中でも有数の「世俗主義国家」であることが関係しています。
トルコ共和国は、建国者である「ムスタファ・ケマル」によって、イスラム諸国の中で最も早い1937年に「政教分離」を宣言しました。そのためアルコールについても比較的寛容で、ビールやワイン、ラク(蒸留酒)などが生産されており、スーパーやレストランなどで購入できます。
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女性は肌の露出をしない
イスラム教では、男性は女性の美しさに誘惑されやすいと考えられています。コーラン24章「光」31節にも、女性が家族以外の男性に「わが身の飾りとなるところ」を見せてはならないという記述があります。
イスラム諸国の女性が髪や顔を隠すヴェール(スカーフのような布)をまとっているのは、コーランの言葉に従っているためなのです。
「体のどの部分を隠すべきか」については、国や地域によって解釈が異なります。そのため同じムスリムであっても、女性の服装はさまざまです。ムスリムの女性が身につける布には、次のような種類があります。
- ヘジャブ(ヒジャブ):髪や首を隠す布で、顔は隠さない
- ニカブ:目元のみを出し、顔を隠すための布
- ブルカ:頭と体全体をすっぽりと覆い、目元も隠れるようレースやメッシュになっている布
これらの布は家族以外の男性がいる場所のみで着用し、女性しかいない場所や家の中では着用しません。ムスリムの女性たちも、家族以外の男性がいない場所ではヴェールを外し、服装や髪型などのおしゃれを楽しみます。
ちなみに近年では、おしゃれなヴェールもたくさんあります!色や柄、素材もさまざまで、多くの女性がムスリムの教えを守りつつ、自分らしいファッションを楽しんでいるのです。
なお、政教分離のトルコでは、ヴェールをかぶらない女性が大半です。これはトルコの初代大統領ムスタファ・ケマルがヴェールの着用を推奨しなかったためです。法律によりヴェール着用が禁止された時期もありました。一方サウジアラビアやイランなど、女性が外出する際はヘジャブ着用が義務となっている国もあります。
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コーランにおける女性の考え方
コーランでは女性を、守るべき大切な存在として扱っています。さらに男性は女性の魅力に誘惑されやすいものだとされています。女性の服装に厳しい決まりがあるのも、家族以外の男性から女性を守るためなのです。
またイスラム教で一夫多妻制が認められているのもコーランの教えによるものです。第4章3節には「あなたがよいと思う2人、3人または4人の女を娶れ」という記述があります。
この啓示が与えられた時代は戦争が多く、子どもを抱えた未亡人は珍しくありませんでした。ムスリムの一夫多妻制には、未亡人や孤児の救済という意図もあったのです。なお複数の妻を持つ場合、男性はすべての妻を同じように愛し、養わなければなりません。
現在でもアフリカ諸国などに、一夫多妻制が認められている国は存在します。しかし実情は経済的な負担が大きいことから、一夫多妻であるケースは多くないようです。ちなみにトルコでは、近代化を目指す初代大統領ムスタファ・ケマルによって、一夫多妻制が禁止されました。
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ハラムを破るとどうなるの?
コーランの禁止事項を破るとどうなるかは、国によって違います。イスラム国家の中には、教義に反する行為を取り締まる「宗教警察」が目を光らせている国もあります。宗教警察の有無や組織の大きさ、社会的な地位などは国によってさまざまです。
同じように、コーランにどの程度従って生きるかということは、個人によって差があります。ハラルをすべて守りたい人もいれば、守れない人もいるというわけです。
イスラム教の教えでは、神のみが完全な存在であり、人間は弱く間違いを犯す存在だとされています。そのため仮に禁止事項を守れないことがあったとしても、「貧しい人に寄付をしなさい」などと、対処法を示してあることが多いのです。
なお、ムスリムにとって豚肉はハラムですが、食べるものが何もない緊急の場合は、餓死を免れるために食べてもよいとされています。
またコーランにおいて、他人の悪口を言うことや、他人の信仰心を疑うことも禁止事項の一つです。もし禁止事項を守っていないムスリムがいても、ほかのムスリムが注意することはありません。ムスリムの人々は「神がすべてを見ている」と考えているため、他人が指摘する必要はないのです。
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イスラム教の法「シャリーア」
イスラム教ではムスリムが従うべき規定として「シャリーア(イスラム法)」があります。シャリーアはコーランとスンナ(預言者ムハンマドの言動)をもとに、ウラマー(イスラム法学者)たちが作り上げた法です。
ムハンマドの死後、ムスリムはコーランとハディースに従って暮らしていました。しかしイスラム教が広まり、時代や生活環境が変わるにつれ、コーランとハディースだけでは対応できない問題が増えました。そこでウラマー同士の合意のもと、シャリーアが成立したのです。
シャリーアの内容
シャリーアの内容は大まかに、信仰に関わる「儀礼的規範(イバーダート)」と、民法や刑法にあたる「法的規範(ムアーマラート)」に分けられます。儀礼的規範とは礼拝や巡礼など宗教的行為にかかわることです。
一方、法的規範は結婚や商売、契約、訴訟、相続、刑罰、戦争など、社会における人間同士の権利や義務を規定したものです。シャリーアはムスリムの信仰だけではなく、日常生活や人生に関しても具体的に規制します。
シャリーアは以下の5つに分けられ、ムスリムの人生の指針となっています。
- やらなくてはいけないこと(義務)=ワージブ
- やらない方がいいこと(忌避)=マクルーフ
- やった方がいいこと(推奨)=マンドゥーブ
- やってもやらなくてもよいこと(許可)=ハラル
- やってはいけないこと(禁止)=ハラム
日本人からすると、生活すべてにおいて細かな規制があるのは窮屈なイメージですね。しかしムスリムは生まれたときからシャリーアを当然のものとして暮らしているので、自然と身についていくようです。
シャリーアを施行している国
同じイスラム教の国であっても、シャリーアの扱いは国によって異なります。サウジアラビア、イラン、アフガニスタンなど、シャリーアに基づいた統治が行われたり、シャリーアの強い影響を受けた法律・憲法が用いられたりしている国もあります。一方でトルコやアルバニアでは、シャリーアは廃止されています。またレバノンやシリアなどは世俗主義国家のため、シャリーアの名残があるのは家族法などの一部のみです。
神聖なコーランに触れてみよう!
日本には意外と多くのムスリムが暮らしています。また旅行で日本を訪れるムスリムも少なくありません。コーランを通して、イスラムの文化に触れてみませんか。YouTubeではコーランの読誦を聴くことができますし、コーランに関する日本語の本も多数出版されています。この機会にぜひ、神聖なコーランの世界を味わってみてください。
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