美しい装飾のカフタンが人気!トルコの民族衣装の魅力を大解剖
更新日:2023.04.05
投稿日:2022.06.21
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伝統的民族衣装のカフタンをはじめ、トルコにはさまざまなスタイルの民族衣装があります。文化の多様性を体現するような民族衣装は、どれも個性的で美しい!近年では、日本でもトルコの伝統的民族衣装「カフタン」が注目されていて、カフタン風のウエアを普段のファッションに取り入れている人も増えています。
今回は、そんなカフタンをはじめ、トルコの魅惑的な民族衣装についてご紹介します。
Contents
トルコの代表的な民族衣装「カフタン」を解説
トルコにはさまざまなスタイルの民族衣装があります。ここでは、そんなトルコの民族衣装の中でも特に有名な「カフタン」についてご紹介していきます。
カフタンとはどんな民族衣装?
トルコにある民族衣装の中で、最も代表的なものが「カフタン」です。カフタンは、長袖で長い前開きのガウンのような衣装で、色や丈もさまざま。男性向けのカフタンは袖の先が細くなっていて、女性向けのカフタンは手を人に見せないように袖口が広くなっているのも特徴的。熱い日差しを遮りながらも風通しがよく、トルコの気候にも適した民族衣装といえるでしょう。
一口にカフタンといっても、豪華な飾りが付いているものからシンプルなものまでたくさんのスタイルがあり、オスマン帝国のスルタンたちは、金糸を使ったり高価な毛皮を裏地につけたりした豪華なカフタンを着ていたようです。
トルコの人々に愛されてきた民族衣装ですが、日本の着物と同じように、現代のトルコでは普段カフタンを着用しているという人はほとんどいません。
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カフタンにあわせるアイテム、シャルワールとフェズ
カフタンは、長袖で長い前開きのガウンのような衣装です。それでは、カフタンを羽織るときに一緒に着用するアイテムとはどんなものなのか? ここではカフタンに合わせるパンツ「シャルワール」と、男性がかぶる伝統的な帽子「トルコ帽」について詳しくご紹介します。オスマン帝国時代はこれらをカフタンに合わせるスタイルが基本でしたが、現代のトルコでは普段に着用する人はほとんどいなくなっています。
シャルワールとは?
シャルワールとは、カフタンに合わせるパンツのことです。腰回りが広くなっていて、股下から裾にかけてカーブに裁断されているので、足首を締めると膨らんだ風船のようなシルエットになるのが特徴的。現代でいうところのサルエルパンツのような形になっています。
フェズとは?
フェズとは、男性がかぶる伝統的な帽子のことで、植木鉢を逆さまにしたような形をしています。モロッコのフェズで使われていた帽子がオスマン時代に渡来したのが起源ではないかといわれています。長らく愛用されてきたフェズですが、1908年におこったトルコ革命で着用が禁止されました。
トルコの女性用の民族衣装とは?
カフタンだけに限らず、ここではトルコの女性用の民族衣装にはどんなものがあるのかご紹介していきます。
女性の民族衣装
イスラムの国々では、コーランの教えにより女性は体や顔をスカーフで覆う風習があり、トルコではオスマン時代から女性はスカーフを着用していました。トルコの伝統的なスカーフは、刺繍やオヤ(縁飾り)で装飾されています。ちなみに、オヤはオスマン時代から続く伝統工芸のことで、レースやスパンコール、ビーズなどを用いています。オヤや刺繍で装飾されたスカーフは、繊細で美しい!
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トルコの女性の民族衣装は、カフタンといった上衣やシャルワールというパンツなどを着用するのが一般的でした。作業がしやすいように、庶民が着用する民族衣装では、長いガウンのような上衣は羽織らなかったようです。
女性用民族衣装のさまざまなスタイル
ここでは、女性用のトルコの民族衣装のさまざまなスタイルについてみていきましょう。
ジェプケン | 映画アラジンのジャスミンが着用していたような衣装のこと。 |
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ビンダッル | シルクなどを使った豪華な作りのガウンのこと。 |
ラサ・ビンダル | 女性が結婚前日に女友達と開くパーティで着用する衣装のこと。 |
ベリーダンスの衣装 | 胸の部分とスカートの部分がセパレートしているダンス専用の衣装。露出度が高い。 |
トルコの男性用の民族衣装とは?
ここでは、トルコの男性用の民族衣装にはどんなものがあるのか詳しくご紹介していきます。
男性の民族衣装
イスラムの国々では、男性のシンボルとして頭をターバンで覆うという風習がありました。現代のトルコではほぼ使用されていませんが、かつてはトルコの男性もトルコ帽として一般的に流布していた帽子やフェズを着用していました。
トルコの男性の民族衣装は、「ギョムレック」というシャツに「シャルワール」といったパンツ、「クシャック」という幅広の腰帯を組み合わせ、「イエレック」というチョッキなどを着用するのが一般的なスタイルだったようです。
イエニチェリの衣装
オスマン帝国時代の王の親衛隊「イエニチェリ」の衣装のことで、縦長の帽子とウエストの大きなパンツが特徴的。上着やベストに華やかな刺繍が施されています。
地域によっても違うトルコの民族衣装
トルコはアジア大陸の西橋とヨーロッパ大陸の東端にまたがる国土を持つため、その地勢もさまざま。西南部沿岸は温帯冬雨の地中海性気候、黒海地域は一年を通して雨が多いといった具合に、地域によって気候が違います。そのため、寒さの厳しい地域では毛皮を多用するなど、各地域の気候条件によって、民族衣装のスタイルも変化していきました。
さらに、機能性だけではなく地域性やおしゃれさなども追求するようになったことで、各地域それぞれに民族衣装の個性や特色が出てくるようになります。
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トルコの7つの地域の民族衣装を紹介!
