ネクロポリスとはどんな場所?世界遺産に登録されている有名スポットもご紹介!
更新日:2023.04.05
投稿日:2022.09.14
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ネクロポリスとは巨大な墓地や埋葬場所のことで、古代都市の近辺に設けられていました。今回はこのネクロポリスについて解説。さらに、世界遺産にも登録されている世界最大のネクロポリスをはじめ、世界中に現存するネクロポリスの遺跡についてもご紹介していきます。
Contents
ネクロポリスとはどんな場所?
ネクロポリスとは巨大な墓地や埋葬場所のことです。ギリシア語で「死者の町」という意味を持ち、古代都市の近くにある墓地を意味します。エジプトの都市アレクサンドリアの郊外の墓地を指して用いられることもあるようです。
古代エジプトではナイル川を挟んで都市の反対側にネクロポリスが作られました。古代ギリシアやローマ帝国などでは、都市を取り囲む城壁の外部の街道沿いにネクロポリスが作られたといわれています。
ちなみに、教会などの地下にある墓所は「カタコンベ」と呼ばれます。カタコンベは、帝政期のキリスト教が迫害を受けた時代には墓としてではなく礼拝の場としても使用されていました。
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時代が変わりキリスト教が公認された後は、地下埋葬がおこなわれなくなったので、カタコンベは巡礼所となっていきます。
トルコにある世界最大のネクロポリス
ここでは、世界最大のネクロポリスともいわれている、トルコのヒエラポリスのネクロポリスについてご紹介していきます。
世界遺産の古代都市遺跡ヒエラポリス
ヒエラポリスとパムッカレは、ユネスコの世界遺産に登録されている遺跡群。トルコの有名な観光スポットでもあります。ヒエラポリスはもともとペルガモン王国の都市で、ヘレニズム文化の下で繁栄しました。
ヘレニズム時代・ローマ時代・ビザンツ帝国時代を通して温泉地としても有名な都市だったといわれています。劇場や神殿ローマ浴場跡などが現在も残っていて、当時のこの都市の栄光を今に伝えてくれます。
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ヒエラポリスのネクロポリス
ヘレニズム文化の下で繁栄した大都市ヒエラポリスの周辺にもネクロポリスが作られていました。ヒエラポリスのアルカディア通りの北の外れにあるネクロポリスは、1kmの長さに1,200もの墓があり、世界最大のネクロポリスといわれています。
墓には、石棺式とヘレニズム期からの古墳式の2種類があります。古墳式の墓は、墓室のある円錐形の塚の周囲に壁を巡らせていて、入り口や門もついています。
トルコのアナトリアにある「ミュラのネクロポリス」
トルコのアナトリアは、古代都市遺跡が数多く残る場所。そんなアナトリアでは、上述のヒエラポリス以外にもネクロポリスの痕跡もいくつか見つかっています。なかでも特に有名なのが、サンタクロースのモデルになったことで有名な聖ニコラウス教会のあるミュラのネクロポリスです。
ミュラの町は、小アジアの南西部リュキア地方の都市国家によるリュキア連邦のひとつで、その中でも最大級の都市であったという記録が残されています。ミュラの遺跡は、現在のトルコのアンタルヤ県のデムレの町にあります。
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ミュラのネクロポリスは、リュキア独特といわれる岩をくりぬいて作られた墓地で、大きな断崖の表面に墓穴があり、その周囲は神殿のように装飾されています。
ネクロポリスはミュラの周囲に2カ所確認されていて、それぞれ「大洋のネクロポリス」、「川のネクロポリス」と呼ばれています。なかでも、川のネクロポリスにある「ライオンの墓所」が特に有名で、彩色された墓所とも呼ばれています。
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世界中にあるネクロポリスをご紹介
ここでは、世界中にあるネクロポリスから特に有名なネクロポリスをピックアップしてご紹介していきます。
ギザのネクロポリス(エジプト)
エジプトのギザには有名な「ギザの3大ピラミッド」があり、「メンフィスとその墓地遺跡-ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」として、ユネスコの世界遺産にも登録されています。実はこのピラミッドのある場所こそがネクロポリスなのです。
Memphis and its Necropolis – the Pyramid Fields from Giza to Dahshur – UNESCO World Heritage Centre
ギザの3大ピラミッドは、ネクロポリスにある墓。ギザのネクロポリスは、たくさんの墓や埋葬地があるカイロ郊外ギザ近くの広大なエリアのことをさします。古代エジプトの首都だったメンフィスのネクロポリス。古代エジプトの第4王朝時代のファラオであるクフ王や一連の統治者、その家族や廷臣たちの墓があります。
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グラスゴーのネクロポリス(スコットランド)
グラスゴーのネクロポリスは、セント・マンゴー大聖堂とも呼ばれるグラスゴー大聖堂の東側に広がる共同墓地です。1650年にグラスゴー商工会議所によって作られた公園を19世紀初頭に再開発し、ネクロポリスを造営しました。
敷地内には3500基ものモニュメントが残っていて、スコットランドの建築家でデザイナーだったチャールズ・レニー・マッキントッシュや、著名建築家アレクサンダー・トムソンが手掛けたものもあります。グラスゴーの有名観光スポットでもあり、世界中から旅行者が訪れます。
