聖書とは?意外と知らない旧約・新約の違いや内容、名言などを紹介
更新日:2023.04.05
投稿日:2022.10.07
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結婚式で聖書の言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。「愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません(コリント人への手紙I 13:4〜8)」といったフレーズは有名ですね。この記事ではキリスト教・ユダヤ教の聖典であり、イスラム教にも大きな影響を与えた聖書について解説します。知っているようで知らない旧約聖書と新約聖書の違いや、名言なども紹介するので参考にしてみてください。
Contents
聖書とは?
聖書はキリスト教の聖典です。一般的に聖書(英:Bible)といえば、39巻からなる旧約聖書と、27巻からなる新約聖書を1冊にまとめた書物を指します。旧約聖書は英語で「Old Testament」、新約聖書は「New Testament」とそれぞれ呼ばれます。
キリスト教徒以外の多くの日本人にとって、聖書は身近なものではないかもしれません。しかし「バイブル」という言葉にはなじみがあるのではないでしょうか。映画やドラマ、小説、漫画などで、自分に影響を与えた大切な作品のことを「バイブル」と表現することはよくあります。
聖書は人類史上最大のベストセラー
聖書はこれまで数千年にわたってさまざまな国で読み継がれてきた本です。ギネス世界記録公式サイトでも、聖書は「史上最も売れた本」と認定されています。2021年に英国外国聖書協会が行った調査によれば、これまでに印刷された聖書の総数は50億から70億部だと推察されています。
世界中に広がったキリスト教の聖書は世界各国の言葉に翻訳されてました。もともと旧約聖書はヘブライ語とアラム語、新約聖書はギリシア語で書かれていましたが、現在では3,200以上の言語に翻訳されています。
聖書は世界三大宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれにおいても重要な啓典です。そのため聖書は長きにわたって、多くの人の思想に影響を与え続けている書物だといえるでしょう。
旧約聖書と新約聖書の違い
旧約聖書と新約聖書の「約」とは、神と人間の契約を意味します。「旧約」は古い契約、「新約」は新しい契約のことです。ただし、旧約聖書・新約聖書という区別はキリスト教固有の考え方です。ユダヤ教の聖典は旧約聖書にあたる部分だけで、新約聖書は含まれません。
旧約聖書はヘブライ語で書かれたユダヤ教の聖書(タナハ)を引き継いだもので、主に神とイスラエルの人々との交流が描かれています。一方、新約聖書には主にキリスト教の救い主であるイエスと、その弟子たちの活動が綴られています。
旧約聖書
旧約とは、神とイスラエル(ユダヤ)の民との間に結ばれた古い契約を意味します。旧約聖書に描かれているのは、神と人間(イスラエルの民)との出会いの物語です。旧約聖書がいつ、誰によってまとめられたかは分かっていませんが、書いたのは「神の霊感に動かされた人たち」だとされ、すなわち「神が書いたもの」とされています。
旧約聖書は創世記からマラキ書までの39の文書から構成され、天地創造やアダムとイブ、ノアの方舟といった有名な物語も含まれています。
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新約聖書
新約とは神とイエスを信仰する人々との間に結ばれた、新しい契約を意味します。新約聖書はイエスが処刑された後に、弟子や使徒たちの手でまとめられました。
27の文書で構成されており、福音書、使徒言行録、書簡、預言書の4つに区分できます。教会や結婚式の説話に使われる有名な言葉は、新約聖書から引用されたものが少なくありません。
教派による違い
キリスト教には多くの教派がありますが、基本的にどの教派も、旧約聖書と新約聖書からなる聖書を正典とする点では一致しています。違うのは外典(アポクリファ)の取り扱いです。外典とは、聖書関係の文書の中で「旧約聖書39巻と新約聖書27巻に含まれないもの」を指します。
