トルコの楽器を知ろう!サズやネイからトルコの楽器店、博物館まで紹介
更新日:2023.04.03
投稿日:2022.03.18
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悠久の歴史を感じる遺跡や建造物、美しいエーゲ海、「世界三大料理」に数えられるトルコ料理など、見どころがたくさんあるトルコ。そんなトルコの文化・芸術について語るとき、外せないのが楽器です。
トルコの楽器は、その歴史から生まれた音楽や民族舞踊と密接に結びついています。実は、現在よく知られる楽器の原型になったものや、日本の伝統的な楽器のルーツになったものもあるのです。
今回は、サズやネイといったトルコ楽器を徹底解説。楽器店・博物館といった、実際にトルコ楽器に触れられる施設も紹介します。
トルコの有名な楽器を紹介
トルコがあるアナトリア半島は、ヨーロッパや中東、アジアのちょうど中間地点に位置しています。
その立地条件からこれまでにさまざまな王朝がこの地を求め、さまざまな民族の流入も頻繁に起こりました。歴史の中で多種多様な文化が入り交じった結果、独特な楽器が生まれたのです。
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また、トルコは世界最古の軍楽隊「メフテルハーネ(メフテル)」を持つ国としても知られています。打楽器を打ち鳴らして味方の軍を鼓舞する軍楽は、トルコの打楽器の発展に大きく寄与しました。
それでは、それぞれの楽器の特徴を見ていきましょう。
サズ
まずは、トルコの弦楽器「サズ」。サズは2000年もの歴史を持つトルコの伝統楽器です。ボディが特徴的で、細長いネックと洋梨のような丸みがあります。
ネック部分には、トルコ音楽独特の旋律に欠かせない「微分音(西洋音楽の半音をさらに細分化した音程)」に沿ったフレット(突起)が付けられています。
リュート属に分類されるサズは、弦をはじくタイプの楽器のリュートやギターなどと近い、異国情緒が感じられる音色が魅力。古くは吟遊詩人が歌う際の必需品でもありました。
ネイ(笛)
「ネイ」はトルコ・イランに伝わる葦(あし)製の笛です。トルコのイスラム教神秘主義教団メヴレヴィー教団を象徴する、白い衣装を広げながら踊る旋回舞踊「セマー」には、このネイの音が欠かせません。
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円形の独特な吹き口と細長い形状を持ち、指を置く穴が楽器下部に穿たれています。腕を伸ばして、口に対して斜めに当てる独特な構え方も特徴です。
ネイはフルートに似た、まろやかで神秘性を感じさせる音色を持っています。また、音域も広く、熟達すれば3オクターブほど出せると言われています。
ダラブッカ(ダルブッカ)
トルコをはじめとするオリエント周辺に広く普及している打楽器が「ダラブッカ」。「酒杯」「ゴブレット型」と称される独特な形状です。
伝統的なダラブッカには打面に動物の皮、ボディには素焼きや金属が使用されています。側面に描かれた鮮やかで美しい柄も魅力です。
ダラブッカは脇に抱え、手のひらを打ち付けて音を出します。残響が少なく乾いた音色なので、早いリズムでも音が濁らず小気味良く刻めるのが特徴です。
ズルナ
「ズルナ」は古代ペルシャ時代から伝わる伝統楽器です。ラッパのような末広がりの木製ボディに、薄い葦の板を2枚組み合わせた「ダブルリード」の吹き口が付けられています。
ズルナはシルクロードを渡り、西洋楽器のオーボエや中国の楽器スオナの原型にもなりました。日本のチャルメラもまた、ズルナがルーツ。これらの楽器は音色もよく似ています。また、音量が非常に大きいため、屋外での祭礼や舞踏などで主に使用されます。
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ウード
アラブ世界を代表する民族楽器が「ウード」です。ササーン朝ペルシャで生まれた弦楽器「バルバト」が元になっており、同じルーツを持つ日本の「琵琶」とも非常に似た外見を持ちます。
