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アブラハムは信仰の父!旧約聖書の物語や生涯、子孫など詳しく解説

更新日:2023.04.05

投稿日:2022.09.13

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皆さんは、宗教に関する物語でアブラハムの名前を見聞きしたことはあるでしょうか?おそらく名前は知っていても、具体的にはどういう人物なのか詳しくない方がほとんどでしょう。

この記事では、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の始祖となる預言者アブラハムの生涯や注目のエピソードをわかりやすく紹介していきます。旧約聖書において彼はどのような人物として描かれているのか、どんな経緯があって3つの名高い一神教のルーツになりえたのか、彼を巡る人間関係や重要な子孫の繋がりを整理しつつ、信仰の父と称えられるアブラハムの物語を紐解いていきましょう。

アブラハムとは

アブラハム イサク

旧約聖書「創世記」の重要人物であるアブラハムは、ノアの洪水後、最初に神に選ばれた預言者です。何度も神の啓示を授かり、その言葉に忠実な信仰心を体現し続けることで、土地と財産、さらに高齢ながら子宝にも恵まれ、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教の始祖になったとされています。

ノアの洪水とは、旧約聖書における最も著名な言い伝えの1つで、神の啓示を受けたノアは、その家族と限られた動物を方舟に乗せ、地表の生物のほとんどが息絶える中で40日間の洪水を生き延びたそうです。今回解説する預言者アブラハムは、そのノアの末裔に当たります。

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また、イスラム教の預言者といえば、ムハンマドの印象が強いかもしれませんが、経典コーランでは、旧約聖書および新約聖書に登場する従来の預言者たちを敬い、アブラハムのことは「イブラーヒーム」という呼び名で五大預言者の1人に数えています。

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そして、創世記には、アブラハムの孫に当たるヤコブがイスラエル人の祖先と記されることから、アブラハムをイスラエルの始祖とするとらえ方も主流です。同じく創世記によると、アブラハムの長子(イシマエル)はアブラハムから別の地へ追放された後、アラブ人の祖となった経緯が綴られています。

こうして、ユダヤ教における全てのユダヤ人の祖先と、イスラム教における全てのアラブ人の祖先は、いずれもアブラハムという共通の始祖へ繋がっているのです。

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「アブラハムの宗教」とは?

聖書 キリスト教

実は、世界で重要な地位を占める宗教カテゴリ―について、今回紹介するアブラハムの名を冠して「アブラハムの宗教」とも呼んでいます。アブラハムの宗教とは、信仰の父アブラハムを起源とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教、およびその流れを汲む各宗教の総称で、いずれも神を唯一至高の存在として崇める一神教という共通点があります。この一神教(アブラハムの宗教)には、世界人口の実に半数強が属するとされ、その宗教観や信仰精神が、世界各地の人々の価値観の形成にも少なからず影響を与えているといえます。

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アブラハムの宗教は、唯一神を信奉するほかに、選ばれし預言者が神の仲介・代弁者となるため、神の姿を描写・表現すること、すなわち偶像の崇拝を禁じています。また、神が世界を創造し、人間が従うべきルールを定めるとされ、旧約聖書でアブラハム物語として綴られた信仰のあり方が、各宗教へそのまま継承されていると言っても過言ではありません。

そうした背景から、ユダヤ教が旧約聖書のもとになったヘブライ語聖書(タナハ)を聖典と定めるのはもちろん、キリスト教やイスラム教も旧約聖書を聖典の1つとして認めています。逆に、ユダヤ教の場合は、時系列的に旧約聖書よりも後に誕生した新約聖書やコーランを聖典とみなすことはありません。

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アブラハムの生涯

アブラハム

アブラハムの生涯は、ユダヤ教の聖典でもある旧約聖書「創世記」に目を通すことで詳しく辿ることができます。同書の11章26節~25章に至るまでは、彼を中心に据えたエピソードがほとんどを占めています。とはいえ、アブラハムの生き様が詳しく綴られるのは、彼が75歳という高齢に達してからです。

故郷を離れ約束の地・カナンへ

当時、ハランに住んでいたアブラハムは、「あなたは国を出て、親族に別れ、父の家を離れ、わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大きくしよう」(12章1節・2節)と初めて神の啓示を受け、妻のサラ、甥のロトを引き連れて、神との約束の地・カナンへ向かいました。

アブラハム一行がカナンの地に着いた際も、神は再び彼のもとに現れ、「わたしはあなたの子孫にこの地を与えます」(12章7節)と告げたと記されています。

ロトとの別れ

アブラハム

カナンを起点に各方面へ旅を続けるうちに、土地や財産にも恵まれたアブラハムとロトの一派は、互いに言い争う機会が増えて溝が深まってしまいます。そこでアブラハムは「全地はあなたの前にあるではありませんか。どうかわたしと別れてください。あなたが左に行けばわたしは右に行きます。あなたが右に行けばわたしは左に行きましょう」(13章9節)とお互い別々の道を行くことを告げた上で、先にロトに向かいたい土地を選ばせたそうです。