チェルヴェーテリとタルクイーニアのエトルリア墓地遺跡群(イタリア)
チェルヴェーテリとタルクイーニアのエトルリア墓地遺跡群は、ユネスコの世界遺産にも認定されている墓地遺跡群。イタリアのラッツィオ州にあり、エトルリア人が作った「バンデタッチャのネクロポリス」と「モンテロッツィ」の2つのネクロポリスが、世界遺産の対象となっています。
バンデタッチャのネクロポリスは、ローマの西北西の町チェルヴェーテリ近郊にあるネクロポリスです。総面積が400㏊で、200基もの墓がある地中海世界最大のネクロポリスで、作成されたのは紀元前9世紀~紀元前3世紀といわれています。歴史的価値のある出土品も見つかっていて、その大部分はローマの国立エトルリア博物館などで展示されています。
モンテロッツィのネクロポリスは、ローマの西北西の町タルクイーニア近郊にあるネクロポリスです。6,000基以上の墓が発見されていて、中にはフレスコ画が描かれた墓なども見つかっています。
Etruscan Necropolises of Cerveteri and Tarquinia – UNESCO World Heritage Centre
バチカン地下のネクロポリス(バチカン)
バチカン市国は、国の全域がユネスコの世界遺産にも登録されている世界最小の国家です。そんなバチカンのサンピエトロ大聖堂の地下にもネクロポリスがあります。このネクロポリスは1939年~1950年の発掘調査により、16世紀ぶりに奇跡的に発見されました。現在は、観光スポットとしても人気を博しています。
通常、地下墓地はカタコンベと呼ばれますが、このネクロポリスは初代のサンピエトロ大聖堂(現存しているのは2代目)が建造される前から存在しており、そこには聖ペテロの墓があったともいわれています。
初代のサンピエトロ大聖堂は、コンスタンティヌス1世の指示で建設された教会堂で、ネクロポリスを覆うように建設されました、そのため、このネクロポリスは地下に埋められたのです。
ベート・シェアリムのネクロポリス/イスラエル
ベート・シェアリムのネクロポリスはエルサレムの外に初めて作られたユダヤ人の埋葬地で、世界遺産にも登録されています。
ベート・シェアリムのネクロポリスは、イスラエルの3大都市のひとつでもあるハイファの町の南東にあり、紀元前2世紀以降に建設されたといわれています。ローマ帝国との戦いであるバル・コクバの乱に敗れた後のユダヤ人によるもので、複数のカタコンベによって構成されています。
Necropolis of Bet She’arim: A Landmark of Jewish Renewal – UNESCO World Heritage Centre
パンターリカの岩窟墓地遺跡(イタリア)
パンターリカの岩窟墓地遺跡は、シチリア島にある巨大ネクロポリスです。紀元前13世紀~紀元前7世紀頃作られた墓が5,000基以上残っていて、シチリア島南東部にある町、シラクサに残る古代ギリシアの都市遺跡とともに、ユネスコの世界遺産にも登録されています。
シラクサは古代ギリシアの植民郡市であるシュラクサに起源を持つ都市で、地中海周辺のギリシア植民市で最も繁栄した国家だと伝えられています。パンターリカには、フィリポルトのネクロポリスやカヴェッタのネクロポリスなど、広大なエリアにネクロポリスが散在しています。
Syracuse and the Rocky Necropolis of Pantalica – UNESCO World Heritage Centre
コルマのネクロポリス/アメリカ
アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコの南の町コルマは、その町自体が死者の町、ネクロポリスといえる場所になっています。
1848年のゴールドラッシュをきっかけにサンフランシスコには移民が大量にやってきます。そのため、人口が増大しすぎて居住地が不足し、スラムを生み出してしまいます。さらに、自然災害やパンデミックにもみまわれ、たくさんの人が亡くなります。
その後、町を再建するために墓地は町の外に作る必要があり、1924年にコルマがネクロポリスとして設立されました。町にはわずか約1,600人の住人に対して150万人以上の死者がいるともいわれ、町の70%以上が墓地となっています。たくさんの共同墓地が集まっていて、日本人墓地もここに作られています。
2022年にスペインで新発見されたネクロポリス
近年でも大都市のあった場所からネクロポリスが発見されるケースがあります。2022年にも、スペイン南部の町オスナで、水道設備を新しくする工事の作業中に地下ネクロポリスが発見されています。発見されたのは2,500年前にイベリア半島に住んでいたフェニキア人の地下共同墓地でした。
世界最大のネクロポリスがあるトルコを旅しよう
ネクロポリスとは、古代都市に併設された巨大な墓地や埋葬場所のことです。ネクロポリスは古代都市の周囲に作られていることが多く、世界中の遺跡群からその痕跡がみつかっています。
トルコには世界最大のネクロポリスで、ユネスコ世界遺産にも登録されているヒエロポリスのネクロポリスがあります。ほかにも、ミュラのネクロポリスなど、アナトリアの古代遺跡からもネクロポリスの痕跡がいくつか発見されています。
ネクロポリスをはじめ、古代遺跡からははるか昔の人々の営みを垣間見ることができます。また、ネクロポリス以外にもトルコにはさまざまな時代の遺跡が散在しています。雄大な歴史ロマンを体感することができる、トルコをゆっくり旅してみてくださいね。
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