短めのネックにはフレットが付けられておらず、サウンドホールには非常に美しい装飾が施されています。しっとりとしたギターに似た響きを持ち、「楽器の女王」と称されることも。
広く普及しているため、トルコ・ウードやアラブ・ウードなど地域によっても特徴が異なります。
カヌン(カーヌン)
カヌン(カーヌン)もまた、トルコ音楽には欠かせない弦楽器です。一辺が長い独特な台形のボディに27本の弦が張られており、ペグ(杭)の操作でトルコの旋律に欠かせない微分音を出すことができます。
カヌンは床や支台に置き、琴のようにつま弾いて音を出します。優しく柔らかい音色が特徴で、ウードやナイと一緒に演奏されることが多い楽器です。
ダウル
オスマン帝国時代の軍楽隊「メフテルハーネ(メフテル)」に欠かせなかったのが打楽器「ダウル」です。現在の「大太鼓」の原型になったとされるダウルは、円筒形の大ぶりなボディを体から吊り下げて叩きます。
ダウルはズルナと一緒に演奏されることが多く、軍楽だけでなくお祭りや結婚式などの慶び事にも登場する楽器です。
タンブール
とても長いネックとしずくのような流線型のボディが美しい「タンブール」。木製のボディに金属の弦が張られたタンブールは、トルコだけでなくウイグルの民謡においても重要な楽器です。
リュート属であるタンブールの音域は低めで、豊かな響きとエッジの効いた独特な音色を持っています。インドのシタールなどと同様にひざの上に置き、斜めに構えて演奏します。
キョス
「キョス」もまた、メフテルに用いられる打楽器です。ダウルよりもさらに大きく、銅製のボディに革張りの打面を持ちます。
2つで1組のキョスはそれぞれが異なる音程を持ち、両手に持ったバチで叩いて音を出します。西洋音楽でおなじみの打楽器「ティンパニ」のルーツになったことでも有名ですが、音はあまり似ておらず、丸く太い響きが特徴です。
また、キョスにはさまざまな大きさがあり、小ぶりなものは馬上、大型のものになると象やラクダの上で演奏されます。太く堂々とした佇まいで見た目にも迫力のある楽器です。
シンバル
オーケストラや吹奏楽、ロックやポップス、ジャズなどさまざまなジャンルで用いられるシンバルもトルコ発祥の楽器です。
特に、今も多くの演奏者から支持を受ける「Zildjian(ジルジャン)」は17世紀のオスマン帝国時代から続く由緒あるメーカー。ブランド名は時の皇帝から与えられた称号が由来です。
シンバルは2枚を打ち合わせて音を出したり、バチで叩いたりして音を出します。ジャズなどでは、柔らかい音が出るワイヤーブラシなども主流です。非常に大きく特徴ある音を持つため、当初は軍隊の招集や祝祭日に使用されていました。
⚡️FX Stacks × 今井義頼⚡️
最終日となる本日は、今井さんセレクトの3サイズ(10″,12″,16″)を使用したソロでフィナーレ😚🎊✨
今井さんの変幻自在のテクニックにはもう脱帽です…😭
全ドラマー必見‼️見逃しなく‼️😆⚡️⚡️⚡️#Zildjian #今井義頼 #FXStack pic.twitter.com/tmmivFt8fs— Zildjian Japan🇯🇵 (@ZildjianJapan) March 3, 2021
ズィル
現在のシンバルの原型となった「ズィル」も現存しており、ほかの打楽器と同じくメフテルで使用されています。音色や形状はシンバルとほぼ変わりませんが、シンバルよりもやや小ぶりで、左右に持った2枚を打ち合わせて音を出します。
ターキッシュクレセント(チェヴギャーン)
トルコに伝わる楽器の中でもひときわ目を引くのがターキッシュクレセント(チェヴギャーン)です。日本の「錫杖」とよく似た作りで、長い棒を上下に振ることで上部に付いたたくさんの鈴を鳴らします。
トルコの国旗にも用いられている三日月や「東屋(あずまや)」を模した装飾が美しいターキッシュクレセントは、メフテルの行進を華やかに彩る存在。
また、フランスの宮廷作曲家フィリップ・ラモーによるオペラ・バレエ『優雅なインドの国々』に使用されるなど、オリエンタル世界をテーマにした楽曲に使用されることもあります。
正解はターキッシュ・クレセントです!
