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ミダスは実在したのか?『王様の耳はロバの耳』で有名なフリギア王国の国王

更新日:2023.04.05

投稿日:2022.10.18

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ミダス王

「ミダス王」と聞いてもピンと来ない方も多いかもしれませんが、「王様の耳はロバの耳」の王様と聞けば、なんとなく思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。実はこのミダス王は伝説上の人物ではなく、実在したといわれています。

ギリシャ神話の「触れたものを黄金に変える手」にも登場するフリギア王国(現在のトルコ)の国王・ミダス。今回はそんなミダス王について、詳しく解説します。

ミダス王とは

王様の耳はロバの耳 ミダス王

ミダス王は、現在のトルコにあたる古代アナトリアにあったフリギア王国の2代目国王です。ミダースと表記されることもあります。

フリギア王国初代国王のゴルディオス、女神・キュベレーの養子として育てられ、現在のトルコのアンカラに古代都市・アンキラを建設したと言われています。また、小アジア北西部にあったアイオリスのキメという都市国家の国王の娘・ヘロモディケと結婚し、リテュエルセースという息子がいました。

日本で有名なミダス王が登場する神話には「王様の耳はロバの耳」があります。イソップ寓話とされていることも多い「王様の耳はロバの耳」ですが、正しくはローマの詩人・オウィディウスによる「変身物語」が典拠です。

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「変身物語」にはミダス王の物語として「王様の耳はロバの耳」の他に、触れたものが黄金に変わる「ミダス・タッチ」の物語も登場します。世界的には「ミダス・タッチ」の方が有名です。

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神話におけるミダス王は実在した?

ミダス王

実はミダスという名前の人物は、フリギア王国に複数いたと言われています。フリギア王国史上最も知られているのは、紀元前8世紀ごろに国王に在位し、王国を繁栄に導いたミダス王です。アッシリア王だったサルゴン2世の同盟者として名を連ねる“ムシュキ(Mushki)のミタ(Mita)”と同じ人物と考えられていますが、これが神話に登場するミダス王なのかは今のところわかっていません。

古代の学者がミダスについて言及した記録もいくつか残っています。古代ギリシャの歴史家・ヘロドトスは、ミダス王が神託地・デルフォイへの捧げ物として、煌びやかな宝飾を施した王座を進呈したことを書き残しています。また、ヘロドトスは、ゴルディアスの息子としてミダイという名前をフリギアに残る石碑に書き記しました。

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古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは、ミダス王が触れたものを黄金に変える手を持ったことで、彼が飢死にしてしまったと語っています。

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ローマ時代の地理学者であり歴史家のストラボンによると、フリギア王国は紀元前7世紀末頃にキンメリア人の侵攻によって滅亡しました。その際ミダス王は、牡牛の血を飲み、自殺したと語り継がれています。

ミダス王にまつわる2つの神話と教訓

ミダス王にまつわる神話は「ミダス・タッチ」と「王様の耳はロバの耳」の二つが有名です。この二つがどんな神話なのか、そしてそこから得られる教訓を紹介していきます。

ミダス・タッチ

ミダス王

「ゴールデン・タッチ」としても知られる「ミダス・タッチ」の神話は、ミダス王が触れたものが全て黄金になる能力を持っていたことを伝える神話です。当時のフリギア王国が裕福であったことと、ミダス王が更なる財を求める貪欲な人物であったことでこの神話が生まれたと考えられています。

あるところに、ワインの神・ディオニュソスがいました。ディオニュソスと彼に知識を与えていたシーレーノスがフリギアを旅していたところ、酔ったシーレーノスが迷子になって、ミダス王が愛したバラの庭で眠ってしまいます。

ミダス王がシーレーノスを助けて宮殿でもてなしたところ、そのことに感激したディオニュソスはミダス王の願いをなんでも一つ叶えることに。すでに莫大な富を抱えていたミダス王ですが、彼は「王こそが富を独り占めするべきだ」と考えていました。そこでディオニュソスに「触れたものを全て黄金に変え、より裕福になること」を叶えて欲しいと願います。

願いが叶って触れたもの全てを金に変える力を手に入れたミダス王は喜び、盛大な宴を開きますが、食べ物や飲み物も黄金に変わってしまい、何も食べることができません。また、彼が愛したバラの庭も黄金に変わってしまい、彼はこの力を忌み嫌い、ディオニュソスに「元に戻して欲しい」と懇願しました。

ミダス王を哀れに思ったディオニュソスは、パクトロス川で水浴びをするよう伝えます。困難な旅の末、パクトロス川で水浴びしたミダス王は触れたものを黄金に変える力を取り去ることができました。

ちなみにパクトロス川は現在のトルコ・エーゲ海地方にあるサルト川という説が有力です。サルト川では今も砂金が取れるのですが、これはミダス王が黄金に変える力を失った場所だからだと言い伝えられています。

「ミダス・タッチ」からは、

  • 欲を持ちすぎず今あるものに満足すべき
  • 富よりも大切なものがあり、自分にとって何が一番大切か見極めなくてはならない
  • 欲を持ちすぎると身を滅ぼす

という教訓が得られます。

ミダス王の娘・マリーゴールドとは?

