トルコタイル・陶器・食器の特徴と歴史を紹介!旅行のお土産にもおすすめ
更新日:2023.05.14
投稿日:2022.09.29
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トルコのお土産品として有名なのが、鮮やかな色彩が特徴的な陶器やタイルです。ほかにはない技法で作られており、見る人の目を楽しませてくれます。
今回のテーマは、このトルコ陶器です。どんな歴史があるのか、どこで買えるのかなど、トルコ陶器の情報をご紹介します。
Contents
トルコの伝統工芸品「イズニックタイル」
トルコで生産される陶器のなかでも、ひときわ知名度が高いのが「イズニックタイル」です。独自の技法で生産されるトルコの伝統工芸品であり、美しいモチーフが世界中で愛されている焼き物です。
古くは、建築物の内装用装飾として利用されており、現代では、その模様の美しさから食器や鍋敷きなど生活に根付いた形で広まっています。
イズニックタイルは、粘土質の陶磁器を窯で焼き、その後用途に応じたフォルムに加工されて作られます。古代に建築部材として利用されていたタイルが今も色あせることなく残っていますが、これは素材に使用される石英の特徴です。
また、明るく鮮やかな色合いが特徴的です。幾何学模様や植物の意匠がほどこされたものが多く、華やかなデザインは見る人を楽しませてくれます。
イズニック陶器の絵付けから焼成まで
イズニック陶器の生産工程は複雑であり、現在も手作りで絵付けがされています。
- 模様の下書きにそってペーパーにピンで穴をあける
- 陶器の上に下書きをかぶせ上から炭をつける
- 穴を通した炭で陶器に下絵がつく
- 下絵にそって染料で輪郭を描く
- 色付けをする
- 窯で焼き焼きあがれば完成
イズニック陶器には、職人たちにより多くのデザインが施されており、陶器の表現は、日常生活や信仰にまつわるものが多いです。トルコの人々にとっては愛や平和を象徴するものでもあります。
イズニックタイル発祥の地は名前の由来にもなった「イズニック」
イズニックタイルの主要産地は、その名前にもなっている「イズニック」という場所です。イズニックは、かつてローマ帝国およびビザンツ帝国領でしたが、1331年にオスマン帝国に征服されました。オスマン帝国に征服される前は「ニカイア(ギリシャ神話の勝利の女神、ニケの町)」と呼ばれており、ヘレニズムの根付いた都市でした。
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現在のトルコのブルサ県に属しており、イスタンブールの南東に位置する湖のほとりの町です。
イズニックタイル、そしてイズニック陶器の歴史
イズニックタイルは、誕生当初は建築物の装飾品として重宝されていました。その後食器や花瓶など、より暮らしに根付いた形で変化しています。イズニックタイルの技法で作られた陶器を、総じて「イズニック陶器」と呼んでいます。それぞれの歴史を見てみましょう。
イズニックタイルの歴史
タイル装飾の歴史は古く、955年頃のカラハン朝の建築物にも使用されています。その後、オスマン帝国時代の15世紀から17世紀にかけて最盛期を迎え、さかんに生産されました。観光名所として有名な15世紀のモスク、ブルサ県のイェシル・ジャーミィは、イズニックタイルがふんだんに使用された最古の建築物といわれています。イズニック陶器の美しさを現代に伝える建造物の一つです。
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15世紀から16世紀にかけては、イズニックタイルの歴史では第一期とされています。このころは、緑や青、紺などを貴重としており、美しくもシンプルな色合いが採用されていました。
16世紀半ば以降のイズニックタイルには、赤などの鮮やかな色も増えており、現在の色彩豊かな形へと変遷していきます。
イズニック陶器の歴史
イズニック陶器の歴史は古く、紀元前7000年ごろから生産されていました。イズニックの町では、古い陶器のかけらが出土しています。
イズニック陶器は、焼成前の土に化粧土を施して下絵を描き、そのあとに釉薬を塗って焼く、という手順で生産されています。こうした伝統技法は職人の間だけで伝わるもので、門外不出とされていました。そのため、陶器の生産を支援したオスマン帝国の衰退とともに、17世紀半ば頃から勢いが衰え始めます。
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しかし、現代では研究者たちによる調査によって技術が復活。古くからの技法が現代まで受け継がれた結果、その美しさで世界中の人々を魅了しているのです。
イズニックタイルが使用されたトルコのモスク・宮殿
イズニックタイルは、宮殿やモスクなどの建築物によく見られます。現存している建物も多く、観光スポットとして公開されていることもあるため、現地に行けばイズニックタイルで彩られたさまざまな建築物を鑑賞できます。