クイズにご参加くださった皆様、どうもありがとうございました✨
ラモーの『優雅なインドの国々』組曲では、打楽器のこんな演奏もあります。当日までに変更する可能性もありますが、本日バージョンを特別に…。是非コンサートでお確かめください。#都響 #Tokyo pic.twitter.com/hF1zJqi1kO— 東京都交響楽団 (@TMSOnews) January 31, 2020
カバック(ケマネ)
トルコの弦楽器は弦をはじく「撥弦楽器」が主流ですが、弓を使って弾くものも存在します。その一つがカバック(ケマネ)です。見た目はタンブールとよく似ていますが、ネックは短め。底面に足棒(エンドピン)が付いているものもあります。
カバックはバイオリンのようにあごの下には挟まず、モンゴルの「馬頭琴」や中国の「二胡」のようにひざに立てて演奏します。バイオリンとよく似た、流麗でつややかな響きが特徴です。
メフテルの影響を受け作られたトルコ行進曲
トルコの「メフテルハーネ(メフテル)」は、世界最古の軍楽隊として知られています。打楽器やラッパを使用したにぎやかなサウンドは、さまざまな作曲家に影響を与えました。
また、行進しながら楽器を演奏するメフテルのスタイルは、現代におけるマーチングバンドに受け継がれています。
ここからは、メフテルからインスピレーションを受けたクラシック音楽を見てみましょう。
モーツァルトの『ピアノソナタ第11番』
『ピアノソナタ第11番』はオーストリア生まれの作曲家、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって1783年に作曲されました。この曲にはしばしば「トルコ行進曲付き」という副題が付けられます。
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作曲当時、ヨーロッパでは強大な力を持つオスマン帝国への恐れと興味から「トルコ風」「トルコ趣味」といったトルコ人気が高まっていました。
モーツァルトが拠点としていたオーストリアでは、二度にわたるウィーン包囲の影響もありトルコ軍楽が流行。人気に乗じてさまざまな「トルコ風」楽曲が作られました。
一楽章ではのどかな旋律のテーマと6つの変奏が演奏されます。快活な二楽章を経て、「トルコ行進曲」が登場するのは最終楽章です。メフテルが持つ独特なリズムは、3楽章冒頭の音型(シラソ♯ラド)や左手パートで表現されています。
ハイドンの交響曲第100番『軍隊』
100を超える交響曲を遺した巨匠フランツ・ヨーゼフ・ハイドンもまた、トルコの軍楽隊に影響を受けた作品を遺しています。それが交響曲第100番『軍隊』です。
全体的に明るい雰囲気の『軍隊』ですが、2楽章中盤では暗く激しい曲想に切り替わります。その際登場するのが、シンバルやトライアングル、バスドラム、トランペットなどメフテルを彷彿とさせる楽器たち。当時の世界情勢が反映された一曲とも言えるでしょう。
ベートーヴェンのトルコ行進曲
交響曲第5番『運命』や第9番『歓喜の歌』でも有名なルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、自身の劇付随音楽『アテネの廃墟』の中でトルコ行進曲を作曲しました。
もともとはオーケストラ曲でしたが、トルコ行進曲はピアノに編曲され、コンサートピースとして現在でも高い人気を得ています。
モーツァルトの作品と同じく、メフテル特有のリズムが強調された一曲です。2つを聴き比べてみるのも面白いかもしれませんね。
日本でトルコの楽器に触れるには
民族楽器コイズミ
京都にあるエスニックの楽器の専門店「コイズミ」。トルコの楽器が手に入るだけでなく、楽器の修理・メンテナンスも行っています。
また、民族楽器教室も運営しているので「トルコの楽器をはじめてみたい!」という人にもおすすめ。国内外から演奏者を招いて行うイベントも必見です。
名称 | 民族楽器 コイズミ |
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所在地 | 京都市中京区寺町通り姉小路上る 下本能寺前町518番地 |
URL | http://www.koizumigakki.com/ |
民族楽器専門店トーザイ
広島県広島市にある「民族楽器専門店トーザイ」では、世界各国のさまざまな民族楽器がそろっています。
値段も、初心者向けの手頃なものからコンサートやレコーディング向けのプロ仕様まで幅広いので、気軽に立ち寄れます。ウェブサイトでは楽器ごとに演奏動画が掲載されているので、こちらも要チェックです。
名称 | 民族楽器専門店トーザイ/ ToZai |
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所在地 | 広島県広島市安佐北区安佐町飯室 921-201 |
URL | http://tozaimusic.com/index.php |
民音音楽博物館
30万点を越える所蔵を持つ「民音音楽博物館」では、ズルナやタブラッカ、ウードやカーヌーンといった、この記事でも紹介したトルコ楽器を見ることができます。