ミダスタッチ

ミダス王が触れたものを黄金に変える力を持つという神話には、いくつものバージョンがあります。その中の一つにあるのが、「ミダス王が愛する娘・マリーゴールドに触れてしまい、娘が黄金の彫像になってしまって自分自身の過ちに気付く」という話です。しかし、神話や史実にマリーゴールドという娘は登場しません。

この話は、アメリカの小説家であるナサニエル・ホーソンの創作だと考えられていて、彼の残した子ども向けの短編集「A Wonder-Book for Girls and Boys」には、マリーゴールドが登場する「The Golden Touch」が収録されています。

創作ではありますがこの話は英語圏を中心に広く知られており、ミダス王を描いた絵画には、マリーゴールドが一緒に描かれることが多いのです。

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王様の耳はロバの耳

王様の耳はロバの耳 ミダス王

日本でよく知られているミダス王の神話といえば、「王様の耳はロバの耳」です。神話で語られるミダス王の耳がどのような形をしていたかはわかっていませんが、この神話は青銅器時代、ロバの耳が王様のシンボルだったことに由来しているという説もあります。

「ミダス・タッチ」で富を嫌うようになったミダス王は、田舎で生活するようになり、牧羊神・パンを崇拝するようになりました。ある日、音楽や芸術の神であるアポロンが、パンと楽器演奏を競うことになり、ミダス王を審判に選びます。

音楽や芸術の神で、竪琴を得意としていたアポロンはパンよりも美しい音色を奏でるのですが、パンを崇拝していたミダス王は、パンを勝者に選んでしまいました。このことに腹を立てたアポロンは「美しい音がわからないお前の耳は人間の耳ではない!」とミダス王の耳をロバの耳に変えてしまいます。

どうすることもできないミダス王は帽子で耳を隠して生活していました。しかし、王に仕えていた理髪師がその秘密を知ってしまいます。理髪師は「決して秘密を話さないように」と言いつけられますが、秘密を抱える苦しみに耐えられず、誰にも聞かれないように井戸に向かって「王様の耳はロバの耳」と叫んでしまいました。

理髪師はこっそり叫んだつもりでしたが、この声が井戸に生えていた葦に届き、葦が風に揺られて王様の秘密は国中の人に知られてしまいます。民衆の噂に耐えられなくなったミダス王は、自分で耳を切り落としますが、切っても切ってもロバの耳が生えてきてしまいます。

諦めたミダス王は耳を隠すことをやめ、民衆に向かって「この大きな耳は人々の意見を聞くためのものだ」と宣言し、秘密をばらしてしまった理髪師のことを許します。ミダス王の寛大さを認めたアポロンは、ミダス王の耳を人間の耳に戻してあげました。

この神話から得られるのは、

  • 思わぬところから噂は広まってしまう
  • 人の過ちに寛大な心を持つべき
  • 真実を話す勇気を持つことで信頼を得られる
  • 悩みや秘密を抱えるのは心身に悪い

という教訓です。

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「王様の耳はロバの耳」も「ミダス・タッチ」同様にさまざまなバージョンがあり、日本でも絵本となって多くの人に愛されています。

ミダス王に関するトルコの観光スポット

ゴルディオン トルコ

実在していたミダス王。トルコにはミダス王にまつわる観光スポットがいくつかあります。トルコを訪れたらミダス王にまつわる観光スポットにも足を運んで、長く語り継がれる神話に思いを馳せてみましょう。

ミダス王の墓

トルコの首都・アンカラから南東に100kmほどに、ミダス王の墓と考えられている大きな古墳があります。古墳があるのはフリギア王国の首都・ゴルディオンがあった場所だと考えられている場所です。この場所には多数の墓がありますが、その中で直径300メートル・高さ47メートルと最も大きく、8世紀頃の古墳がミダス王の墓とされています。

未発掘だったこの古墳が発見された際、木の棺には推定年齢60〜65歳、身長約159cmの男性の遺骨が納められていました。また、遺骨とともに数々の副葬品も納められていたようです。ただし、これらの遺物はミダス王が生きていた年代よりも少し前のものであるとの分析結果が出ており、ミダスではなくその父ゴルディアスの墓ではないかともいわれています。