前述のイェシル・ジャーミィやムラディエモスク、スレイマニエモスク、セリミエモスクなどが有名です。
イスタンブールを代表するモスクで、有名な観光スポットであるスルタンアフメトモスク(ブルーモスク)も、イズニックタイルで彩られています。ブルーモスクという愛称は、青色のイズニックタイルで内壁が装飾されていることから名づけられました。
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オスマン帝国時代の栄華を残す建築物の一つ、イスタンブールのトプカプ宮殿も、イズニックタイルによる豪華な装飾が現存しています。
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トプカプ宮殿は、もともとは君主であるスルタンや、その妻であるハレムの女性たちの住まいでした。宮殿内の「皇子の間」「母后の間」などで、17世紀のイズニックタイルが使用されています。
トルコのイズニック陶器や食器はお土産にもおすすめ
前述のとおり、初期は建材として広く利用されていたイズニックタイルの技術は、徐々に生活に寄り添う形へと変化していきました。現在は食器や生活雑貨としても有名であり、トルコ旅行のお土産としてもおすすめです。お皿などのほか、花瓶やランプなどさまざまなバリエーションがあります。
同じものは二つと存在しないといわれているため、旅行の際は一期一会の出会いを探すのも楽しいですよ。
トルコでタイルや食器を買える場所
イズニック陶器はお土産としてメジャーなため、観光地であればさまざまなところで見かけます。多くのなかから自分だけのお気に入りを見つけたい場合は、店舗の多い場所で探すのがおすすめです。
グランドバザール
トルコ有数の観光市場で、イスタンブールに位置しています。敷地内には4,000軒の店舗が軒を連ねており、陶器を取り扱っているところも多いです。
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イスタンブール空港
トルコの玄関口ともいえる国際空港です。お土産コーナーでは、イズニック陶器を多数取り扱っています。
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イズニック陶器は、手ごろな価格のものなら500円程度から購入でき、鍋敷きやカップのセット、コースターなど種類も豊富です。移動中に割れるのが心配であれば、ホテルで預かってもらうか、出国時に空港で購入するのも選択肢の一つです。
価格相場や購入の際のポイント
イズニック陶器の価格は千差万別ですが、小さなお皿などなら数百円で購入できるものも多いです。反対に、オイルランプや大皿などはやや値段が高くなります。
気に入った商品が見つかったら、値引き交渉にも挑戦してみてください。複数個買う場合などは、頼めば意外とオマケしてくれることもありますよ。
イズニック陶器は、ほかの焼き物と同じく衝撃に弱いので、梱包をしっかりしてもらえるようお願いしましょう。
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日本でトルコタイルや食器を買えるおすすめのお店・通販サイト
数は少ないですが、トルコ雑貨を取り扱っているお店であれば、日本でもイズニック陶器を購入できます。ここでは、おすすめのお店を3店舗紹介します。
ガラタバザール
トルコ雑貨を専門に取り扱うお店です。通販サイトでは食器や水差し、壺などを扱っています。食器や小ぶりの置物であれば、1,000円台から購入できるお手頃価格が嬉しいお店です。
東京中野区の青梅街道に実店舗があり、実際の商品を展示しています。通販サイトで気になる商品があれば、実店舗で確認するのもおすすめです。
なお、敷物の販売に力を入れている関係で、実店舗はあまりスペースに余裕がありません。事前に予約していくと安心ですよ。
公式サイト:https://galatabazaar.com/store/
トルコ雑貨ぎゃるぎゃる倉敷
トルコ雑貨を多く取り扱うお店で、焼き物も豊富です。食器はサイズやデザインのバリエーションが多く、ついつい目移りしてしまいますね。
こちらも1,000円台から商品を取り扱っており、イズニック陶器を気軽に生活に取り入れることができます。食器のほか、ランプや絨毯、キャンドルホルダーなども販売しています。
公式サイト:http://gelgel.shop-pro.jp/
sevinc8(セヴィンチエイト)
トルコを中心として国々のガラス食器や焼き物、服飾雑貨、アクセサリーなどを幅広く取り扱うお店です。横浜赤レンガ倉庫や大阪のなんばウォークに常設店舗があり、商品を実際に手に取ることができます。
公式サイト:https://sevinc8.com/
通販サイトでは、陶器の小型のものなら800円台から購入可能です。種類も多いので、お気に入りを見つけたい方におすすめです。
イズニック陶器に続くキュタフヤ陶器とは?