この判断は、両者間で大きく明暗が分かれ、ソドムに移り住んだロトには何かと困難が降りかかり、カナンの地に留まったアブラハムは、そこで神から子孫繁栄の啓示をあらためて受けるなど、順風な繁栄を約束されたと言われます。

晩年のアブラハムと子どもたち

アブラハム

その後、高齢ながら実際に子孫に恵まれたアブラハムでしたが、後世の宗教の成り立ちにも大きな影響を与えたのが、サライの奴隷ハガルとの間に産まれたイシマエルと、さらに遅れて正妻サライとの間に産まれたイサクの存在でした。

晩年のアブラハムは、神の正当な預言の子とされたイサクに最も多くの財産を与え、側室との間の複数の子どもにも一定の富を配り、イサクとは離れた東方の地へ向かわせたそうです。こうして、絶えず信仰心の強さを神に示し続けたアブラハムは、175年にわたる天寿を全うし、先立った正妻のサライとともに埋葬されました。

神とアブラハムの契約

アブラハム

旧約聖書では、複数回にわたり神の啓示を授かっているアブラハムですが、双方の契約は一貫して共通した要素が込められています。

最初にアブラハムが、カナンという約束の地(現在のパレスチナの土地)へ向かうよう神に告げられた際には、その意志に従うことで、アブラハムの名を高め、祝福の源とし、「あなたを祝福する人はわたしを祝福し、あなたを呪う者はわたしを呪う」(創世記12章3節)と契約を交わしました。

啓示通りカナンの地へ赴いた後、神はアブラハムの子孫にこの地を与えると告げ、アブラハムが甥のロトと別れた直後にも、現在地を起点とする広大な土地を永久にその子孫に捧げると表明しています。同時に、「わたしはあなたの子孫を地のちりのように多くします」(13章16節)と子孫繁栄の約束をも取り交わしました。

また、神とアブラハムおよびその子孫に代々引き継がれる契約の印として、男子は生まれて8日目に割礼を受けること、それは家族だけに限らず神を信仰する者なら等しく行われるべき儀式と定めています(17章9~14節)。

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アブラハムの子孫

続いて、アブラハムの2人の子(イシマエルとイサク)のエピソードと、キリスト教のイエスへと続くアブラハムの子孫をたどっていきましょう。この系図の概要を知ると、アブラハムが複数の宗教や民族の始祖と言われている状況を理解しやすくなるはずです。

イシマエル

アブラハム

アブラハムの長男「イシマエル」は、彼の正妻サライに奴隷として仕えていたハガルを母として生まれました。旧約聖書によると、奴隷のハガルがアブラハムの子を身ごもったのは、サライ自らが、ハガルとの子をもうけるようアブラハムに勧めたからです。

約束の地にて、神より子孫繁栄の啓示を受けたアブラハムですが、そのお告げに反して、移住から10年が経過しても一向に子宝に恵まれることはありませんでした。そこでサライの取り計らいもあり、アブラハムは86歳の頃に待望の第一子を授かったのです。

しかし数年後、高齢のサライが真の預言の子となるイサクを奇跡的に出産したため、イシマエルとハガルを巡る状況は暗転します。実の子を正当な世継ぎとしたいサライは、ハガル親子を追い出すようアブラハムにそそのかします。さらに、サライの要望を聞き入れるよう神の啓示が授けられたため、神に敬虔なアブラハムは最終的に2人を追放してしまいました。

その後、苦境に身を置きながらも生き延びた2人は、バランの荒野に住まい、イシマエルはエジプトから妻を迎えたと伝えられています。そして、このイシマエルこそが、アラブ人の祖となった人物「イスマーイール」なのです。

イサク

アブラハム イサク

アブラハムが100歳、正妻サライが90歳となった頃、神が預言した通りのタイミングで2人の間に「イサク」が誕生します。3人の神の使いが正妻の男児出産を告げに現れた際は、サライ自身もにわかには信じがたい様子を隠し切れなかったようです。それでも神の言葉に不可能はなく、奇跡の高齢出産は現実のものとなりました。

イサクの異母兄弟イシマエルとその母が追放となり、イサクの正当な世継ぎとしての立場が固まっていた頃、アブラハムはある試練となる神の啓示を授かります。「わたしが示す山で彼を燔祭としてささげなさい」(22章2節)と、アブラハムは最愛の子イサクを全焼の生贄に捧げるよう命じられたのです。

それでも並外れた信仰心を宿すアブラハムは、啓示に従って準備を進め、祭壇のたきぎに縛り付けたイサクを殺そうと刃物を手に取ります。その瞬間、天の声が「子を殺めてはならない」と制し、最愛の子の命が失われることはありませんでした。そして、信仰のために子の命さえ厭わないアブラハムの姿勢に、「あなたが神を恐れる者であることをわたしは今知った」(22章12節)と神は預言者としての真の資質を認めたと伝えられています。