ユダヤ教では紀元1世紀末に行われたヤムニア会議において、ヘブライ語聖書の正典が決定されました。しかしこのとき、すでに成立していた「七十人訳聖書(ヘブライ語聖書のギリシア語訳)」に収録されているのにもかかわらず、正典とは認められなかった書物があります。この書物が、ヘブライ語聖書における外典です。「旧約外典」とも呼ばれます。
ヘブライ聖書を旧約聖書として引き継いだキリスト教において、正教会では、七十人訳聖書に収められている文書すべてを正典と認めています。また、カトリック教会では、ヘブライ語聖書にない文書の一部を「第二正典」として聖書に加えています。しかしプロテスタント教会ではヤムニア会議で決定した39の文書をそのまま旧約聖書の正典とし、外典を聖書に加えることは認めていません。
このようにして長い間、教派ごとに含まれる文書の範囲が違う聖書が用いられてきました。しかし教派を超えてキリスト教が結束しようという「エキュメニズム」の流れに沿って、カトリックとプロテスタントが共同して翻訳をする機会が生まれました。そこで話し合いの結果、ヘブライ語聖書にある部分のみを旧約聖書とし、それ以外でいくつかの教派が正典としている13の文書を「旧約聖書続編」とすることが決まったのです。
ちなみに日本でも1987年に、13の外典を「旧約聖書続編」として収録した「新共同訳聖書」が刊行されています。
三大宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)と聖書の歴史
聖書は世界の三大宗教であるユダヤ教・キリスト教・イスラム教に深く関わっています。それぞれの宗教が生まれた経緯と、聖書との関わりを見てみましょう。
ユダヤ教におけるヘブライ語聖書の成立
ユダヤ教は古代イスラエルに発祥した、ユダヤ人の民族宗教です。唯一絶対の神ヤハウェを信仰する一神教で、後にキリスト教の母体となりました。
ユダヤ教はアブラハムの子孫であるイスラエル部族の一つユダヤ民族が神から選ばれた選民だとし、救世主(メシア)が来臨すると信じていることが大きな特徴です。聖典はタナハ(ヘブライ語聖書)であり、これはキリスト教の旧約聖書にあたります。
ユダヤ教のタナハ(ヘブライ語聖書)は、古代から口頭伝承されてきたものだと考えられています。文書として成立したのは紀元前5~4世紀ですが、古い部分の中には紀元前16〜15頃に書かれたものもあるとされています。旧約聖書は、神の霊感に動かされた多くの人々が、長い年月をかけて書いた複数の文書をまとめたものなのです。
キリスト教の成立
キリスト教は、「イエスこそヘブライ語聖書で預言された救世主だ」と信じる人々によって生まれました。ユダヤ教と同じく一神教ですが、キリスト教における神は「父なる神」「子なるキリスト」「聖霊」という三つの位格を持つ「三位一体の神」だと考えられています。
キリスト教ではヘブライ語聖書を旧約聖書として引き継ぎますが、イエスの死後である1世紀〜2世紀頃に、使徒や弟子たちによって新約聖書がまとめられました。日本では弥生時代にあたります。キリスト教では、旧約聖書は新約聖書の前提と位置づけられています。
なお今では紀元前を「B.C.」と表記しますが、これはBefore Christ(キリスト生誕前)の略です。また、紀元後は「A.D.」と表記しますが、これはAnno Domini(アンノ ドミニ)の略で、ラテン語で「我が主の年」という意味です。
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ユダヤ教の聖典であるタナハ、つまり旧約聖書はもともとヘブライ語で書かれました。ユダヤ教が拡大する中でヘブライ語が読めないユダヤ教徒が増えたことから、ギリシア語への翻訳が行われました。
紀元前3世紀中頃~紀元前1世紀頃に成立した「七十人訳聖書」は、最も有名な翻訳の一つです。初期キリスト教徒が宣教活動に使ったのも、この七十人訳聖書でした。なお、七十人訳聖書には現在のヘブライ語聖書にはない文書も含まれています。
その後、紀元1世紀末に行われたヤムニア会議においてユダヤ教の正典が決定しました。このとき正典と認められた範囲が「マソラ本文」です。七十人訳聖書に含まれるものの、ヘブライ語起源ではない文書は正典から除外され、外典(アポクリファ)とされました。