トルコには、イズニックと同じく焼き物で有名な「キュタフヤ」という都市があります。トルコ中心部より西側に位置し、トルコ国内で最大の窯業都市です。
歴史的に、キュタフヤはイズニックほど注目されず、15世紀から16世紀にかけてはイズニックの補佐的な立ち位置の産地でした。その後、イズニックでの粘土の産出量が減少するにつれて、窯業の町として徐々に台頭してきます。17世紀以降は、イズニックデザインの陶器の生産を継承し、現在も陶器の名産地として有名です。
陶器の生産が本格的にキュタフヤに移ったのは18世紀以降です。この頃から、タイルの技法を応用したお皿や壺がキュタフヤで作られるようになりました。近年はキュタフヤ独自の鮮やかなデザインが人気を集めており、キュタフヤ陶器として高い知名度を誇っています。
キュタフヤ陶器は食器がメジャーですが、そのほかにも灰皿や花瓶、タイルマグネットなど、大小さまざまなアイテムに利用されています。
キュタフヤはどんな地域?
キュタフヤは、東ローマ帝国時代に、通行や物流の要として繁栄した町で、15世紀以降はオスマン帝国領となりました。現在の人口は25万人程度です。
キュタフヤが窯業都市として栄えた一因として、その立地が関係しています。近辺では陶器の原料に適している粘土が多く産出されており、町の近くでは粘土質の大きな崖が多数見られます。
キュタフヤに建つ、ブルーが目を惹くモスク「チニリ・ジャーミィ」
キュタフヤの観光スポットといえば、鮮やかな青色が特徴的なモスク、チニリ・ジャーミィです。歴史的に見て、トルコの建築物でタイルが使われるのは内壁など内側の部分が一般的でした。しかし、チニリ・ジャーミィは外壁の全体が鮮やかなブルーのタイルで覆われています。
濃淡のある青をベースに、紺色や白のタイルで模様が描かれているのはこのモスクならでは。現地でもとても珍しく、非常に見ごたえのある美しい建物となっています。
装飾タイル博物館にも訪れてみては?
トルコのタイルや焼き物に興味がある人は、ぜひイスタンブールの装飾タイル博物館を訪れてみてください。
装飾タイル博物館は、国立考古学博物館の一部で、トプカプ宮殿の旧第一庭園にあります。今でこそ装飾タイル博物館になっていますが、もともとはポロ競技(馬上ホッケーのような競技)の観戦のために、当時のオスマン帝国スルタン「メフメト2世」が作らせました。オスマン帝国時代の非宗教建築物として現存するもののなかでは、最古のものといわれています。
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装飾タイル博物館には、美しい青の装飾で彩られたエントランスから中に入ることができます。内部は複数の小部屋に分かれており、各部屋で貴重なイズニック陶器の展示を見ることが可能です。オスマン朝時代に、実際に建築物の装飾で使用されていたタイルや陶器などを、当時の姿のまま鑑賞できます。
生で見られる機会の少ない貴重なものばかりですので、観光の際はぜひ立ち寄ってみてください。
トルコのタイル・陶器・食器の魅力に浸ってみよう
イズニック陶器やキュタフヤ陶器など、トルコの陶器にはほかにはない魅力があります。とくに、華やかな色合いと独特のデザインは、日本の焼き物ではあまりないため新鮮ですよね。
トルコの歴史とともに発展をとげてきた陶器は、旅行のお土産としても適しています。観光客向けのバザールではよく見かけますので、お気に入りのものを探してみるのも楽しいですよ。
数は少ないですが、日本でもトルコの陶器を購入できるお店はあります。オンラインで購入できるところも多いので、ぜひ一度のぞいてみてください。
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