ここでは、トルコの7つの地域の民族衣装をそれぞれ解説していきます。地域の気候や特色を背景に発展してきた個性溢れる民族衣装は、トルコという国の文化の多様性を感じさせてくれます。
エーゲ海沿岸地域の民族衣装
エーゲ海沿岸地域の民族衣装は、華やかな装飾が施されているのが大きな特徴です。女性の服装は、カフタンとその上に重ねる短いジャケット、エプロン、何層にも重なるヘッドスカーフ、スリッパなどからなり、衣装はたくさんの宝石で装飾されていてきらびやかです。
男性の衣装は、丈の短いシャルワール、ジャケット、シャツ、ベルト、ネッカチーフ、フェズ、スリッパやブーツなどからなり、こちらも豪華な装飾がほどこされています。
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黒海沿岸地域の民族衣装
黒海地域の民族衣装は、厳格で独立心が強い地域の人々の気質を反映していると評されます。またこの地域では、民族衣装はおもに女性が着用するもので、男性は早くから西洋スタイルの洋服を取り入れてきました。
女性の衣装は、ペシュテマルという腰に巻くリネン、ケシャンというショールなどからなり、他の地域にはない衣装を着用していました。色は黒、オレンジ、ワインレッド、深紅、茶色でストライプ柄がよく使用されているのも特徴的です。
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中央アナトリア地域の民族衣装
中央アナトリア地域の民族衣装は、ゴージャスでカラフル。装飾品も美しく、トルコ随一の豪華さといわれます。衣装の素材はシルクやベルベット、綿、ウールが人気で、女性の衣装は、シャルワールにスカート、エプロン、シャツ、ジャケット、ベルトに頭飾りなどを着用します。
男性の民族衣装は、シャルワール、シャツ、ベストまたはジャケットに幅広ベルト、フェズなどを着用し、お祝いの席などでは、武器を装備するのも特徴的です。
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東アナトリア地域の民族衣装
東アナトリアは、クルド人とアルメニア人がトルコ人と一緒に住んでいる地域のため、民族衣装にもこれらの国々の衣装文化が反映されていて個性的です。
衣装はカラフルで人気の色は赤、花柄の生地が多いのも特徴的で、装飾品としてのジュエリーはあまり使用しません。女性の衣装は、シャルワールに長いスカート、カフタンやドレス、シャツ、ジャケットなどを着用します。
男性の民族衣装は、シャルワール、シャツ、ベストまたはジャケットに幅広ベルト、フェズ等を着用しますが、このスタイルは、クルドの民族衣装と非常に似ているといわれています。
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マルマラ海沿岸地域の民族衣装
この地域の民族衣装は、刺繍をふんだんに用いるのが特徴的です。女性の衣装は、非常に幅の広いシャルワールに長袖の短いジャケット、ベルト、帽子などを着用し、エプロンを着けることもあります。ふんだんにほどこされた刺繍によって衣服は多層で膨らんでいて、もこもこしています。
男性の衣装は、細身のシャルワールを靴下の中に押し込みます。シャツ、ベストに短いエプロンのように使う布、肩にかける布、頭飾り、ハイソックス、靴を着用し、ネッカチーフもよく使われます。ほかに、バックや武器、たばこ用の小さなポシェットを持つこともあります。
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地中海沿岸地域の民族衣装
地中海沿岸地域の民族衣装は、全体的に上品な印象なのが特徴的です。女性の衣装は、スカートやドレスにシャツ、ジャケット、頭飾りやハンカチ、靴下、靴を着用します。明るくカラフルで刺繍も装飾もほどよく取り入れられています。日本人の女性にもトライしやすいスタイルではないでしょうか。
男性の衣装は、シャルワールを靴下の中に押し込みます。シャツ、ジャケット。幅広ベルト、帽子、ハイソックス、靴を着用し、こちらもほどよく上品なイメージです。
シンプルで上品な刺繍や色合いの衣装が多く、儀礼的で厳格な美しさがある民族衣装といえるでしょう。
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南東アナトリア地域の民族衣装
南東アナトリア地域の民族衣装は、現代の服装に近く、他の地域に比べて重ね着が少ないため見た目がシンプルです。女性の衣装は、ロングドレスに長いカフタンやローブ、ベルト、ヘッドスカーフや頭飾り、靴下、靴を着用します。花柄や刺繍の布を多く使用することで、全体的に柔らかな印象を与えています。
男性の衣装は、シャルワールにシャツ、膝丈か膝のすぐ下までの短いローブかジャケット、腰の周りの幅の広いベルトかハンカチ、頭飾り、靴下、靴かブーツを着用します。アウターに刺繍がほどこされているので、男性の衣装も華やかです。
トルコの民族衣装の歴史
多様性溢れる文化同様にさまざまなスタイルがあるトルコの民族衣装について、ここではその歴史について解説していきます。
【紀元前】トルコの生活様式に即して民族衣装が発展