405年頃には、聖職者ヒエロニムスによってラテン語訳聖書「ウルガタ」が成立します。ヒエロニムスはアンティオキア教会の教父であり、ローマ教皇の命によって、古ラテン訳の統一を行います。その後、ギリシア語の新約聖書と、ヘブライ語・ギリシア語の旧約聖書をもとにウルガタを完成させました。
ウルガタには七十人訳聖書のうちでヘブライ語起源ではない文書も「第二正典」として含まれています。ウルガタはそれまでのラテン語訳に比べて大変出来が良かったため、ローマ・カトリック教会のスタンダードな聖書(ラテン語訳)となったのです。
16世紀になると、カトリック教会の信仰のあり方への疑問から「宗教改革」が起こります。ルターによって始まった宗教改革は、結果としてプロテスタント教会の樹立につながりました。ルターの功績の一つが、ドイツ語訳の聖書を完成させ、ドイツの庶民に広く聖書を普及させたことです。
ルターは翻訳にあたってヘブライ語聖書(ヤムニア会議で正典と認められたマソラ本文)をもとにしました。そのためルターの聖書には、カトリック教会で第二正典とされる文書は含まれていません。ルターの聖書は多くのプロテスタント諸派に引き継がれたため、プロテスタント教会では現在も第二正典を含まない聖書が用いられています。
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最後の預言者ムハンマドによるイスラム教の成立
イスラム教と聖書との関係を見てみましょう。イスラム教はユダヤ教やキリスト教の影響を受け、7世紀初頭にアラビア半島で生まれました。開祖は神によって選ばれた最後の預言者とされるムハンマドです。イスラム教ではモーセやイエスも同じ神の預言者とされていますが、最後にして最大の預言者こそムハンマドだと考えられています。ユダヤ教徒やキリスト教徒が神の言葉を正しく守っていなかったため、最後の預言者として神がムハンマドを選んだとされているのです。
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イスラム教の聖典は、ムハンマドが受け取った神の啓示を、弟子たちがまとめた「コーラン(クルアーン)」です。イスラム教徒にとって、コーランは神の言葉そのものです。さらに具体的な行動指針となる第二の聖典として「ハディース」があります。
コーランでは旧約聖書・新約聖書の一部について言及されていますが、聖書とは内容が違う部分も少なくありません。イスラム教では聖書を経典の一つとして認めているものの、神の言葉を正しく伝えるものではないとされています。そのため神の言葉そのものであるコーランに比べて、聖書は不完全なものであると考えられています。
ユダヤ教における聖典
ユダヤ教の聖典は、キリスト教でいう旧約聖書です。ただし「旧約」というのはキリスト教固有の考え方であり、ユダヤ教ではタナハまたはミクラーと呼ばれます。タナハ(Tanakh)は旧約聖書をトーラー(Torah=律法)、ネビイーム(Nevi’im=預言者)、ケトゥビーム(Kethuvim=諸書)の3つに分け、それぞれの頭文字をとったものです。ミクラー(Miqra)は、ヘブライ語で「朗誦するもの」を意味します。
なお、ユダヤ教の聖典の一般的な呼称として、ヘブライ語聖書という呼び方をすることもあります。
現在、世界に残っているヘブライ語聖書はすべて、原本(正本)を書き写した写本です。1008~1010年に作成されたという「レニングラード写本」、ユネスコ世界遺産にも認定された「アレッポ写本」などは特に有名です。また1947年には、ヘブライ語聖書の最古の写本を含む「死海文書」が発見されました。
現在のキリスト教の旧約聖書もヘブライ語聖書をもとにしていますが、各国語に翻訳される過程でキリスト教的な解釈が加えられています。そのため同じ言語に翻訳されたタナハと旧約聖書とを比べた場合、その記述は異なります。さらに24巻からなるタナハと39巻からなる旧約聖書とは、区分の仕方や文書の並び順も違うため、同じ内容を扱っているとはいえ、タナハと旧約聖書にははっきりとした違いがあるのです。
聖書の内容を詳しく!