加えて演奏音源や映像、書籍なども豊富に所有しているので、「この民族音楽について徹底的に知りたい」「実際にはどんな演奏をしているのか見聞きしてみたい」という人にもおすすめ。
東京都信濃町と兵庫県神戸市それぞれに施設を置いていますが、信濃町の本館は2022年3月現在改装中です。再開は2022年秋ごろに予定されています。
名称 | 民族音楽博物館 |
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所在地 | 【本館】 東京都新宿区信濃町8番地 【西日本館】 神戸市中央区浜辺通6-3-16 関西国際文化センター3F |
URL | https://museum.min-on.or.jp/ |
浜松市楽器博物館
国内では唯一となる公立楽器博物館「浜松市楽器博物館」。西洋・東洋で生まれたさまざまな古楽器を有しており、常設展ではトルコ楽器も扱っています。
1日のうち数回はスタッフによるデモ演奏が行われるほか、過去には日本人ウード奏者・常味裕司さんを招いたサロンコンサートが行われたことも。珍しい民族楽器の生演奏を耳にするチャンスがある博物館です。
名称 | 浜松市楽器博物館 |
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所在地 | 静岡県浜松市中区中央3丁目9−1 |
URL | https://www.gakkihaku.jp/ |
トルコ文化センター
東京都港区にある「トルコ文化センター」は、トルコの文化から言語まで幅広く触れられる施設。ここではトルコの伝統楽器「サズ」の教室も開かれています。初心者でも優しく教えてもらえるので、興味がある人はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
名称 | トルコ文化センター |
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所在地 | 東京都港区芝大門1丁目3-17 玉家ビル4階 |
公式サイト | https://www.turkeycenter.co.jp/music/saz/ |
トルコでトルコの楽器に関わるスポット
イスタンブールの楽器屋街
イスタンブール新市街のベイオール地区には、トルコの詩人ガリブ・メフメド・アサド・デデの名にちなんだ「ガリップデデ通り」があります。トゥネル広場の脇からイスティクラル通りを南下したこの辺りは、楽器屋街になっています。
ギターなど現代の楽器からトルコの民族楽器まで幅広く取りそろえた「ZuhalMusic」をはじめ、さまざまな楽器店が立ち並んでいます。
ZuhalMusic公式サイト:https://www.zuhalmuzik.com
ハルビエ軍事博物館
イスタンブール・ハルビエ地区のクムフリエ通りにあるのが「ハルビエ軍事博物館」です。元々は軍の施設として使用されていましたが、現在では武器などを展示する博物館になっています。
ここでの目玉イベントがメフテルの生演奏。オスマン帝国から続く軍楽隊の伝統を肌で感じられるチャンスです。
オスマン帝国はなぜ600年以上も続いたのか?栄光と滅亡の歴史と強さの秘密
名称 | ハルビエ軍事博物館(Harbiye Askeri Müze) |
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住所 | Halaskargazi, Vali Konağı Cd. No:2, 34367 Şişli/İstanbul, トルコ |
公式サイト | https://askerimuze.msb.gov.tr/ing/index.html |
メヴラーナ博物館
コンヤに訪れた際、ぜひ立ち寄りたいのが「メヴラーナ博物館」。もともとはメヴラーナ教団の拠点であり、創始者メヴラーナ・ジェラール・ウッディーン・ルーミーの霊廟が置かれていた施設です。
イスラム神秘主義メヴレヴィー教団の舞踏「セマー」で使われた笛や太鼓などの楽器が展示されています。
名称 | メヴラーナ博物館(Mevlana Müzesi)(Harbiye Askeri Müze) |
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住所 | Aziziye Mah, Mevlana Cd. No:1, 42030 Karatay/Konya, トルコ |
公式サイト | http://www.mevlanamuzesi.com/ |
多様性に富んだトルコの楽器
本記事では、トルコに伝わるさまざまな楽器について解説しました。シルクロードの中継地点であったトルコは、古くから多くの文明や文化が発達してきたアナトリアという土地の特性もあり、多様性に富んでいます。土地柄からも分かるように、トルコの楽器は吹奏楽器から弦楽器まで多様性に富み、現代の楽器のルーツになったものもあります。
異国情緒あふれるトルコ楽器の音色は、聴く人をトルコに運んでくれるような魅力に満ちています。本場の音に触れたくなったら、ぜひトルコを訪ねてみてくださいね。
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