ゴルディアスの結び目の意味や由来とは?舞台となった古代アナトリアのフリギア王国

この遺骨と副葬品はアナトリア文明博物館に収蔵されており、一部は展示されています。ミダス王の頭蓋骨、木製のサイドテーブル、ライオンと羊の頭を模した器など、多くの貴重な発掘品が見学できますので、トルコを訪れた際は必見です。

アンカラ アナトリア文明博物館

名称 アナトリア文明博物館(Anadolu Medeniyetleri Müzesi)
住所 Kale, Gözcü Sk. No:2, 06240 Ulus/Altındağ/Ankara, Turkey
開館時間 8:30~19:00(冬季は18:00まで)
定休日 祝日
入場料 45TL
公式サイト https://muze.gov.tr/muze-detay?SectionId=AMM01&DistId=AMM

アナトリア文明博物館の見どころ解説!アンカラで外せない観光名所

アンカラ

アンカラ トルコ

現在のトルコの首都アンカラにあたる古代都市アンキラは、ミダス王が作ったとされています。トルコで有名な都市といえばイスタンブールですが、アンカラも文明と歴史を感じられる魅力的な街です。イスタンブールに次ぐ第二の都市で、観光都市としても発展しています。

アナトリア文明博物館をはじめ、トルコ初代大統領であるムスタファ・ケマル・アタテュルクが眠るアタテュルク廟、ローマ帝国時代にトルコの支配者たちの住まいであったアンカラ城、コジャテペ・モスクなどをはじめとする数々のモスク、独立戦争博物館やアウグストゥス神殿、ローマ浴場跡など、観光スポットも豊富。

トルコ最初のショッピングモールであるアタクレタワーや、オラン地区にある高級ブティックやファッショナブルなレストラン、ウルス地区やクズライ地区にある庶民的なお店屋さんやレストランなど、ショッピングも食事も思う存分楽しめます。

イスタンブールからアンカラまでは、飛行機で1時間ほど。直行便も多く移動もしやすいので、観光ルートに加えてみてはいかがでしょうか。

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近年発見されたミダス王の死に言及した石碑

2019年、トルコのコンヤで「ハルタプ王がミダス王を捕えた」と記した石碑が発見されました。また、この石碑は史実でミダス王が生きた時代と同時期のものであることもわかっています。

ハルタプ王は新ヒッタイト諸王国を成す小国の一つの国王だった人物です。新ヒッタイト諸王国はヒッタイト帝国滅亡後にヒットタイト人の文化を受け継いだルウィ系民族が興した国だと言われています。

「ヒッタイト帝国と首都ハットゥシャ」王国滅亡の理由と遺跡の見どころ

この発見によって、ミダス王が治めていたフリギアをハルタプ王が滅亡させた可能性が出てきました。これまでミダス王はキンメリア人がフリギア王国を侵攻してきた際に、牡牛の血を飲んで自殺したと言われてきましたが、この石碑が正しい場合はこれまでの通説が覆り、フリギア王国の謎が解明されるかもしれません。

ミダス王を題材にした創作

「ミダス・タッチ」や「王様の耳はロバの耳」はさまざまなバリエーションで語り継がれ、この神話をモチーフにした作品も多く残されています。今回はその中から二つの作品を紹介します。

黄金の王様(ディズニー映画)

子どもにも大人にも人気のディズニー作品には、ミダス王をモチーフとした「The Golden Touch(黄金の王様)」があります。これはウォルト・ディズニー自身が監督として参加した「シリ―・シンフォニー」という短編映画集に収められている作品です。作品の舞台は中世ですが、内容はミダス王の「ミダス・タッチ」をベースにしています。

妖精ゴルディの持つ「全てを黄金に変える力」を金貨と引き換えにしたミダス王。あらゆるものを黄金に変えて喜びますが、食べようとしたローストチキンや飲み物も全て黄金に変わってしまいました。

「とんでも無いことをしてしまった」と後悔するミダス王の前にゴルディが再び現れます。ミダス王は「王国をあげるからハンバーガーをくれ!」とゴルディに訴えると、ゴルディは全てのものと引き換えにミダス王にハンバーガーを与えました。何もかも失ってミダス王は嘆きますが、ハンバーガーに玉ねぎがついていることに喜んで食らいつくというお話です。

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機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト

日本だけでなく、世界中に熱狂的なファンを持つガンダム。漫画「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」には、ミダス王の伝説をチーフとしたモビルスーツ「ミダス」が登場します。対ビーム・コーティングされたこのモビルスーツは、黄金を愛したミダス王を象徴するように全身が金ピカです。

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