ここからは聖書の内容を詳しく見ていきましょう。旧約聖書、新約聖書それぞれを紹介します。
旧約聖書に含まれる文書と内容
旧約聖書は、アブラハムの子孫であるイスラエル民族と神との関係を述べたものです。旧約聖書は天地創造から始まって、何世紀にもわたるイスラエル民族の歴史が描かれています。内容は古代イスラエル人(ユダヤ人)の思想活動を網羅するかのごとく、多岐に渡っています。
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モーセ5書(律法)
天地創造から、イスラエル民族の指導者・モーセの死までが描かれています。ユダヤ教においては律法(トーラー)と呼ばれ、とりわけ重視される部分です。
- 創世記:神による天地創造やアダムとイブ、ノアの方舟、バベルの塔といったおなじみの物語が含まれています。読み物としても楽しめます。
- 出エジプト記:モーセの誕生、エジプト脱出を経て、モーセがシナイ山にて神から十戒を授かったこと、イスラエルの民と神との間に契約が結ばれたことなどが描かれています。
- レビ記:さまざまな規定を集めたものです。祭司が行う祭儀職務についての規定や、神の民であるイスラエル民族が守るべき規定が細かく定められています。
- 民数記:シナイ山を出発して再び約束の地を目指したイスラエルの民が、神の怒りに触れて40年間荒れ野をさまよう様子が描かれています。
- 申命記:モーセは約束の地カナンを目前に死を迎えます。申命記は死を前にしたモーセがモアブの地でイスラエルの民に語りかけた、最後の演説をまとめたものです。
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歴史書
約束の地カナンに辿り着いてからの、イスラエルの民の歴史が綴られたものです。ダビデ王・ソロモン王などの歴史的に有名な人物が登場し、イスラエル王国の分裂やバビロン捕囚といった実際に起きた出来事も多く出てきます。歴史書は大きく2つに分けられます。
第一のイスラエル史
「ヨシュア記」「士師記」「サムエル記」「列王記」から成ります。
モーセの後継者に指名されたヨシュアが、イスラエルの民を率いてカナンを征服する様子から、その後のイスラエル王国の繁栄、イスラエルの都市・エルサレムの陥落までが描かれています。
ヨシュア記の「私がモーセと共にいたように、私はあなたと共にいる。あなたを見放すことはなく、あなたを見捨てることもない」(ヨシュ1:5)という部分は、「主はいつも私たちと共にいる」という、聖書全体を通して繰り返し語りかけられるメッセージです。
第二のイスラエル史
「歴代誌」「エズラ記」「ネヘミヤ記」「エステル記」から成ります。
イスラエル民族のエルサレム帰還と、神殿の再建についてが主な内容です。
北と南に分裂したイスラエル王国は、それぞれアッシリアとバビロンに滅ぼされ、民はバビロンへの移住を余儀なくされました。その後、バビロンがペルシア帝国に滅ぼされたことにより、イスラエルの民はエルサレムに帰還します。
エステル記はペルシア王妃エステルの物語です。
知恵文学・詩歌
「ヨブ記」「詩編」「箴言」「コヘレトの言葉」「雅歌」から成ります。箴言(しんげん)とは知恵者たちによるアドバイス、教訓・格言をまとめたものです。たとえば冒頭には「イスラエルの王、ダビデの子、ソロモンの箴言」とあります。
神への賛美や嘆き、祈りなどの詩歌を集めた「詩編」は文学的要素が強く、ヨーロッパの近代文学にも影響を与えました。ユダヤ教・キリスト教の祈りの言葉として、現在も礼拝で使われています。過去には詩編の多くがダビデ、雅歌はソロモンの作だと考えられていた時期もありました。しかし現在では、作った人も作られた時期もさまざまだとする研究者が多いようです。
預言書
イザヤ書以降マラキ書までで、大預言書と小預言書に分けられます。内容は預言者たちを通して語られる神の言葉や、預言者たちの行動などです。とりわけイザヤ記、エレミヤ記、エゼキエル記は「三大預言書」と呼ばれています。
預言者たちの言葉の中には「イエスによって成就した」とされるものもあり、新約聖書に数多く引用されています。
新約聖書に含まれる文書と内容
新約聖書は27の書で構成されています。イエスの生涯と言葉を記した「福音書」、初期キリスト教会の歴史を描いた「歴史書(使徒言行録)」、使徒たちの手紙である「書簡」、「ヨハネの黙示録」からなっています。
福音書
「マタイによる福音書」「マルコによる福音書」「ルカによる福音書」、「ヨハネによる福音書」が収められています。福音とは「良き知らせ」のことです。イエスの誕生と生涯、死と復活の記録が、4人の弟子たちの立場から綴られています。新約聖書の中で最も重要な部分です。