紀元前100年頃、トルコでは馬を移動手段としていたため、機動性を重視した民族衣装が発展します。冬至の中央アジアのトルコ人の基本衣装は、革ブーツにベルト付きの短いカフタン、シャルワール、裾が長い薄手の長袖シャツ(ミンタンシャツ)というスタイルで、装飾品はステータスの証とされていました。
【セルジューク朝時代】文化や地域性により民族衣装が多様化
セルジューク時代に、トルコ人はアナトリアへ移住しますが、その移住によってさまざまな文化が融合し、民族衣装も多様化していくこととなります。さらに、各地のさまざまな気候によっても民族衣装は変化していきます。
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【オスマン帝国時代】民族衣装は職業や地位を象徴
オスマン帝国時代になると、衣料法が制定されます。地域や宗教、職業や地位によって着られる衣装が決められ、法は時代によって変更されていきます。例えば1508年の法令では、紺と黒はイスラム教徒以外が着用する基本色と定められ、黄色と緑色はイスラム教徒が着用することと定められました。
また、この時代には身分や職業によって異なるフェズが着用されはじめ、衣料の質も富や一部の職業を表す象徴でした。豪華な糸や装飾品を使用するなど、国民の衣装の豪華さへの追求がどんどんエスカレートしていくことを憂慮したスルタンたちは、階級に応じた服装をすることを法律で規制します。そのため、衣装はヒエラルキーを象徴するものとなっていきます。
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【17世紀】西洋化で民族衣装から脱却
1826年オスマン帝国の歩兵軍「イエニチェリ」の解体により西洋式の軍隊が結成されます。これによって、地位などにかかわらず、軍人は一律の軍服を着るという西洋スタイルが取り入れられるようになります。さらに、産業革命により庶民のファッションも西洋化が進み、積極的に取り入れられるようになっていきます。
第一次世界大戦でオスマン帝国が崩壊しトルコ共和国が設立されると、トルコ共和国では近代化政策のひとつとして、法律で宗教や伝統色の強い民族衣装を禁止。これによっても、衣装の西洋化が加速することとなります。
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現地からトルコ人がアドバイス!イスタンブールでお土産にトルコの民族衣装を購入するなら?
伝統的なトルコの民族衣装は、トルコのお土産にも最適です。ここでは、トルコで民族衣装を購入する際のアドバイスを紹介します!現地で買い物をする際に役立ててくださいね。
イスタンブールでトルコの民族衣装が購入できるおすすめ店は?
民族衣装コスチュームのお店は、グランドバザール内およびグランドバザール周辺にあります。ただし、グランドバザール及び周辺のお店は、日曜日は閉まっていますのでご注意ください。
グランドバザール/ Kapalıçarşı(カパルチャルシュ)
イスタンブールにある世界最大級の市場。3万700㎡という広大な敷地には66の通りが迷路のように縦横していて、約4,000軒もの店舗が軒を連ねています。トルコ土産を購入するなら、まずは覗いておきたい場所。
店舗名 | グランドバザール/ Kapalıçarşı(カパルチャルシュ) |
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住所 | Beyazıt, Kalpakçılar Cd. No:22, 34126 Fatih/İstanbul, トルコ |
公式サイト | https://www.kapalicarsi.com.tr/ |
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トルコの民族衣装を購入する場合、まず何を買えばよいですか?
現代のトルコでは日本の着物のように、普段から民族衣装は着ていません。そのため、観光客用、民族踊り用や結婚式前夜「ヘナの夜(kina gecesi)」の催しで着るためのコスチュームでしたら購入できます。
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トルコ旅行の記念のため、着るためなど購入の目的にもよりますが、女性でしたら民族衣装とは少し違いますがベリーダンス衣装が人気です。
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また、カフタンもトルコ民族衣装として人気があります。男性でしたら、手軽に着用できるフェズというオスマン帽とチョッキがおすすめです。
トルコの民族衣装の魅力にふれよう!
ここまでトルコの民族衣装について解説してきました。伝統的なカフタンをはじめ、トルコにはさまざまなスタイルの民族衣装があり、その多様性を知ることでトルコの文化の多様性も垣間見ることができます。ぜひ、トルコの民族衣装にふれて、次回のトルコの旅に思いをはせてくださいね。
現代のトルコでは、普段から民族衣装を着用するという習慣はありませんが、お土産品として購入することは可能です。日本でもひとつのおしゃれのスタイルとして、カフタン風の上着などを現代の服装に取り入れる人も増えています。トルコを旅したら現地で民族衣装購入して、自分のスタイルで着用してみてはいかがでしょうか。
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