イエスまでの系譜

イエス・キリスト

それでは、キリスト教の救世主イエスへと至るアブラハムの系譜を確認していきましょう。まず、アブラハムと正妻の息子がすでに紹介したイサク、そのイサクの子に当たるのがイスラエル12部族の発祥となるヤコブです。12部族という名の通り、ヤコブには12人の息子がいましたが、その中で4番目の息子のユダ(ユダ族の祖)がイエスへと連なる系譜の祖先に当たります。

このユダの子孫で、古代イスラエル第2の王として君臨したのが、対巨人のエピソードでも有名なダビデ王です。旧約聖書においては、ダビデ王の子孫から救世主(メシア)が誕生するという神の約束が綴られ、この預言は断続的な受難に直面するイスラエルの民の心の拠り所としても支持されました。そうして、世代は移り変わり、ダビデの末裔の子を身ごもるマリアのもとに大天使ガブリエルが遣わされ、待望のメシアが誕生するという受胎告知が行われたのです。

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アブラハムからイエスまで一つの血統が脈々と継承される一方で、神への信仰の持つ意味やその解釈は確かな変遷を遂げました。旧約聖書の時代は、神の恩恵を授かる対象はアブラハムの子、すなわちイスラエル民族に限定された話でしたが、洗礼者ヨハネやイエスなどの新約聖書の時代に入ると、誰もがアブラハムの子孫になりうる、つまりイスラエル民族以外にも救済の道が開ける新たな解釈が主流を形成します。

また、紹介した聖典の登場人物の名は、現在当たり前のように見かける人名の由来となっているケースが多くあります。それぞれを英語読みに切り替えると、イサクならアイザック、ヤコブならジェイコブやジェームズ、ダビデならデイビッドやデーブなど慣れ親しんだ人名が派生していることがわかるでしょう。

トルコにあるアブラハムゆかりの地

啓示を受け、カナンを目指したアブラハムですが、彼にとってはトルコが生誕の地であり、トルコ内にもアブラハムゆかりの地がいくつか存在します。旧約聖書や伝承の舞台とされ、観光地としても注目度の高い2つの町を紹介していきましょう。

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アブラハムが生まれた町「シャンル・ウルファ」

シャンルウルファ トルコ アブラハム

シャンル・ウルファは、シリア国境寄りのトルコ南東部に位置し、紀元前3000年~2000年頃から栄えていたとされる古代都市です。歴史上はエデッサという別名で登場する機会も多く、諸説ありますが、旧約聖書における「ウル」と同一視する解釈も有力です。

シャンル・ウルファには、預言者アブラハム生誕の地とされる小さな洞窟(アブラハムの洞窟)があります。洞窟の奥から湧き出る水は聖水として崇められ、日々、多くのイスラム教徒が祈りを捧げる神聖な場所です。

洞窟の側には、ハリル・ラフマン・ジャーミィをはじめとする壮麗なモスクが建ち並び、その合間には、アブラハムにまつわる伝説の舞台となっている「聖なる魚の池」が広がります。言い伝えによると、アブラハムは信仰のあり方で、当時の支配者ニムロド王の怒りを買い、火あぶりの刑として炎に突き落とされてしまいます。ところが、アブラハムを救おうとする神の意志が働き、その炎は水に、薪は神聖な魚に変わるという奇跡が生まれたそうです。実際の池には、今日も多数のコイ科の魚が活発に泳ぎ回っており、古代の伝承を思い浮かべながらモスクと水のコントラストを楽しめます。

さらに、ウルファ中心部から20kmほど離れたギョベクリテペ遺跡は、2018年に世界遺産に登録されたばかりの注目スポットです。あのメソポタミア文明より7000年も前に存在したとされる古代遺跡で、まだ謎に包まれている部分も多く、世界中の研究者や観光客から熱い視線を集めています。

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アブラハムが滞在した町「ハラン」

トルコ ハラン

上述のウルファより、さらに南に4km強の位置にある紀元前さながらの雰囲気に包まれた町がハランです。シリア国境には、わずか20km弱の距離に迫っており、アブラハムの気持ちになって地図を見ると、少しずつ約束の地に近付きつつあるのが実感できるでしょう。

ハランは、創世記に記述がある通り、アブラハムが妻のサライや甥のロトと共に、約束の地へ向かう途中で暮らしていた場所です。また、アブラハムの父テラはこの地で息を引き取ったと伝えられています。アブラハムは神の啓示を受け入れ、75歳の頃に家族を連れてこの地を旅立ちました。

ここハランの見どころは、コンパクトなとんがり屋根を形作った日干し煉瓦の住まいと、それらが織り成す古代を再現したかのような光景です。また、こうした風土を活かした家屋は無人の遺跡と化しているのではなく、現在も一部で住民が暮らしているという面も驚かされます。

ハランは古来より商業・経済・政治の要所として栄え、紀元前2250年頃と見られる文書にも、楔形文字で現在とほぼ同じ町名で記録が残されているそうです。この地は、世界中のどこと比べても、古代に戻ったかのような疑似体験が可能な場所かもしれません。

シャンルウルファとハラン観光の見どころは?アブラハムゆかりの聖地

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