なお福音書には、イエスにより12人の弟子(12使徒)が選ばれた様子が記されています。12人はイエスに忠誠を誓い、行動を共にしました。
歴史書(使徒言行録)
使徒言行録は福音書の続編ともいえるパートです。イエスが死の3日後に復活して天に昇る様子から、使徒たちがイエスの教えを世界中に広めていく奮闘ぶりが描かれています。
登場する使徒はそれぞれ個性的ですが、中でも有名なのがパウロ(サウロ)です。もともとパウロはイエスとは考えの違う「ファリサイ派」のユダヤ教徒でした。ところがあるとき目から鱗のようなものが落ちて回心し、その後イエスの教えを命がけで広めるようになりました(サウロの回心)。「目から鱗が落ちる」ということわざは、実はパウロのエピソードに由来しています。
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書簡
使徒たちが信徒や教会あてにしたためた21の手紙が収められています。内容はいずれも信徒たちを励ましたり、信仰のすばらしさを説いたりするものです。特に多いのがパウロによって書かれたとされる手紙で、13通にも及びます。
黙示録
聖書の最後に収められているのが、ヨハネの黙示録です。聖書には基本的に過去のできごとが書かれていますが、黙示録だけには未来のことが書かれています。内容は、使徒ヨハネが神に見せてもらった「これから起こること」です。
恐ろしい天変地異、神とサタンとの戦い、最後の審判、そして神の国の到来とイエスの再臨が「黙示文学」の形式で書かれています。「黙示」とは、隠れていたことがらを明らかにするという意味です。黙示文学は比喩的な表現が多いため、ヨハネの黙示録は解釈がとても難しいとされています。現在でもヨハネの黙示録については議論が絶えません。
トルコともゆかりのある聖書
聖書に出てくる地名や人名の中には、トルコとゆかりのあるものが少なくありません。トルコを訪れる際はぜひチェックしてみてください。
「アブラハム」ゆかりの地・シャンルウルファ
アブラハムはイスラエル民族の祖であり、ノアの洪水後初めて神に選ばれた預言者とされる人物です。トルコの伝承では、アブラハムがカナンに向かう前に住んでいた「ウル」は、トルコ南東部のシャンルウルファだとされています。アブラハムはシャンルウルファ中心部の洞窟で生まれたと伝えられ、近くにはモスクが建っています。
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ノアの方舟が到着したアララト山
有名な「ノアの方舟」が到着したのは、トルコ東端にあるアララト山だといわれています。ノアの方舟とは旧約聖書の「創世記」に出てくる物語の一つです。人間が堕落したことに怒った神が大洪水を起こしますが、神に従う正しい人・ノアとその一族だけは救済されました。
ノアは神の命令に従って巨大な方舟を造り、地上のあらゆる動物の1対のつがいとともに乗り込みます。40日40夜の洪水のあと、150日経ってようやく方舟が止まったのがアララト山でした。ちなみにアララト山はトルコ最高峰。標高は5,137mです。
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使徒パウロはアナトリアでキリスト教を広めた
使徒パウロといえば、新約聖書の「書簡」に13通もの手紙が収められていることで有名です。またキリスト教最大の伝道者としても知られています。
新約聖書の「使徒言行録」には、使徒パウロがアナトリア(トルコのアジア側)やヨーロッパ各地をめぐる伝道の旅をしながら、キリスト教を広めていく様子が描かれています。
そんなパウロが生まれたのが、現在のトルコ中南部メルスィン県タルススにあたる「タルソス」です。パウロの生地とされる場所に井戸が残っており、「パウロの井戸」と呼ばれています。
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ヨハネの7つの黙示録教会はトルコにあった
新約聖書「ヨハネの黙示録」には、小アジア(現在のトルコ)にある7つの教会にあてた書簡が記されています。エフェソス、スミルナ、ペルガモン、ティアティラ、サルディス、フィラデルフィア、ラオディキアの7教会です。
この7つの教会は、パウロが3回目の旅でエフェソスに滞在して伝道のために働いた結果、初めて小アジアに作られました。
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観光地としても有名な聖ヨハネ教会
トルコ西部の町セルチュクにある「聖ヨハネ教会」は、観光スポットとしても知られています。セルチュクは古代ローマ帝国の都市エフェソスがあった場所です。
12使徒の一人であり「ヨハネによる福音書」を記したとされるヨハネは、晩年をエフェソスで過ごしたといわれています。ヨハネの墓の上には小さな聖堂がありましたが、6世紀に東ローマ皇帝ユスティニアヌスにより聖ヨハネ聖堂が建てられました。
残念ながら現在は廃墟になっており、見学できるのは壁と円柱、床のモザイク画のみです。ただし内部には大理石で囲まれたヨハネの墓が残っています。
有名な聖書の名言
聖書には多くの名言や有名な物語が収められています。キリスト教徒ではなくても心に沁みるメッセージも少なくありません。ここでは有名なものを3つ紹介します。
神と隣人を愛せよ
キリスト教では「神様を愛し、隣人を愛する」ことが礎となっています。それが分かる言葉が「マルコによる福音書」の12章にあります。律法学者に「あらゆる掟の中で最も重要なものは何か」と問われたイエスは、「神を愛することと隣人を愛すること」だと告げました。
イエスのそばで、この見事な返答ぶりを聞いていた一人のユダヤ教の教師が、「先生。すべての戒めの中で、どれが一番重要な戒めでしょうか」と尋ねました。
「『イスラエルよ、聞け。主なる神こそ、ただひとりの神です。心を尽くし、たましいを尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの主を愛しなさい。』(申命6・4-5)これが最も重要な戒めです。
第二は、『自分を愛するように、あなたの隣人を愛しなさい』(レビ19・18)という戒めです。これ以上に重要な戒めはありません。」
(マルコによる福音書 12章28~31節)
明日のことを心配しない
将来のことを心配し過ぎるのは良くありません。とはいえ、ついあれこれと想像し、将来のことを心配してしまう人は多いのではないでしょうか。「明日必要なものは神が与えてくれる。明日を思い煩うことなく、今日すべきことに全力を注ぎなさい」という教えは、現代人にとっても大切なことかもしれません。
明日のことを心配するのはやめなさい。神は明日のことも心にかけてくださるのですから、一日一日を力いっぱい生きなさい。
(マタイによる福音書 6章34節)
99匹の羊のたとえ
イエスは知識のない人にも理解しやすいよう、たとえ話を使って説教をしました。99匹の羊のたとえ話は特に有名です。
そこでイエスは、次のようなたとえ話をなさいました。「羊を百匹持っているとします。そのうちの一匹が迷い出て、荒野で行方がわからなくなったらどうしますか。ほかの九十九匹は放っておいて、いなくなった一匹が見つかるまで捜し歩くでしょう。
そして、見つかったら、大喜びで羊を肩にかつぎ上げ、 家に帰ると、さっそく友達や近所の人たちを呼び集めて、いっしょに喜んでもらうでしょう。それと同じことです。迷い出た一人の罪人が神のもとに帰った時は、迷ったことのない九十九人を合わせたよりも大きな喜びが、天にあふれるのです。
(ルカによる福音書 15章3~7節)
100匹の羊のうち1匹がいなくなったときに、羊飼いが99匹の羊を残したまま、いなくなった1匹を探し回るという話です。羊飼いは「100匹のうちのたった1匹」と考えずに、迷い出た1匹を探し回ります。
神の愛も同じです。信仰を守らず罪を負った一人が、悔い改め救いを求めて戻ってくるのなら、神は喜んで迎えてくれます。この話では、羊飼いは神(イエス)、99匹の羊は神とともに歩む正しい人、迷い出た1匹の羊は神に背いた罪人を意味します。神の愛の深さがわかるたとえ話です。
聖書の選び方・おすすめの聖書
聖書を初めて手に取る場合、選び方に迷う人も多いことでしょう。聖書は世界各国で翻訳されていて、日本語のものだけでもたくさんあります。すでに教会に所属している場合は、所属教会ではどの聖書を使っているか確認することをおすすめします。
個人的に読んだり、今後礼拝などに参加したりする場合は、「新共同訳で旧約聖書と新約聖書が一冊になっているもの」がおすすめです。
「新共同訳」とは、カトリックとプロテスタントの研究者が共同で翻訳を行った聖書のことです。日本のキリスト教はカトリックとプロテスタントに大別できますが、新共同訳はどちらでも使われています。新共同訳を買っておけば、今後礼拝に参加する機会があったときに、カトリック・プロテスタントどちらの教会でも使えます。
旧約聖書と新約聖書が1冊になっているものをおすすめする理由は、どちらもキリスト教の教義に深く関わっており、礼拝でも取り扱うためです。旧約聖書は天地創造やアダムとイブ、ノアの方舟といった物語のほか、礼拝でよく朗誦される「詩編」も収められています。一方新約聖書にはイエスの生涯や復活といった物語を通して、イエスの言葉や教えが記されています。
迷った時は近くのキリスト教会の礼拝に参加して、おすすめの聖書を聞いてみるのもいいかもしれません。教会というと敷居が高いイメージですが、礼拝に参加しても入信する必要はなく、実は多くの教会が初めての人もあたたかく迎え入れてくれます。キリスト教系の学校に通う生徒が、宿題や勉強のために礼拝に参加していることも珍しくありません。
また聖書にはマンガで書かれたものや、子どもでも読めるようなわかりやすい解説つきのものもあります。「まずは気軽に聖書に触れてみたい」という人には読みやすくておすすめです。
日本聖書協会が発行する4つの聖書
聖書を選ぶ上で知っておきたいのは、日本聖書協会が発行している聖書には4つの翻訳があることです。新しいものから順に見ていきましょう。
聖書協会共同訳(2018~)
カトリックとプロテスタント諸教会の学者が共同で翻訳した「共同訳」で、2022年現在最も新しいものです。「礼拝での朗読にふさわしいこと」を重視して翻訳されました。
新共同訳(1987~)
日本で初めての共同訳聖書です。現在でも、多くのカトリック・プロテスタントのミッションスクールや教会で利用されています。日本で最も読まれている聖書だといえます。
口語訳(1955~)
日本で初めての口語訳聖書です。戦後から高度経済成長の時代に、特にプロテスタント教会や学校に広く普及しました。
文語訳(1887~)
聖書協会として初めて発行した聖書で、文語調の美しい文章が特徴です。文学に引用された例も多く、現在も多くの人に愛されています。
Amazonで人気のおすすめ聖書を紹介
聖書そのものを読んで理解するのは、初めての人には難しいかもしれません。最初に手に取るなら、聖書を解説した本やマンガがおすすめです。ここではAmazonで人気の書籍の中から、聖書の全体の流れをつかみやすいものを紹介します。
新約聖書 1 (文春新書 774) 新書
解説・佐藤優 文藝春秋
新約聖書 1 (文春新書 774): 佐藤優・解説, 共同訳聖書実行委員会, 日本聖書協会 + 配送料無料
元外務省主任分析官の作家、そして敬虔なキリスト教徒である佐藤優さんの解説とともに、新約聖書について学べる1冊です。キリスト教徒ではない一般の日本人向けに書かれた本なので、初めて聖書に触れる人にも読みやすいでしょう。イエスの言葉が太字になっているのもポイントです。
まんがでわかる! 旧約聖書 (まんがで読破Remix)
バラエティ・アートワークス(イラスト) イースト・プレス
まんがでわかる! 旧約聖書 (まんがで読破Remix): バラエティ・アートワークス + 配送料無料
旧約聖書の世界をまんがでわかりやすく描いた1冊です。天地創造、モーセの十戒、ノアの方舟といったおなじみの物語を楽しみながら、旧約聖書について学べます。まんがなので読みやすいですが、内容は本格派です。
聖書は無料で読めるの?
無料で聖書を読めるサイトやアプリはたくさんあります。ここでは「まずは無料で聖書を読んでみたい」という人におすすめのアプリを紹介します。
You Virsion(デジタルミニストリー)
聖書を読む 携帯、タブレット、PCから無料で使える聖書 | 聖書アプリ | Bible.com
世界中で利用されている無料の聖書アプリです。2400以上の聖書の訳をスマホやパソコン、タブレットなどで読めます。訳の多くはオーディオ聖書も利用できるうえ、さまざまな切り口で毎日少しずつ聖書を読む読書プランも用意されています。ブラウザでそのまま読むことも可能です。
聖書 4+音読聖書 – 祈り- YouVersion
上で紹介した「You Virsion」の、iPhone・iPad向けアプリです。聖句を画像にしてシェアしたり、好みの色でハイライトしたりできます。
聴くドラマ聖書 4+音声で聴くドラマ仕立ての聖書
本格的なドラマ仕立ての聖書アプリです。大和田伸也さん、奥田瑛二さんといった豪華な俳優・声優陣が出演しています。臨場感のあるBGMも魅力の一つです。
こども聖書(せいしょ)アプリ YouVersion
カラフルなアニメとわかりやすい解説、クイズなどで聖書を楽しく学べるアプリです。子ども向けですが、聖書に初めて触れる大人にもおすすめできます。
聖書は世界中の人のバイブル
ユダヤ教とキリスト教の聖典であり、イスラム教にも大きな影響を与えた聖書。時代を超えて世界中の人に読み継がれてきた聖書は、人類史上最大のベストセラーです。また聖書の物語は時代や国を問わず、さまざまな文学や映画、音楽、絵画などの題材にされてきました。信仰のない人でも、聖書を読むことで思わぬ発見や学びがあるかもしれません。ぜひ一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
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